読む・読もう・読めば5 サンヤツは元気か
新聞の第1面下の広告は、ふつう全15段のうちの3段分を8つに分割した大きさのものが並んでいるので、サンヤツ広告という。すべて書籍の広告だ。ときどき同じ3段を6つに分割した雑誌広告になり、こちらはサンムツ広告という。
第1面は新聞の顔だから、広告の体裁についてもやたらに厳しい規制がある。いまどきのワープロソフトなら30くらいの書体がはじめから入っているのに、サンヤツ広告では明朝とゴシックしか使えない。ちょっと変わったケイも使えないし、写真やイラストも御法度だ。小さな文字をぎっしり詰め込むことも許されないし、逆にほとんどが余白というのもダメ。なにしろ格式の高い広告欄なのだ。
こういう規制の枠のなかで、いかに自社の出版物を目立たせ、売り込むかに、かつての出版社の広告デザイナーはしのぎを削った。しかし今、全国紙5紙にサンヤツ広告を全国通しで出せば、400万円を超える広告費がかかる。数冊の本でそれ以上の利益を見込めることはそうはない。出版とはそのように零細な業界なのだ。10万部単位で本を売ろうとする大手出版社は、新聞広告でもサンヤツではなく2面以降の全5段なり半5段なりで勝負し、あるいは新雑誌の広告なら全面(1ページ大)で打ってもモトがとれる。だからサンヤツ広告は、良心的な出版社が自信をもって刊行する本を宣伝する場であり、したがって日本の出版文化の質をもろに表現することになった。
ひところ、サンヤツ広告はひどく荒れていた。あやしげな病気克服本、新宗教関連本、そしてトンデモ自費出版本が大手を振って登場していた。それが今、新興出版社のおかげで、少しはマシになってきたように思われる。かつての常連出版社の広告が見られなくなったのは寂しいことだが。
出版界では2極分化がさらに進んでいる。大量消費読み捨て本と高価趣味本はいつでも商売ができる。中間の教養本は、どこかから補助金が得られない限り、商業出版としては成立しがたくなった。そのことを如実に表しているのがサンヤツ広告ということになる。
サンヤツは元気か。元気でいてくれよな。
(大内要三 2007年4月14日)
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