読む・読もう・読めば6 路傍の花
人が世話をしないのに町中で勝手に咲いている花に季節感を覚える。線路ぎわ、土手、道路の中央分離帯、街路樹の根元など。園芸植物として導入されて雑草化したものが多い。新しい土地に進出すると数年で劇的に増えたのち、嫌地現象を起こすのか、また劇的に減る。荒川の土手を埋め尽くしていたセイヨウタンポポも、東京から大阪まで新幹線沿いに切れ目なく並んでいたセイタカアワダチソウも、かつての勢いはなくなった。
ここ数年で激増したのは、例えば東京では4月半ばまで咲いていたハナニラ(英名ブローディア、学名は Ipheion uniflorum)。葉はニラに似た形でかすかにネギ臭がある。花は6弁で白色、弁の中央に藤色の条線が入るのが普通だが、条線の薄いものや弁の全体が藤色のものもある。『朝日園芸百科』によれば、ウルグァイ、アルゼンチンなどの原産だという。
いま盛んに咲いているオレンジ色のケシはなんだろうかと気になった。数年前からぽつぽつと道端で見かけたのが、今年は文字通り群生している。ヒナゲシ(虞美人草、ヨーロッパでは麦畑の雑草)を園芸用に改良したシャーレ・ポピーの1品種かとも思ったが、どうも風情が違う。図鑑類を見ても分からない。ザンダーの植物名ハンドブックを見ても分からない。ところが。ネットで調べたらすぐに分かってしまった。地中海・中欧原産のナガミヒナゲシ(学名 Papavel dubium)なのだ。幸いに麻薬の原料にはならない。
名前の分からない花は、植物図鑑で調べる。それが常識だった。しかしいまや、路傍で見かけるのは在来の植物はほとんどなくて、外来植物が雑草化したものばかり。それも隆盛を誇るのは新興勢力だから、図鑑には出ていない。このように活字文化が現実に追いつかなくなっているのを知るのは辛い。
(大内要三 2007年4月28日)
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