自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告3
裁判官「忌避」申し立て そして棄却
イラク派兵差止裁判をすすめる会・関西
5月16日に「自衛隊イラク派兵差止訴訟・関西」の第3回控訴審が開かれました。裁判官らは原告が請求した証拠採用や文書提出命令をすべて却下してしまいました。原告・弁護団は直ちに裁判官3名にたいし「忌避」を申し立て、訴訟手続は「停止」されました。ところが同25日には、裁判所は「忌避」を却下すると決定したのです。きわめて不当な決定であり、弁護団は特別抗告などの対応を検討しています。
原告側は以下のように証拠採用の必要性などについて裁判官に訴えました。
<証拠採用の必要性>
政府は「イラク特措法」の2年延長を決めたが、航空自衛隊による空輸実態は国連支援が7%に対して米軍・多国籍軍支援は93%にのぼり、「人道復興支援目的」との説明は虚偽。実態は米軍の安全確保支援活動、平たく言えば「米軍の後方支援」であること。
各国が撤退に進む中で、日本だけが米軍支援を続ける異常事態となっていること。
自衛隊の海外活動の拡大の歴史、それは米軍の軍事行動への「従犯」から「共同正犯」への道である。すなわち、集団的自衛権の「公然たる行使」への道であり、9条改憲への道であること。
イラク戦争と占領に対する自衛隊の軍事的加担に見られるように、日本の自衛と無縁の米軍の軍事行動に付き従って、「海外で戦争する国」への道を歩んでいる歴史である。この訴訟では、これに裁判所が憲法的視点・立憲主義・司法の番人としての観点から歯止めをかけ得るか否かが問われていること。
<各自の被害と平和的生存権>
第一審判決は、「イラク人控訴人ハッサンの生命・身体にたいしての危険が客観的にも現実化しているとみる余地もある」と認めた。したがって、ハッサンに及んでいる危険と自衛隊派兵との因果関係を明らかにするためにも、証拠調べが必要であること。
平和的生存権の権利性は、この訴訟の根幹をなす争点である。「二度と戦争をしてはならない」との思いに駆られて提訴した原告らの願いは、具体的な根拠を有する人格の発露であり、法的な保護に値する権利=平和的生存権もしくは法的利益であること。
「戦争は二度と繰り返されてはならない」ということは体験・記憶である。戦争は家族や身内の命を悲惨な形で奪うものである。だからこそ「戦争放棄」を憲法が明記した。これは日本国民の切実な願いによるものであり、そこに強く込められた平和の誓いは、原告らの人格的尊厳・人格的利益の中心をなすものであること。
原告らの思いはたんなる義憤・感想ではない。原告らが訴える「平和がなくして人間は生きることができない」と言う、その思いは、個々の人格的深みにまで結びついた信念、理念、哲学的思想によって支えられている。「平和が必要であり、国家は戦争をしてはならない」。このことを、換言すれば「人間は平和のうちに生きる権利がある。」ということにほかならないこと。
原判決は、「平和的生存権」「幸福追求権」「納税者基本権」は認めず、「人格権」のみが差止めと国家賠償の根拠として適法とされた。しかし、イラク戦争への自衛隊派遣は、従来の事件にない違憲・違法の問題であり、平和的生存権も新たな視点での判断が必要であること。
■イラク派兵違憲訴訟・東京の上告審でNさんに5月29日、上告棄却が言い渡されました。
(2007年5月31日 杉山 隆保)
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