日米同盟の近未来⑦ 松尾高志
●同盟の近未来は
Ⅵのいちばん最後のパラグラフになりますが、これは概観に対応する結論のパラグラフです。「安全保障及び防衛協力のための同盟の変革を進展させることが、地域及び世界」にとって重要だ、平和と安全に貢献するものになるということで、あらためてグローバルな共同作戦ができるような日米同盟に変えるということを結論として出しています。
安倍さんの政権の在り方は、極右の面がありますから、同盟関係を進める上で多少ぎくしゃくする要素があるわけです。しかし全体として実務レベルでは、粛々と同盟関係の変革が進んでいる。ですから、いろんな問題で極右の部分が日米関係にとってマイナスに働くことがあり得たとしても、それがダメージになってこの同盟変革が滞るということは、たぶんないだろうというふうに思います。
アーミテージ・ナイ・レポートのバージョン2が発表になりましたけれども、あそこで書かれておりますのも、このブッシュ・小泉政権下で形作られ、安倍政権下で発展させられた同盟変革(アライアンス・トランスフォーメーション)の道が、次のアメリカの政権が民主党になっても共和党になっても変わらない、この路線で行くということです。イラクがどうなるかということはありますが、日米同盟の近未来については、ドラスティックな転換ということは考えられないわけです。この2+2の合意の延長線上で、日本はグローバルにどこまでやるか、そのために日本の国内の法整備をどこまでやるか、これは憲法を変えることを含めてですが、それがアメリカから強く求められる状況、事態がいま生まれている。
米軍が軍改革をやっていますから、自衛隊も軍改革をやります。これはなかなか見えないのですが、防衛省は「防衛の在り方検討」というのをずっとやっておりまして、アメリカのトランスフォーメーションに合わせて、変化した米軍とともに戦えるように自衛隊を変化させる、ということを決めております。大きく自衛隊像というものも変わっていく、これも粛々といま進んでおりますので、同盟の近未来は、現在の条件のもとでは考えているとおりに進むと考えざるを得ないというのが私の実感です。
それにどう対処したらいいのか。なかなか難しい問題ですが、そういう大きなアメリカと日本の同盟の在り方、そういうものを推進するために、国内体制が遅れておりますから、どう法的に整備していくかが、安倍内閣、安倍の次の内閣にとって大きな課題になるということが言えるのではないかと思います。
憲法改正、改憲ということが言われます。憲法の文言は現在までのところ変わってはいませんが、とくに90年代後半から、個別法が30本近くできているんですね。戦争できるソフトがもう積み上がっていますので、改憲したときにドラスティックに変わるかというと、そういう改憲の姿というのはないんじゃないか。実態はもうすでに変わっていて、その結果として文言が変わる。
そういう意味で安倍首相は、「新憲法の制定」と言っていますが、僕はそれは正しい言い方だと思います。憲法はよって立つ原則があります。原則を変えないで部分修正するのは改憲でいいですけれども、今の憲法でいえば平和原則、これは前文と9条で規定されておりますが、その原則を変えるわけですから、これはやっぱり新憲法の制定という事態になるわけです。
柳井俊二さんが座長になって、集団的自衛権行使についても研究するという「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」、あれがどういうレポートを出すか、まだ分かりませんが、いずれにしても安全保障のための法的な基盤について、作り直す作業が始まっているわけですね。これは改憲の手前の作業をやっているのではなくて、新憲法制定の前段の措置として実施しているのではないかと思います。そういう意味でこの懇談会のレポートでは、これまでの内閣法制局がダメだと言っていている問題について、どういうロジックで答申を出すのか、それに注目する必要があろうかと思います。
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