日米同盟の近未来③ 松尾高志
●概観
今日のペーパー(共同発表「同盟の変革――日米の安全保障及び防衛協力の進展」)の方に話は戻ります。このペーパーは、小泉内閣のもとで進んできた同盟変革、軍改革、基地変革、これをワンセットで再確認すると同時に、それをさらに進めるという、そういう性格のペーパーです。このペーパーはローマ数字で6部構成になっておりますが、Ⅰは「概観」。Ⅱは「共通の戦略目標」、05年2月の2+2の合意で戦略目標を確定したわけですね。Ⅲの「役割・任務・能力」、これは05年10月29日の2+2で、「日米同盟・未来のための変革と再編」というペーパーで確認したことです。Ⅳの「再編ロードマップの実施」、これがいわゆる基地問題になるわけですが、これは去年5月のマップで最終的な合意ができた。
この安倍内閣になって初めての2+2では、小泉政権のもとで3つの分野でもって進めてきた協議を、あらためて再確認をした。戦略目標で一致しましたねと。自衛隊と米軍との間の役割・任務分担でも一致して、おおまかなチャートはできましたよねと。基地再編についてはロードマップという形で、個々の基地について決めましたよねと。で、次はこういうふうに進めましょう、というのがこのペーパーです。ペーパーに沿って見ていきます。
Ⅰの「概観」のところでは、特段大きな問題はありませんが、パラグラフの2つ目。「閣僚は、現在の拡大する日米協力が、数年前に始まった同盟の更新及び強化のためのこれまでの努力によって可能になった」。米軍再編と言われているものは実は同盟を変える作業だったですね、と改めて言っているわけです。
その次のパラグラフでは、北朝鮮が核実験をやりましたので、あらためて「核の傘」を再確認しています。「拡大抑止」という言葉を使っております。アメリカはアメリカ本土に対して核攻撃をやられたら反撃するということで抑止を働かせているけれども、日本に対して核攻撃があった場合でも核攻撃力を行いますよと、そういう意味でのエックステンデッド・デタレンス(拡大抑止)ですね。
次のパラグラフでは、「情報共有」ということが強調されています。コンピューターを中核にしてネットワーク・セントリックな戦争をするわけですから、情報が持つ価値・能力の意味は非常に高くなるわけです。
国防次官補だったナイが、オーエンスという軍人と一緒に『フォーリン・アフェアーズ』に論文を出しております。以前は核抑止力、核の傘というもので同盟国を守ってきて、アメリカはそれを率いてきたが、産業社会から脱出して情報化社会に入ると、情報の傘を差し広げて、情報優位にあるアメリカが情報の中枢を握って同盟国を束ねる。そういうふうに変わるんだと書いています。核の傘から「情報の傘」へ、です。
情報共有を日米間で進めることになりますと、そのプロテクト、保全が問題になる。日本の場合は情報を保全するためのメカニズムがほとんどないわけですので、共有することになった場合に日本から漏れることがたいへん大きな脅威になる。これを日本はしっかりやってほしいということがクローズアップされてくる。後の段で具体的な形として出てくるわけです。
いちばん最後のパラグラフですが、防衛庁設置法を変えて防衛省に格上げすると同時に、自衛隊の任務として、これまで海外へ出て行くことは付随的な任務として、自衛隊法の雑則、附則に列挙されていたのですが、こういうものを全部、本来任務として位置づけるというふうに変えたわけです。そのことについて大きく、高く評価して歓迎しています。
先ほど、同盟の変質が2回目の変革期にあると、集団的自衛権の問題で言いました。もう一つのポイントは、再定義のところではリージョナルに自衛隊が日米共同作戦で表に出るというふうになりましたけれども、小泉・ブッシュ政権のもとでの同盟変革のプロセスでは、リージョナルな共同作戦からグローバルな共同作戦に拡大するということが大きな伏線としてあります。この「共通戦略目標」のところにも出てきますけれども、日米同盟というものはアジア太平洋地域のリージョナルなものとしてファンクションさせるのではなくて、グローバルに機能させる、そういう意味で自衛隊の行動範囲、米軍との共同作戦の範囲を、リージョナルなものからグローバルなものへ拡大する、というのが、同盟変革のもう一つの大きな目的です。
いま周辺事態では説明できないことをインド洋やイラクではやっていることで示されるように、アジア太平洋地域を超えたグローバルな展開をしていく方向性が出てきている。それが目の前でギシギシいいながら進んでいるわけですが、その一つとして日本政府は防衛庁を省に格上げすると同時に、自衛隊がグローバルに展開することを本来任務とする、ということをやったわけです。
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