読む・読もう・読めば 13 原爆詩を読む
8月はヒロシマ・ナガサキ被爆の月だ。涙ボロボロになることは分かっているが、やはり深夜にひとりで原爆詩を読もう。
ヒロシマといえば峠三吉、ガリ版による『原爆詩集』(私の持っているのは体裁はそのままの復刻版だが)の力強さは、軟弱な青年が運動にあたってはそのように表現せねばならなかった1950年代を感じさせて、かえって痛々しい。栗原貞子なら、教科書に載るくらいに衛生無害な「生ましめんかな」よりも、やはり「ヒロシマというとき」が代表作だろう。ナガサキなら山田かん。名前から年配の女性と思っていたが、紹介されて、私よりわずかに年上の男性なのでびっくりしたことがある。ほとんどの作品集が私家版で入手困難なのが残念だが、いまならネットで読めるだろう。そして松尾あつゆきの原爆句。ただ絶句、何度読んでも怖くて頁を繰る手が震える。
広島県詩人協会は被爆20年の1965年にアンソロジーとして『広島詩集』を出している。戦後民主主義への懐疑がすでに広がっていた時代だし、原水禁運動の困難なときを反映して、収録された有名・無名の詩人たちの作品は玉石混淆だが、私家版で頒価100円という粗末な造本にもかかわらず大きな力を秘めている。序文は湯川秀樹。同じ年に広島詩人会議は全国から作品を募集して『平和詩集』を編み、6年後に同第2集を出している。詩人協会のものに比べてさらに石が多いが、このようにヒロシマ・ナガサキを伝えようとする思いの束が、平和運動を支えてきたのだと思う。
アンソロジーの価値は編者の腕次第だ。1954年に現代詩人会が編んだ『死の灰詩集』は被爆体験のない有名詩人の作品を多く収録して、戦時中の翼賛詩集と方法においてどう違うのか、と鮎川信夫から批判された。表現と運動について考えながら、敗戦記念日の朝を迎える。 (大内要三 2007年8月15日)
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