読む・読もう・読めば 17 自衛隊の民活
米国の戦争請負会社、ブラックウォーター社のイラクでの蛮行が裁かれようとしている。9月に民間人17人を殺害した事件を、イラク市民が10月11日、米ワシントンの連邦地裁に提訴したのだ。ブラックウォーター社はイラクでは米軍の食糧輸送と在イラク米大使の警護を担当しているが、社員は戦闘訓練を受け完全武装した事実上の傭兵であり、しかも正規の兵ではないから国際人道法の適用も受けないと主張しているという。
日本人で同種の会社で働いた経験のある者も出てきたが、幸いに日本に戦争請負会社はまだない。それでも自衛隊の艦船修理のため石川島播磨重工から中東に派遣された労働者の例がある。朝鮮戦争では機雷掃海作業にかり出されて亡くなった民間人船員もあった。そのような系譜を頭に置いて読むと興味深いのが、7月の参院選で晴れて議員となった佐藤正久氏(元自衛隊イラク派遣先遣隊、ヒゲの隊長)が今年3月に出した著書『イラク自衛隊「戦闘記」』だ(戦闘行為がなかったことが最大の功績なのに、戦闘記とは!)。
佐藤氏が強調しているのは、イラクで自衛隊が行った復興支援活動は本来は民間に託すべきことだが、自衛隊が警備を担当して民間が復興支援を行うことはイラク特措法ではできないので、自衛隊が「民間の発想」で活動した、ということだ。友好第一で現地社会にとけ込むことができたのは、何よりも上司が自由裁量を認めてくれたからだと。そしてこれまでの陸海空自衛隊の体質を自ら揶揄するものとして隊内に伝わる言葉を挙げている。陸自:用意周到、動脈硬化。海自:伝統墨守、唯我独尊。空自:勇猛果敢、支離滅裂。そして自衛隊最高機関である統合幕僚会議:高位高官、権限皆無。
シビリアン・コントロールの原則から言って統幕は権限皆無であり続けてほしいものだが、有事(=戦時)法制の整備が進んでいるいま、自衛隊が民間から学ぶというよりも自衛隊の民活が現実の問題になっている。自衛隊OBを役員とする「調査会社」や「警備会社」が、国民保護計画作成・有事訓練で次第に大きな顔をし始めていることに注目しておきたい。日本のブラックウォーターに成長しないように。
(大内要三 2007年10月14日)
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