池田龍夫「軍事機密と報道規制、市民監視」⑥
共産党の記者発表にはたくさん記者が押しかけ、志井委員長の説明を聞いているのに、一般紙の扱い方に問題意識の欠如を感じました。報道規制や市民監視などの怖さへの感覚が不足しているのではないでしょうか。イラクに派遣される自衛隊員が心配するから反対運動を煽るな、という感じで捉える向きがあるけど、これはまったく間違ったことですね。そういうマインドが、新聞総体としてあるのではないかと心配しています。
敢えて言いますと、私は当然1面に掲載していい問題だと思います。こういう市民監視を自衛隊がやっているという事実報道をすべきです。解釈は必要ないと思うんです。1面4段に扱ったのは朝日と東京。毎日は1面どころか対社面(第二社会面)扱い。いちおう4段扱いだからまあまあ許せるかな…。憲法改正でもテロ特措法問題でも、いま大手新聞は、朝・毎・東京vs讀賣・産経・日経という対立の構図になって、紙面扱いの差が歴然としてきましたね。
朝日新聞がその日に、「自衛隊は国民を監視するのか」という大きな見出しを立てた一本社説を書いていました。自衛隊けしからんという文章ですよ。これは、新聞の姿勢としては立派だと思います。その他の新聞は、論説に取り上げていませんでした。
また東京新聞は当日社会面にいろいろ書いていますが、「自衛隊の情報漏洩を調べる情報保全隊の発足は、2003年3月。自衛隊のイラク派遣をめぐり、防衛庁が現地取材の自粛を報道機関に求め、問題化したのは04年1月のこと。自衛隊は国民を見張る一方で、国民の目からは自らの実相を遠ざけようとの力学が、働き始めたのは間違いない」との指摘は鋭い。サマワ派遣は04年になってからですが、そのとき新聞は報道協定を結ばされて、サマワの宿営地に潜り込んだまま。取材らしき取材をほとんどしないまま、危険を理由の退去要請に応じて帰国してしまったのです。東京新聞が、反省をこめて踏み込んで書いた点を評価したいと思います。
これと直接関連ないことですが、市民監視の現状を実証する動きに触れておきます。私も多少コミットしている「マスコミ9条の会」が昨年暮に交流集会を開いた時の話です。小森陽一さん(『9条の会』事務局長、東大教授)と坂本修さん(弁護士で自由法曹団の前団長)との憲法討論会に、澤地久枝さんがゲストスピーカーとしてが来られました。「9条の会」の講演行脚で大宮市に行った時のことにつき冒頭で語ったことです。こういう話なのです。大宮駅を降りて会場に行く道に、黒い服を着た人がウロウロしてたいという。不審に思って会場に入り、大江健三郎さんに聞いたら、「それは、公安警察が見張ってるんだと聞いてびっくりしました」という話です。自衛隊の情報保全隊がやっていることと同じで、市民は常時警察や自衛隊に監視されているようです。監視社会になってきており、ますます隠微になってきたのが現在ではないでしょうか。全く恐ろしい社会になってきたと、私は感じています。
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