読む・読もう・読めば 19
シーア派とは何者か
米国の軍事介入のおかげで統一指導者を失い、内戦状況にあるイラクは、メソポタミア文明の栄えた地域にほぼ重なる。紀元前4000年からシュメール、アッカド、アッシリア、バビロニアと続く高度な文明国だった。わずか220年の歴史しかない、そして21世紀のうちに潰えるであろうアメリカ帝国とはえらい違いなのだ。
現在のイラク国民議会は275の議席のうち、シーア派の統一イラク同盟が128、あとはスンナ派が2党合わせて55、クルドが53。宗教のうえでシーア派が半数を少し超えるといわれる状況をほぼ反映している。分かりにくいのがイスラームの諸系統であって、だいたいシーアとスンナはどう違うのか。教科書的には、ともに聖クルアーン(コーラン)を聖典とすることに変わりはないが、スンナ派とは預言者ムハンマド(さすがにマホメットと書かれることは最近ではなくなった)の伝承(ハディース)を重視してムハンマドの言行(スンナ)を解釈してきた人々、シーア派とはムハンマドの娘婿アリーをカリフ(後継者)とし、その子孫をイマーム(指導者)として奉じる人々、とされる。( )だらけでスミマセン。しかし誰が正統な後継者か、とか、クルアーン解釈がどうとかの問題だけではないだろうなあ、と思っていたところに、とても分かりやすい説明を見つけた。
田中宇(たなかさかい)氏が2003年に出した光文社新書『イラク』(このころはこんな単純素朴なタイトルの光文社新書もあったのだ)に、次のように書いている。
「イスラム教は古代ペルシャ帝国だけでなく、西アジアのいろいろな文明を武力で総なめにし、その後はアラビア商人がインドからフィリピンまで行って貿易し、アジア各地の王室や有力者に改宗を勧めた。その結果、イスラム教は、ペルシャ文明の宗教だけでなく、インドの古代宗教や各種の山岳信仰など、各地の人々がイスラム以前に持っていたいろいろな宗教を消化しきらずに内包している。それらを総称して『シーア派』と呼んだり『スーフィ』と呼んだりしている。イスラム教というのはヘビのお腹の皮のようなもので、その皮の下には、ヘビが飲み込んだいろいろな動物の形が透けて見える。」
敬虔なムスリム(イスラーム教徒)は激怒するかもしれないが、なるほど、と言っておきたい。「黒い聖母」やサンタクロースを内包しているキリスト教と同じことだ。
(大内要三 2007年11月14日)
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