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「平権懇」☆関係書籍☆残部僅少☆

  • ●大内要三(窓社・2010年): 『日米安保を読み解く 東アジアの平和のために考えるべきこと』
  • ●小林秀之・西沢優(日本評論社・1999刊): 『超明快訳で読み解く日米新ガイドライン』
  • ●(昭和出版・1989刊): 『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』
  • ●西沢優(港の人・2005刊・5000円+税): 『派兵国家への道』
  • ●大内要三(窓社・2006刊・2000円+税): 『一日五厘の学校再建物語 御宿小学校の誇り』
  • ●松尾高志(日本評論社・2008刊・2700円+税): 『同盟変革 日米軍事体制の近未来』
  • ●西沢優・松尾高志・大内要三(日本評論社・2003刊・1900円+税): 『軍の論理と有事法制』

平権懇2007年第2回学習会 日米同盟の近未来①~⑦

2007/06/10

日米同盟の近未来⑦  松尾高志

5_1 (07.5.26 平権懇報告)

●同盟の近未来は

Ⅵのいちばん最後のパラグラフになりますが、これは概観に対応する結論のパラグラフです。「安全保障及び防衛協力のための同盟の変革を進展させることが、地域及び世界」にとって重要だ、平和と安全に貢献するものになるということで、あらためてグローバルな共同作戦ができるような日米同盟に変えるということを結論として出しています。

安倍さんの政権の在り方は、極右の面がありますから、同盟関係を進める上で多少ぎくしゃくする要素があるわけです。しかし全体として実務レベルでは、粛々と同盟関係の変革が進んでいる。ですから、いろんな問題で極右の部分が日米関係にとってマイナスに働くことがあり得たとしても、それがダメージになってこの同盟変革が滞るということは、たぶんないだろうというふうに思います。

アーミテージ・ナイ・レポートのバージョン2が発表になりましたけれども、あそこで書かれておりますのも、このブッシュ・小泉政権下で形作られ、安倍政権下で発展させられた同盟変革(アライアンス・トランスフォーメーション)の道が、次のアメリカの政権が民主党になっても共和党になっても変わらない、この路線で行くということです。イラクがどうなるかということはありますが、日米同盟の近未来については、ドラスティックな転換ということは考えられないわけです。この2+2の合意の延長線上で、日本はグローバルにどこまでやるか、そのために日本の国内の法整備をどこまでやるか、これは憲法を変えることを含めてですが、それがアメリカから強く求められる状況、事態がいま生まれている。

米軍が軍改革をやっていますから、自衛隊も軍改革をやります。これはなかなか見えないのですが、防衛省は「防衛の在り方検討」というのをずっとやっておりまして、アメリカのトランスフォーメーションに合わせて、変化した米軍とともに戦えるように自衛隊を変化させる、ということを決めております。大きく自衛隊像というものも変わっていく、これも粛々といま進んでおりますので、同盟の近未来は、現在の条件のもとでは考えているとおりに進むと考えざるを得ないというのが私の実感です。

それにどう対処したらいいのか。なかなか難しい問題ですが、そういう大きなアメリカと日本の同盟の在り方、そういうものを推進するために、国内体制が遅れておりますから、どう法的に整備していくかが、安倍内閣、安倍の次の内閣にとって大きな課題になるということが言えるのではないかと思います。

憲法改正、改憲ということが言われます。憲法の文言は現在までのところ変わってはいませんが、とくに90年代後半から、個別法が30本近くできているんですね。戦争できるソフトがもう積み上がっていますので、改憲したときにドラスティックに変わるかというと、そういう改憲の姿というのはないんじゃないか。実態はもうすでに変わっていて、その結果として文言が変わる。

そういう意味で安倍首相は、「新憲法の制定」と言っていますが、僕はそれは正しい言い方だと思います。憲法はよって立つ原則があります。原則を変えないで部分修正するのは改憲でいいですけれども、今の憲法でいえば平和原則、これは前文と9条で規定されておりますが、その原則を変えるわけですから、これはやっぱり新憲法の制定という事態になるわけです。

柳井俊二さんが座長になって、集団的自衛権行使についても研究するという「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」、あれがどういうレポートを出すか、まだ分かりませんが、いずれにしても安全保障のための法的な基盤について、作り直す作業が始まっているわけですね。これは改憲の手前の作業をやっているのではなくて、新憲法制定の前段の措置として実施しているのではないかと思います。そういう意味でこの懇談会のレポートでは、これまでの内閣法制局がダメだと言っていている問題について、どういうロジックで答申を出すのか、それに注目する必要があろうかと思います。

2007/06/09

日米同盟の近未来⑥  松尾高志

4_1 (07.5.26 平権懇報告)

●再編ロードマップの実施

Ⅳは「再編ロードマップの実施」で、これがいわゆる基地問題です。これは新聞報道でみなさんご存じのことと思いますので、省かせていただきます。

 あとⅤの「BMD及び運用協力の強化」とⅥの「BMDシステム能力の向上」はミサイル防衛です。ミサイル防衛が大きく扱われたのは、「概観」のところに書いてあるように、安倍首相とブッシュ大統領が去年の11月に、ハノイで会談した際にミサイル防衛を強化しましょうということを確認したので、今回それをもうちょっと具体的にブレイク・ダウンして合意を広げましょう、ということです。Ⅵのほうは事実関係が並んでおりまして、これは読めばいいわけですので、その以前のⅤのほうで運用の問題について申しあげます。

一つは、これまで「2国間の計画検討作業」というのをやっていますが、ミサイル防衛は入っていなかったんですね。ですから、オペレーション・プランの中に、ミサイル防衛を組み込みましょうということをまず合意をしております。

次の段落では、10月の合意で共同統合運用調整所を横田に作ることを決めたわけですが、ピョンヤンがミサイルを連射したときのことが書いてあります。新聞報道にもありませんでしたが、そのときに暫定的な調整施設というものを置いて、非常にうまくスムーズに処理できたと発表している。ですから共同統合運用調整所ができる以前に、暫定的な施設、まあビルの中の一部屋にリエゾン・オフィサーを置いて、ということだと思いますが、調整所を作る手前の段階ですでに始めているわけです。

その次のパラグラフは、リアルタイムで情報を共有するとありますが、これは再確認です。「共通の運用画面」とありますが、これ自体がひとつの軍事用語でありまして、アメリカ側と自衛隊とが、コンピューターの同じ画面を両方で見ている、そういう情報環境に置きましょうということです。共同作戦をやる場合にも、そういう環境を整える。これまで米軍のコンピューターと自衛隊のコンピューターはリンクしておりませんでしたが、これが進みますと、コンピューターのリンク、相互乗り入れということになります。

その次のパラグラグでは、そのための包括的な情報共有のロードマップ、どういう順番でどの情報をどのようにリンクするか、工程表を作って情報共有の進展をはかる、ということを決めております。10月の合意では情報共有をやりますということで留まっていたわけですが、今回はロードマップを作って、リンクをしていくことを決めたということになるわけです。

Ⅵはミサイル防衛について、個別具体的にこういうことをやってきたということの確認ですので、省略します。

2007/06/08

日米同盟の近未来⑤  松尾高志

3_1 (07.5.26 平権懇報告)

●役割・任務・能力

Ⅲの「役割・任務・能力」のところでは、まず05年10月の2+2の合意文書を出しています。ここでグローバルに自衛隊がやることとして、10項目ぐらい特定したわけですね。活動の例として。挙がっていたのは兵站支援のオペレーションまででしたが、アメリカは治安維持のオペレーションまで、アフガニスタンやイラクでやっている安定化作戦についても日本は関与してほしいと言ってきております。それに対して、いま恒久法の案を作っている自民党の石破さんたちのグループがありますが、素案では治安維持活動はやると明記しています。

この10月の文書、「日米同盟:未来のための変革と再編」は、アメリカではその頭文字をとってATARAレポートといって重視しております。日本では「中間報告」というふうに、ほとんどのメディアが報道しました。基地問題に着目するから中間報告なのであって、それはその次のロードマップで最終報告になるわけです。けれどもこの10月の合意は中間報告ではなくて、実は変革と再編と二つあった。再編の方は中間報告ですが、変革、というのは同盟の変革ですが、これは10項目を新たに、ガイドラインでの40項目と同じ形式で合意しています。

ということを再確認したうえで、実際にイラクやインド洋で活動していますねと言って、次のパラグラフ、これは周辺事態についてのオペレーション・プランですが、それを今年の9月までに完成するという日程で進んでいるわけです。周辺事態と武力攻撃事態をワンセットにしたプランを、いま米軍と自衛隊で作っている。最終段階に入りますと、軍だけが行動するプランを作っても意味がないわけで、それを実行し得るだけの日本政府の態勢がなければならないわけです。戦争は防衛省だけがするわけではなくて、各省庁が協力して、全体として戦争を遂行するシステムができあがるわけですから。「関係省庁の計画検討作業過程への積極的な参加が引き続き極めて重要である」と書いてあるのは、その意味です。防衛省との協議で、各省庁の行政のなかに、軍事合理性というものを貫徹させる。なかなかこの作業は進みませんので、政府間合意としてここに書き加えたわけです。

その次の段落ではGSOMIA(ジーソミア)、軍事情報包括保護協定に実質合意したとあります。先ほど情報共有のところで申し上げましたように、同盟関係の中で軍事情報の共有が、情報の傘ということで強められておりまして、そういう情勢のもとで、日本にはそういう情報を保全するメカニズム、法の整備は遅れておりますので、まず最初の段階としてGSOMIAという協定を結びましょうと、合意したわけであります。

GSOMIAは秘密協定でありまして、アメリカはモデル協定も発表しなければ、60何か国と結んでいるとかいいますけれども、ほとんどが公表されておりません。公開されたものを見て類推すると、アメリカが自国で実施している情報保全のシステムと同じシステムを相手国が確立することを約束するのが、このGSOMIAの協定です。ですからアメリカは秘密保全の措置をさまざまに採っておりますが、それと同じ措置、同等の措置を日本がとるということを、まず合意した。

GSOMIAで縛られるのは、軍事情報にタッチする人間だけです。軍事情報に関与しない一般人はGSOMIAの協定では縛られない。これは秘密保護法だという話がありますが、国民全体をカバーするような秘密保護法制とは違う性格のものですね。協定を結びますと、日本はこの協定に基づいて、情報保全の措置を採ると同時に、それを担保するための法律が必要になりますが、これをすぐやるというふうには久間さんは言っておりません。しかしながらこの段階で、情報が重要だということで機密保全の措置に踏み込んだことになります。これはオペレーションだけではなくて、兵站のほうにも関係しますので、軍事産業の従事者にはこれがカバーされる。また研究・開発の部門もカバーされる。それから官僚は当然ですが、政治家も知りうるということになりますと、カバーされることになります。ですから立法措置としてどこまでカバーするのかまだ分かりません。

その次のパラグラフでは、化学・生物・放射線・核防護作業部会、これは冷戦後の新しい脅威というふうに言われておりまして、こういうものについてのワーキンググループを日米の間で設立するということを合意いたしました。ですから今後、このワーキンググループは設置をされ、そのための取り組みというものが、米軍・自衛隊のみならず関係省庁を含めて進むということになります。

それから次のパラグラフでは、日米間の省庁間の調整メカニズムを作ることが合意されました。これまで日米間のガイドラインで決めておりましたメカニズムは2つありまして、作戦計画をプランニングするための包括的メカニズムと、有事になった場合に作戦調整をするための調整メカニズムが立ち上がっています。今回の2+2の合意ではそれに加えて、「危機及びそれ以前における政策、運用、情報及び広報に係る」2国間のメカニズムですから、戦争になるということを軸にして、それ以前に遡って平時から日米間で各省庁が連絡・調整する、新しい省庁間の調整メカニズムを作ることを合意しました。包括的メカニズムも調整メカニズムも、2+2の合意のあと次の2+2でチャートが承認されておりますので、今回のこのメカニズムについても、今後の2+2でチャートが出てくるものと考えます。そのチャートを見なければ、具体的にどういうふうに考えているのか分かりません。

そして最後に、共同訓練をやって能力を高めましょう。また、こういうことをやるに当たって資源、人的資源・物的資源・財政的資源、リソースを投入しましょうということを合意しているわけであります。

2007/06/07

日米同盟の近未来④  松尾高志

6 (07.5.26 平権懇報告)

●共通戦略目標

Ⅱの「共通戦略目標」のところですけれども、国・地域がずっと並んでおります。朝鮮半島、中国、APEC、ASEAN、オーストラリア、アフガニスタン、それからイラク、イラン、NATO。この範囲についてお互いに日米の間で戦略を一致させていきましょう、というこことの合意です。

ここには北朝鮮とか中国とか、イランのように、まあ多少警戒的に見ていきましょうね、という所についてどう共同行動をしていくかというのと同時に、抱き込んでいくと言いますか、巻き込んでいくものとしてAPEC、ASEAN、インドがある。それから、もっと軍事的な関係を強化するものとして、オーストラリアとNATOが挙げられているわけです。共に戦っている場所としてはイラクとアフガニスタンが記述されている。

安倍内閣が進めている、日本外交の新機軸というふうに言っているのは、「自由と繁栄の弧」構想ですね、麻生外務大臣が提唱しております。朝鮮半島からヨーロッパに続くユーラシア大陸を弧状に取り囲んでいる、それらの地域に自由と繁栄をもたらす、そういう働きかけを日本外交としていくんだという外交構想です。これを実行するために、西の端であるNATOと軍事的な協力関係を強めていく。東の端にあるオーストラリアとも軍事的な同盟を強くしていく。日米でこの間のところを共同対処しましょう、というふうにしたわけです。安倍首相今年の4月までアメリカに行きませんでしたが、実はNATOへ行ったり、オーストラリアと日豪安保共同宣言を出したりしたのは、日米の共通戦略目標に沿ったものであるわけです。

「自由と繁栄の弧」という地域ですが、これは実はアメリカが「不安定の弧」と呼んでいる地域とだぶります。同じ地域を、アメリカはここで何かが起きる、要警戒地域としている。日本はこの地域を、日本の外交努力で、援助を含めた努力によって安定、繁栄させて民主化する。そういう意味で「不安定の弧」と「自由と繁栄の弧」は、裏表の関係にある。分業でもってやりましょうということになろうかと思います。

2007/06/06

日米同盟の近未来③  松尾高志

5 (07.5.26 平権懇報告)

●概観

今日のペーパー(共同発表「同盟の変革――日米の安全保障及び防衛協力の進展」)の方に話は戻ります。このペーパーは、小泉内閣のもとで進んできた同盟変革、軍改革、基地変革、これをワンセットで再確認すると同時に、それをさらに進めるという、そういう性格のペーパーです。このペーパーはローマ数字で6部構成になっておりますが、Ⅰは「概観」。Ⅱは「共通の戦略目標」、05年2月の2+2の合意で戦略目標を確定したわけですね。Ⅲの「役割・任務・能力」、これは05年10月29日の2+2で、「日米同盟・未来のための変革と再編」というペーパーで確認したことです。Ⅳの「再編ロードマップの実施」、これがいわゆる基地問題になるわけですが、これは去年5月のマップで最終的な合意ができた。

この安倍内閣になって初めての2+2では、小泉政権のもとで3つの分野でもって進めてきた協議を、あらためて再確認をした。戦略目標で一致しましたねと。自衛隊と米軍との間の役割・任務分担でも一致して、おおまかなチャートはできましたよねと。基地再編についてはロードマップという形で、個々の基地について決めましたよねと。で、次はこういうふうに進めましょう、というのがこのペーパーです。ペーパーに沿って見ていきます。

Ⅰの「概観」のところでは、特段大きな問題はありませんが、パラグラフの2つ目。「閣僚は、現在の拡大する日米協力が、数年前に始まった同盟の更新及び強化のためのこれまでの努力によって可能になった」。米軍再編と言われているものは実は同盟を変える作業だったですね、と改めて言っているわけです。

その次のパラグラフでは、北朝鮮が核実験をやりましたので、あらためて「核の傘」を再確認しています。「拡大抑止」という言葉を使っております。アメリカはアメリカ本土に対して核攻撃をやられたら反撃するということで抑止を働かせているけれども、日本に対して核攻撃があった場合でも核攻撃力を行いますよと、そういう意味でのエックステンデッド・デタレンス(拡大抑止)ですね。

次のパラグラフでは、「情報共有」ということが強調されています。コンピューターを中核にしてネットワーク・セントリックな戦争をするわけですから、情報が持つ価値・能力の意味は非常に高くなるわけです。

国防次官補だったナイが、オーエンスという軍人と一緒に『フォーリン・アフェアーズ』に論文を出しております。以前は核抑止力、核の傘というもので同盟国を守ってきて、アメリカはそれを率いてきたが、産業社会から脱出して情報化社会に入ると、情報の傘を差し広げて、情報優位にあるアメリカが情報の中枢を握って同盟国を束ねる。そういうふうに変わるんだと書いています。核の傘から「情報の傘」へ、です。

情報共有を日米間で進めることになりますと、そのプロテクト、保全が問題になる。日本の場合は情報を保全するためのメカニズムがほとんどないわけですので、共有することになった場合に日本から漏れることがたいへん大きな脅威になる。これを日本はしっかりやってほしいということがクローズアップされてくる。後の段で具体的な形として出てくるわけです。

いちばん最後のパラグラフですが、防衛庁設置法を変えて防衛省に格上げすると同時に、自衛隊の任務として、これまで海外へ出て行くことは付随的な任務として、自衛隊法の雑則、附則に列挙されていたのですが、こういうものを全部、本来任務として位置づけるというふうに変えたわけです。そのことについて大きく、高く評価して歓迎しています。

先ほど、同盟の変質が2回目の変革期にあると、集団的自衛権の問題で言いました。もう一つのポイントは、再定義のところではリージョナルに自衛隊が日米共同作戦で表に出るというふうになりましたけれども、小泉・ブッシュ政権のもとでの同盟変革のプロセスでは、リージョナルな共同作戦からグローバルな共同作戦に拡大するということが大きな伏線としてあります。この「共通戦略目標」のところにも出てきますけれども、日米同盟というものはアジア太平洋地域のリージョナルなものとしてファンクションさせるのではなくて、グローバルに機能させる、そういう意味で自衛隊の行動範囲、米軍との共同作戦の範囲を、リージョナルなものからグローバルなものへ拡大する、というのが、同盟変革のもう一つの大きな目的です。

いま周辺事態では説明できないことをインド洋やイラクではやっていることで示されるように、アジア太平洋地域を超えたグローバルな展開をしていく方向性が出てきている。それが目の前でギシギシいいながら進んでいるわけですが、その一つとして日本政府は防衛庁を省に格上げすると同時に、自衛隊がグローバルに展開することを本来任務とする、ということをやったわけです。

2007/06/05

日米同盟の近未来②  松尾高志

4 (07.5.26 平権懇報告)

●日米同盟はどのように変質してきたか

そのことを日米同盟に即して考えていくと、どういうことになるか。冷戦が終わってから日米同盟は2回変質しています。最初は90年代の半ばで、日米安保の再定義と言われておりますが、クリントン政権のもとでガイドラインをバージョンアップしたんですね。そこで自衛隊が行動をするエリアを本土防衛から拡大して、周辺事態への対処、リージョナルに自衛隊を出して日米で共同作戦をする、という段階に入りました。当面のシナリオは、朝鮮半島で事が起こったときどうするか、ということで共同作戦計画の立案作業が進みます。

冷戦の最中は古いガイドラインのもとで、ソビエトと戦う戦争の一環として日本は本土防衛で戦えばそれでいい、ということだったわけですけれども、ソビエトが崩潰した後は、自衛隊を外へ出して戦うように日米同盟が大きく変質します。この変質のプロセスで周辺事態法という法律ができますが、リージョナルに自衛隊が海外へ出て行くときの、米軍との共同作戦の在り方で、大きな桎梏が生まれる。これまで内閣法制局の見解は、集団的自衛権は持っているが行使し得ない、という枠がありました。日本防衛については個別的自衛権の発動でまったく問題はないわけですけれども、日本が攻撃されていないにもかかわらず、アメリカがやっている戦争に際して兵站支援のオペレーションをするのは、集団的自衛権に当たるのか当たらないのかが問題になって、内閣法制局が線引きをするわけです。アメリカがやっている武力行使と一体化するオペレーションは集団的自衛権に当たるからできないが、一体化しないものについては問題ないという解釈でもって周辺事態法律案を作って通しました。

単純に考えてみますと、戦争というものは、戦闘正面でドンパチやるだけでは成り立たないわけです。後方から前線への物流、兵站支援のオペレーションをやらないと戦争はできない。そこをまず切り離して、戦闘はしません、兵站支援だけですよというふうにして、なおかつ兵站支援の中でも武力行使と一体とするものとしないものという区分けをして、ガイドラインの別表40項目を実行しうるようにした。

戦闘地域で一緒に作戦行為をやれば一体化になるが、非戦闘地域ならば構わない、という前提で話が進みました。そこで問題になったのは、例えばアメリカの軍艦に対して自衛隊が洋上補給をする場合に、ある一定の海域でやっていたとして、戦況が変わってそこが戦闘地域になったときにどうするかということです。周辺事態法の国会審議では、そのオペレーションを中止して自衛隊は離脱するというふうに説明をしたわけです。そういう、軍事合理性から考えると矛盾、不合理が生じるので、米軍からも自衛隊からも、これではやっていけないという不満が出る。一緒に戦っているにもかかわらず、途中で状況が変わったら自衛隊はさっさと逃げるということで同盟はもつのかと。そういう話になるわけです。

再定義が終わった段階、周辺事態法ができあがった段階で、そういうことが問題意識として登ってきた。再々定義をして、集団的自衛権が行使できるようなシステムに切り替える必要がある、という声が上がってまいりました。これが第一次のアーミテージ・ナイ・レポートで打ち出されたものです。集団的自衛権が行使できるようなシステムに切り替える必要があると。

日米安保の最初の再定義をやった当事者に、カート・キャンベルがいます。民主党系ですからブッシュ政権では在野です。彼は、最初の90年代半ばの日米安保の再定義は官僚のレベル、実務者のレベルでネゴシエーションをして、それを文書化したけれども、もう一回再定義する場合は、政府を挙げて、言論界、経済界、政界をひっくるめて、大きな問題として扱うべきだと、そういう提案をしておりました。そうこうしているうちにテロが起こるわけですね。

ブッシュの二つの戦争に対して小泉政権は、それぞれ特措法でもって自衛隊を出しました。兵站支援のオペレーションです。アフガニスタンの戦争のときは、NATOも、イギリスを除いては兵站支援のオペレーションをしているわけですが、NATOの場合は集団的自衛権の行使として実施したわけです。ところが日本の場合は、その兵站支援のオペレーションが集団的自衛権に当たるのか当たらないのかという議論を国会でしたときに、小泉首相は、あまり汲々詰められてしまうと答弁に窮してしまう、という答弁をやって、まあ彼のキャラクターがあるものですから、まかり通ってしまった。そういう意味で、集団的自衛権行使の問題についてはファジーな段階に入ります。

しかも、安保再定義のときには先に合意文書ができて、それを実現する行動が後に続くことになりますが、アフガニスタンでは実質上、再々定義がここで実践的には始まってしまう、という事態が起こります。イラクでも特措法を作って自衛隊を出して、サマーワの陸上自衛隊はもう撤退しておりますが、クウェートに出している輸送機はまだ兵站支援のオペレーションをやっております。そういう意味で、2つの対テロ戦争をともに戦うという中で、日米同盟が変質を始める。

同時に、日米間の戦略対話と言っておりましたが、外交・防衛の担当者による日米協議が、ずっと行われていきます。で、3つの2+2の合意文書としてそれが結実して、今日にいたるわけです。一番最初に申し上げましたように、基地の在り方を変える、軍の在り方を変える、同盟の在り方を変える、この3点セットがワンセットで協議では進んでおりました。アメリカの方では、抽象的な議論から始めてだんだんと具体的な議論にしていく、そういうプロセスを踏んでやるんだと言っておりましたが、日本側の対応が、選挙があるとか、さまざまな理由で遅れに遅れたんですね。

このような作業はアメリカは日本とだけでなくて、韓国ともやっておりますし、NATOともやっております。韓国、NATOのほうが協議は早く終わって、次の段階へもう移っておりました。日本は対応が遅れたので、アメリカのほうから基地問題でリークを始めたんですね。ですから、この米軍再編問題が基地問題と捉えられるのは、報道のプロセスにも問題があるわけです。

この協議は、ブッシュ政権になってからすぐ始まっております。外務省、防衛庁、国務省、国防省との間の審議官級の協議をずっとやって、節々に2+2を開いて確認するという手順をとってきました。基地問題から話が吹き出しましたので、アーミテージが日本に来て仕切り直しをして、3段階の2+2の合意文書をもって、これを進めるということにしたわけです。

2007/06/04

日米同盟の近未来①  松尾高志

3 (07.5.26 平権懇報告)

5月26日、平権懇連続学習会「テロ戦争の時代に」第2回として、会員の松尾高志さん(ジャーナリスト)が「日米同盟の近未来」と題して報告し、最近行われた日米安全保障協議委員会の合意文書を詳細に分析・解説した。

●米軍改革は9.11テロ以前から

この5月1日に米国務省で日米安全保障協議委員会(通称2+2)が開催され、ライス国務長官、ゲイツ国防長官、麻生外相、久間防衛相が協議をして、共同発表文「同盟の変革――日米の安全及び防衛協力の進展」が公表されました。僕はこの間、米軍再編が引き金になって同盟変革が進んでいると主張してきましたが、まさにそれがタイトルになった発表文ですので、今日はこれを読み解くことでお話をしたいと思います。

まず、一般に9.11テロがあったから対テロ戦争・米軍再編という事態が起こったのだと、そういう雰囲気で議論が進みますが、じつは9.11の前からその動きがあって、9.11はそれを加速したんだというのが僕の意見です。

クリントン政権末期に、ゴア副大統領とブッシュ州知事が、それぞれ民主党、共和党から出て大統領選挙戦をやりました。ブッシュ候補は、これはボブ・ウッドワードが『ブッシュのホワイトハウス』という本で書いていますが、選挙をやるに当たって最初から軍改革、国防改革を公約にして動いてきたんですね。軍改革は90年代半ばから表面化するトレンドですけれども、冷戦が終わった後、どういうふうにアメリカに対する脅威というものを考えて、どういうふうに米軍の在り方を変えていくか、根本的なものの考え方のところから考え直そうという動きです。同時にハイテク技術が相当進んでいますので、それを軍事の分野に積極的に応用・適用する。

ものの考え方で言いますと、トフラーが『第三の波』という本を書いた、世界は農業化、工業化、情報化というふうに進展してきている、という図式がベースにあるようです。これまでの軍の在り方は産業化社会、工業化社会のものだった。時代はもはや情報化社会に入っているのだから、それに対応した軍の在り方を考えなくちゃいかんと。トフラー自身が『戦争と平和』という本を出しておりますが、米軍にそういう問題を考えているグループがありまして、そこに呼ばれて共同研究をした成果です。ペンタゴンの中では主流にはなりませんでしたが、水面下でそういう軍の変革ということを考えるということが、ずっと底流としてありました。当時の言葉で言うと「軍事革命」(レボリューション・イン・ミリタリー・アフェアズ、RMA)です。

軍改革をやらなければならないというのがずっと底流としてあって、ブッシュ候補はそこに着目をして、自分が大統領になったらそれを自分の政策の柱の一つとして推進するというふうに決めた。選挙戦の中でシタデルという場所で国防演説をやります。『世界週報』にも翻訳の全文が載りますが、RMAでアメリカ軍を変えるということを、彼流の言葉で分かりやすく選挙民に訴えております。

国防長官も、その軍改革ができるような人物でなければならないということで、ラムズフェルドを据える。ブッシュは大統領になってすぐラムズフェルドを指名して、彼に軍改革のマンデートを与えます。まあ委任ですね。やってくれと。RMAと言っていたその言葉が、ラムズフェルドになってからはフォース・トランスフォーメーションという言葉に置き換わります。ペンタゴンの中にトランスフォーメーション局というものを置いて、ここを中心にして、軍の在り方、国防総省の仕事の仕方、全体のスイッチを切り替えるという作業を始める。

米軍そのものを変える、仮想敵といいますか、脅威の質が変わっていますから。冷戦の最中はソビエトを中心とする社会主義圏グループが仮想敵で、そういうものとあい戦うという前提で軍を編成し、装備も調達していました。相手の国とシンメトリック(対称的)な形で軍事力を構成するということで来たわけです。冷戦が終わってそういう脅威が無くなって、次の脅威はどういうものになるかという研究がペンタゴンで進められて、国家と国家が戦うというものではなさそうだということになった。トランスナショナルなスレット(越境的な脅威)、という言い方をしますが、国境を越えた脅威です。しかもその主体はノン・ステイト・アクター(非国家主体)、テロのことですが、そういうものがこれからアメリカにとっての新しい脅威になりうると。

これまで軍を編成していくときには明らかに仮想敵がありますから、その脅威に対応できるだけの力を持つということで建軍していけばよかったわけです。冷戦が終わってから後は、シンメトリックな軍の編成では立ちゆかない。非対称的な敵と戦わなくてはいけないので、脅威の姿を想定して建軍していくのではダメです。むしろアメリカに対してどういう攻撃能力があるか、と逆に考えていって、そういう能力に対して米軍としてはいかに対処し得るか、という形で建軍していかなければならない。

オペレーションの仕方も、これまではプラットフォーム・セントリックという言い方をします。武器を積んだ軍艦だとか航空機だとか師団、そういう物的なものをどう配置してどう戦争するかを考えていた。いまや情報化社会に入っていますから、ネットワーク・セントリックで軍の運用の在り方を考えていく、コンピューターを使った戦争のやり方です。それに使いやすいような軍の編成を考えて、陸軍・空軍・海軍それぞれが軍のありようを変えていく、という動きが出てきました。

アメリカは冷戦の最中は、仮想敵を取り囲むような形で米軍を海外に配置していました。もはや仮想敵に対して世界的に米軍を配置する必要がなくなりますので、次の新しい敵に対して迅速対処できるような形で海外の基地構造を転換する必要がある。軍自体を変革していくことと同時に、世界的な軍の配置の仕方、基地の在り方もリンクして変えていく。

それと同時に、アメリカの一極支配と言いますけれども、アメリカ単独でそういう脅威に対して立ち向かうのは限界があります。使える同盟は使いますが、これまでのように仮想敵に対する同盟関係を結んで戦うのではなくて、連合による戦争、コアリションと言っておりますが、やる意志がある者だけが寄り集まって、この指止まれで戦争をしていく。コアリションを形成する元同盟国・友好国の軍の在り方も、アメリカの変革した軍と一緒に戦うわけですから、共同作戦をし得るような形にリンクして変革させなければならない。

このように米軍再編と言われていることがらは、9.11テロの前に全部、布石が打たれておりました。3つの様相ですね。基地を再配置する、いわゆる基地問題。米軍自身の変革、トランスフォーメーション。そして同盟を変える、アライアンス・トランスフォーメーション。この3つの様相を持ったものがワンセットとして動き出したのは、9.11テロ以前です。ブッシュ政権は早くからそういうものを目指していた。

で、このテロの結果、そういうふうに非対称的な敵、トランスナショナルなスレットによる事件が目の前に起こってきたわけですので、方針は正しかったということでそれを推進すると、いうふうに事態は動いてくるわけです。アメリカはアフガニスタンに対して戦争し、イラクに対して戦争をする。アフガニスタンの場合はNATO、日米、ANZASの同盟を使って一緒に戦争をしました。イラクになるとNATOが割れますが、やれる者が一緒にやる、そういう意味でのコアリションでの戦争の形態がはっきりしてきます。

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