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「平権懇」☆関係書籍☆残部僅少☆

  • ●大内要三(窓社・2010年): 『日米安保を読み解く 東アジアの平和のために考えるべきこと』
  • ●小林秀之・西沢優(日本評論社・1999刊): 『超明快訳で読み解く日米新ガイドライン』
  • ●(昭和出版・1989刊): 『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』
  • ●西沢優(港の人・2005刊・5000円+税): 『派兵国家への道』
  • ●大内要三(窓社・2006刊・2000円+税): 『一日五厘の学校再建物語 御宿小学校の誇り』
  • ●松尾高志(日本評論社・2008刊・2700円+税): 『同盟変革 日米軍事体制の近未来』
  • ●西沢優・松尾高志・大内要三(日本評論社・2003刊・1900円+税): 『軍の論理と有事法制』

平権懇2007年第1回学習会 自衛隊は何を考えているか①~⑥

2007/04/18

自衛隊は何を考えているか⑥小西 誠

◎ 戦争に耐えられない社会

Konishi003 時間が来ましたので結論をお話ししなければいけませんが、私はこのホットラインをやっていて、かつこの間、イラク反戦運動をずっと考えてみまして、ひとつの結論に達しつつあるんです。この本の中でも最終章に、「憲法9条の軍事的意義」という大げさなタイトルをつけました。憲法第9条の軍事的意義とは、現実的意義ということです。

先ほど隊員の家族という問題を挙げました。これはアメリカの場合は典型的でした。反戦運動は退役軍人や家族が中心になっているんですね。つまりベトナム戦争と比較しますと、イラク反戦運動のなかで家族が中心ということですね。相当、反戦運動の軸が変わった。ロシアのチェチェン紛争も延々と続いておりますけれども、ロシアの母親たちが、やっぱり反戦運動の軸になっているんですね。

何故なのか、これは簡単なんです、やっぱり少子化社会なんです。先進国では子供は一人、せいぜい二人ですよね。この子供が、徴兵であれ志願であれ、軍隊に入って戦争で死ぬ。それはやっぱり、親にとっては絶対に認められないことです。そんな、死ぬぐらいだったら刑務所に入ってほうがいい、というぐらいだと思うんですよ。そういう状況になっている。先進国はもちろん先進国以外も、戦争に耐えられないような社会になっている。それが現実ではないかと思います。

◎ 一問一答

――ミクシィには、どういうカテゴリーで掲載されているんですか。キーワードは。

*いや、もう何でもいいんです。「自衛隊」とかで検索すれば、もうサイトがいっぱい出てきます。

――退職制限があるということですけど、辞めるのは難しいんですか。

*結論から言いますと、上官の管理責任が問われるんです。普通は任期制なんですね。陸上なら2年、海上だったら3年という。継続はできるわけですけれども、任期期間はいちおう、退職させないことになっている。でも3曹以上は任期はないわけですから、辞めようと思えばいつでも辞められる。これを引き留めて、なかなか辞めさせない。法律的には何もありません。

――退職の強要というのは。

*少数ですが、退職の強要、気にくわなければ辞めろというのがあります。幹部候補生学校で裁判になったケースは、一般の大学出の隊員に対して、防衛学校出のエリート幹部候補生がリンチを執拗に加えて、殺すというので、辞めさせられたというものですね。上官の退職強要もときどきあります。

――パソコンや携帯のチェックはやっていないんですか。

*携帯のチェックはまだやっていません。郵便の場合は来たら全部チェックされます、中までは開けませんけれども、誰から来たかは記録にとる。問題はパソコンですね。ノートパソコンの持ち込みは構わないわけですけれども、実際には外出先から、あるいは自宅からの連絡が多いですね。

――自衛隊を辞めたいがどうしたらいいか、という相談を受けて困ったことがあります。どういうふうにお答えしたらいいんでしょうか。

*自衛隊法の40条で、任務中は辞められないことになっていますが、それは建前上のことで、本当は民間会社と同じように、1ヶ月前に退職願を出せば辞められるんです。アドバイスするのは、まず正式な退職願を書きなさいということです。書式は防衛庁のホームページに出ています。普通の便箋に書いてもいいんですけれども。これを提出すれば、法的な手続が始まります。口頭では手続をなかなか開始しないで、逆に説得にかかってきます。正式な退職願を出しても応じないときには、弁護士とかに相談することになりますね。

――小西さんが自衛隊に入ろうと思われたきっかけには、なにか小さいころの体験などがあったのですか。

*私のところでは太平洋戦争では死んでいないんです。父親は、徴兵のとき醤油を飲んで行かなかったと自慢していたくらいで。母親の父は明治以来の兵士でしたから、小さいころから軍歌を聴いて育ったんです。それで私は少年自衛官に入ったわけですけれども、15歳ですが、最初から職業軍人なんですね。自衛隊を一生の仕事にしようと思って入った。父親はいちおう反対したんですが。どうして自衛隊の中で反戦ビラを撒いたのかということがあるんですが、直接には70年安保で治安出動の態勢に自衛隊が初めて入って、私のいた佐渡島の自衛隊でもその訓練が始まったということがあるんですが、その背景にあるのは、やっぱり人権とか平和とか、という問題を考え始めていた。当時、法政大学の通信教育を受けていたものですから、その中でも労働問題とか階級の問題とかを考え始めて。なぜ自衛隊に入ったかといえば、高校に行けなかったからですね、貧乏で。田舎ですから、高校進学率は3分の1くらいでしたね。自衛隊に行けば高卒の資格もくれる、将来は幹部の道もあると、そういう方向を選んだんですけれども。自衛隊に入って、今度は国民の鎮圧の側に回る、そういう自分のありかたを意識し始めたということです。簡単に言うのはちょっと難しいんですが。

――自衛隊の配備が南西重視に変わっているということですが、これはアメリカの指示ですよね。日本の防衛大臣が独自に考えたのではなくて。

*基本的にはアメリカの戦略だと思うんですが、日本の自衛隊としましても、冷戦が崩壊して敵がいなくなってしまったわけです。北朝鮮脅威論も90年代初めに出ましたけれども、燃料はないし戦闘機は古いし、日本に来る力もないでしょう。巨大な自衛隊の陸海空戦力と比べれば問題外の戦力なわけですよね。ですから中国脅威論なんですね。南西重視は簡単に言えば中国脅威論です。自衛隊の作戦計画でも、尖閣諸島を中国が占拠したとか、台湾海峡を中国が封鎖するとか、そういう話が出てきますから。公式には海上交通ルートを確保すると言っていますが。防衛白書を読んでみると、なんでも脅威になってしまう。ですから、アメリカのアジア戦略でもありますけれども、敵をなくしてしまった自衛隊の、敵をつくるための戦略でもあるんです。

――北朝鮮を自衛隊はまったく気にしていないんですか。

*テポドンの脅威だけを、異常に強調していますね。もう一つは、北朝鮮の特殊部隊、コマンド部隊が破壊活動をすると宣伝しています。弾道ミサイル防衛体制網も、つい先週ですか、配備されています。あんなものは意味がないでしょうけど。もちろん防衛白書では北朝鮮の大量破壊兵器、テロの脅威を強調しています。

――沖縄で小学生に暴行した米軍兵士の事件は、その後どうなったか、情報公開で分かりますか。

*刑務所から出て、除隊して、アメリカ国内に住んでいるという報道を見たことがあります。もう普通の生活をしているという。米軍の情報公開でやるしかないでしょうね。

――自衛隊員は普段は何をしているんですか。

*普段はヒマなんです。駆け足をしたり体操をしたり、時にはソフトボールをしたり。でも、ときどき演習がありますから、その演習に向かった基礎訓練をやっています。でも、世の中の職業の中では、たぶんいちばんヒマですね。忙しいのは海外出動している部隊だけです。

――自衛隊は脅威がなくなると困るというのは、隊員が失業するからでしょうか。

*脅威論を制服組のトップレベルが打ち出したのは、自らの職を確保したいからです。しかしこの間のテロ脅威論なんかを見ますと、自衛隊制服組を超えて、政府、日本の支配層の意思という感じがします。実際に脅威があるかといえば、日本に対するテロ脅威はほとんどないと思いますね。政府の文書を見ましても、ゼロに近いと書いてあるんですよ。でも例えば旅館業法を改悪して、外国人の名簿をチェックするとか、あるいは一定のエリアを確保して、そこに対しては出入りを禁止する、国会周辺だとか。重点警備地区ですね。そういういろんな法律が予定されておりますけれども、恐怖をあおっている。日本社会の排外的なあおり方とテロ脅威論のあおり方とは、重なっているでしょう、治安体制として。

――ホットラインからの派遣の形で行かれた、在イラク自衛隊監視センターの渡辺修孝さんの活動の成果を、いまどうごらんになっていますか。

*行って2ヶ月もしないうちに拘束されたので、成果と言えるほどのこともないわけです。自衛隊がサマワに行って、渡辺君が行って、活動を始めようとしたところで拘束されてしまった。その後も行く準備はしましたけれども、いまは入れませんから。当面は無理ですね。

――陸自がイラクで、いかに何もしなかったかが問題ですが、それよりも空自が何をしているのか全く分からないのは危険なことだと思います。

*私も情報公開を要求しましたけれども、表紙みたいなのがあって、中は20ページくらい、全部真っ黒でした。それが自衛隊の方針ですね。情報公開法でやりますと面白いんですけれども、マル秘文書なんかもけっこう出て来るんですよ、マル秘を止めた形で。でも航空自衛隊の活動だけは一切出さないですね。

――アメリカのイラク戦争の目的は石油のためだと言われますけれども。

*そのへんは中東の専門家にお聞きになったほうがいいと思いますけれども、アメリカはイラクの石油は100パーセント握っているでしょう。

*一点だけ追加でお話しします。自民党は改憲案を出しましたけども、その中に軍事裁判所の設置という中身が出ています。新聞報道がほとんどされていないものですから、私はここで強調しておきたい。正確には自民党改憲案のなかに、こういうふうに書いてあるんですね。「軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより、下級裁判所として、軍事裁判所を設置する。」これが763項です。軍事裁判所を設置するとは、非常に古めかしいことを言ってきているわけですけれども、これは現行憲法体制と完全に矛盾するわけですね。日本国憲法では特別裁判所を設置できないことになっていますから。

 自民党の憲法改定案が出てくる前後あたりから自衛隊の中で、軍法会議を作れという声が、どっと出てきました。単に軍事裁判所だけではなくて、軍法会議、軍刑法、軍事拘留施設、これをワンセットで作れという要求です。軍法会議だけでは機能しませんから。もちろん今は自衛隊は軍法会議がないし、拘留施設はないわけです。私は自衛隊法64条違反で初めて逮捕されました。自衛隊の警務隊に逮捕されるんですけれども、自衛隊には拘留施設がありませんから、一般の刑務所の中にある拘置所に入れられて、そこに警務隊が取り調べに来たわけです。裁判も一般の裁判所で公開の法廷です。自衛隊を作った占領軍の幕僚のひとりにコワルスキー大佐がいますが、彼の著書『日本再軍備』の中で、自衛隊に軍法会議、特別の軍刑法がないということは、大きな役目を果たしていると書いています。要するに歯止めなんですね。それを自衛隊の中で、自民党の改憲案に合わせて作れという動きが出てきています。

そして罰則を強化する。例えば防衛出動下の逃亡はいま7年以下の懲役ですけれども、死刑にする。それから量刑の範囲を広げる。自衛隊には量刑が9項目ぐらいしかないけれども、米軍や旧日本軍は780項目あるから、それぐらいの範囲を作れと。自民党の改憲案に合わせてそういう動きが具体的に出てきているということですね。

ただその最大の矛盾は、そうやって強化された、軍法会議のあるような自衛隊、そんなところに誰が入るのか、ということです。これが最大の難問なんですけどね。

2007/04/17

自衛隊は何を考えているか⑤小西 誠

◎ 南西重視の部隊配置へ

自衛隊の再編という問題で2つ目の重要なポイントですが、もともと自衛隊は北方重視戦略でした。旧ソ連を対象にした北方重視戦略として、北海道を重点に配備したわけですけれども、これは現在、北方重視から南西重視に変わっている。沖縄重視ということです。新野外令で離島防衛作戦というのが出てきたからです。

離島防衛作戦というのは、離島を防衛したり、離島を占拠した中国軍からそれを奪回する作戦、上陸作戦です。新野外令の中で初めて上陸作戦という概念が出てきたんですね。今までは、対着上陸作戦、向こうが攻めてきたときにそれを守るためにどうやるかということが、野外令の記述だったんです。九州の西部方面隊の特殊部隊、西部方面隊普通科連隊が正式名称で、長官直属の部隊、長崎県の相浦市にあります。この600何名かの自衛隊初めての普通科部隊は、離島防衛のための部隊として創設されていますが、この部隊が去年のはじめでしたか、アメリカの海兵隊と、アメリカの西海岸で上陸作戦訓練をやって話題になりました。

自衛隊が北方重視から南西重視に入るという大きな転換は現在、新中期業務計画なんかでも進行中です。沖縄にはいま陸上自衛隊の場合は第一混成団という、非常に小さな部隊がいるだけですけれども、これを旅団に昇格する。沖縄の航空部隊はF4部隊ですが、この部隊を百里基地にもっていって、百里基地の最新鋭のF15を沖縄に持って行く。百里の航空自衛隊は古い戦闘機でいいということになるわけですけれども。こういうことがすでに始まっています。

沖縄重視、南西重視というのは、中国に対する脅威論に基づく対中国戦略ということです。アメリカの去年のQDR(4年ごとの防衛見直し)の中でも、中国を戦略的な対象に位置づけるという記述がなされておりましたけれども、そのはるか前から対中国戦略の一環として沖縄重視戦略がすでに発動されているということだと思います。

いま挙げたような中身は、敢えて言いますと「自衛隊のトランスフォーメーション」です。米軍のトランスフォーメーションというのは新聞に報道されて、沖縄の海兵隊がグアムに移転するとか、分かりやすいですけれども、自衛隊のトランスフォーメーションは非常に分かりにくいですね。

防衛庁内部に「防衛力のありかた検討会議」というのがあるんですが、この報告書が新防衛大綱の原案になったと言われています。自衛隊のトランスフォーメーションを具体的に、こういうふうに言っております。「一言で言ってこの自衛隊の大再編というのは、対機甲戦から対人戦闘への防衛力設定の重点シフトへと、部隊配備を転換させる」。言い換えれば、「陸自の師団、旅団を普通科部隊等に重点を置いた、低強度紛争に充分対処しうる設計、LICタイプの即応集団とする」。つまり米軍がLIC、低強度紛争という概念を80年代から展開して、ソ連・冷戦崩壊後の世界戦略としてきたわけですけれども、その低強度紛争に対応する部隊に転換するということですね。

中央即応集団、CRFと言っていますけれども、すでに相模原に配置されています。沖縄での作戦には緊急投入される部隊になりますし、また海外派兵の専門部隊でもあるということになります。大事なことは、安保との連動ということになりますね。そういう段階になってきていると思っております。

2007/04/16

自衛隊は何を考えているか④小西 誠

◎ 新野外令にゲリラ・コマンド作戦を追加

Konishi001 自衛隊の中でイジメ、自殺等々が相当増えてきている、その大きな背景にあるのは自衛隊の再編だと言いました。この自衛隊の再編問題は、残念ながら新聞の報道でも非常に部分的で、何が再編されているのか分からないというのが現状だと思います。次に、自衛隊の再編のポイントを何点か挙げておきます。

みなさん、自衛隊が対テロ・ゲリラ・コマンド作戦に全面的に再編されたということは、ご存じでしょうか。昔はソ連が攻めてくるというので、戦車・装甲車を準備したんですね。いわゆる機甲師団を軸に北海道の大地で、何キロにもわたって展開して前線をつくって、ドンパチをやる、これが昔の陸上自衛隊の戦闘でした。正確には対着上陸作戦と言います。こういう昔のやりかたの戦争は、もうほとんど止める。陸上自衛隊の中心は、対テロ・ゲリラ・コマンド作戦にほとんど変わっているわけです。別な言い方をすると、新防衛計画の大綱で言っておりますけれども、大砲や戦車は4割削減する。人員も3割削減する。余分な人員は対テロ作戦の強化に回す。簡単に言いますと、こういう方向にやっているわけです。

ところがこの実態というか現実、その全体像は全然、どのマスコミやテレビも伝えていない。だから今、自衛隊が戦後最大の再編に入っていることの意味が、ほとんど伝わって来ないんじゃないかという感じがするんです。

この再編はどこから始まったのか。さっき新防衛計画の大綱、200412月の大綱と言いましたけれども、これはもう最後の追認、公式に承認したということだけです。もともとは90年代の終わりから始まったんです。

ひとつは2000年1月に「野外令」という教程が改定された。自衛隊には「戦車教範」とか師団の教範だとか、小銃の教範だとか、教科書が100近くあるわけですけれども、最高の教科書というか、基本教範がこの野外令です。日本の陸軍では戦前、「作戦要務令」と言いました。この野外令が2000年1月に改定されて、改定の重要なポイントが2つありました。その一つはゲリラ・コマンド作戦が追加されたことです。

この野外令全文を、私は情報公開法に基づいて手に入れまして、いま、この『自衛隊そのトランスフォーメーション』という本を買った人にはインターネット上で全文、400ページ以上を無料でプレゼントします、というキャンペーンをしています。防衛庁はおそらく腹を立てているでしょうね。誰でも読めるようになっていますから。

2000年のことですが、12月4日に自衛隊の治安出動に関する訓令が改定されて、同時に防衛庁長官と国家公安委員長が締結した治安出動の際の治安の維持に関する協定が全面改定された。今までは自衛隊の治安出動は暴動対処が中心だった。60年安保、70年安保の騒乱は自衛隊では暴動と言うんですけれども、暴動対処が中心だった。その暴動対処は若干残すけれども、全体の治安出動の対象を「治安侵害勢力」と規定したんですね。解説書では治安侵害勢力とはゲリラだと言っています。

野外令が2000年に改定されて、治安出動に関する訓令の改定、公安委員会との協定の改定が200012月に行われた。これは皆さんご存じのとおり、あの2001年の9.11事件よりも1年近く前です。つまり自衛隊は90年代に、一方で対ゲリラ・コマンド作戦を準備しながら、これは日米安保の新ガイドラインと周辺事態法に基づく作戦の変更ですけれども、もう一方でこのテロ事件、9.11事件が起きる前から治安出動の対象を変更していたということです。

こういう治安訓練の協定が成立してから、北海道から九州まで、各師団・各県で治安協定が結ばれて、訓練マニュアルが作られて、一昨年からは実働訓練がすでに始まっています。北海道を皮切りに、警察と自衛隊の治安出動の実働訓練が始まった。これは全国化しております。こういう形で、治安出動対処、治安侵害に対する対処、テロ・ゲリラ対処ということで、全面的に動いているわけです。対ゲリラ脅威論の虚構ということについては、今日は述べる余裕がありませんが、実際は9.11事件よりもはるかに前に自衛隊はそういう態勢に入っているということです。

2007/04/15

自衛隊は何を考えているか③小西 誠

◎ 兵営の壁が崩れ始めた

この相談をやっておりまして、いくつか感じたことがあります。最初、電話を使っていたときも、だいたい9割はEメールでした。電話を24時間維持するのは大変だったものですから、メール一本に絞って、ときどき緊急に必要なときに電話を使うくらいです。

米兵・自衛官人権ホットラインの小西誠と名乗っているから、これはどう見ても反戦派の集団です。そこにこれだけ大量の相談が来る。これはひとつの面白い点だと思います。私たちのホットラインはそんなに宣伝しているわけじゃありませんけれども、自分たちでアドレスを探して連絡してくる。

もうひとつは、これはかつての自衛隊とは違うんですね。もともと自衛隊は戦前・戦後の連続性があって、自衛隊の兵営は戦前の軍隊と同じ、いわゆる真空地帯です。市民社会から隔離してやってきたはずなんです。はずなんですけれども、こうやって私のところに大量のメールが届く。インターネットによって、自衛隊の壁、昔の言葉では兵営と言いますが、その壁が崩れ始めた、大胆に崩れ始めたと思うんですね。今は皆さんもご存じのとおり、ネットカフェ、マンガ喫茶に行けば、どこからでもインターネットにアクセスできますし、どこからでもメールを出すことは可能です。あるいは普通の携帯メールで直接連絡が来ます。

もうひとつは、そういう現職の自衛官、元自衛官からの連絡もありますが、自衛隊員の家族が半数以上を占めている。この意味は非常に大きいと思うんです。今まで私のイメージでは、どっちかというと自衛隊の家族は保守的なのかなと見ていたわけですけれども、イラク戦争あたりから、家族の意識がだいぶ変わっているなという感じがしました。家族が自衛隊員の声を代弁する形で、相談に来たり意見表明をしているんです。これも非常に面白い特徴が生まれてきていると思います。

現職の自衛隊員の場合は、自衛隊法61条で、政治的な意見表明なり外部と接触は制限されているわけですけれども、しかし家族にはなんの制限もありません。家族からの問い合わせは自由にできるわけですし、自由に発言できるわけですね。

個人的な話になりますが、私の連れ合いが住んでいる東京の団地の横に56年前でしたか、自衛隊の官舎ができました。こんなところに自衛隊の官舎ができるのは非常に珍しいんです、基地の近くならいっぱいありますけれども。航空自衛隊の高級幹部用の官舎です。アメリカへ行ったり来たりするようなエリート、そういう人たちです。子供たちは私の子供と小学校、中学校が一緒です。当然、友達になります。ところが運動会なんかに行きますと、幹部自衛官は私と目を合わせないんです。母親はべつにいいんですね、普通につきあっているわけですけれども、奥さんたちもいろいろ悩みを抱えているのがよく分かります。でも父親は絶対に一言も私に口をきかない。

こういうインターネットの実態の中で、自衛隊はもう数年前から、隊員個人のホームページを作るのを禁止したり、2ちゃんねるへのアクセスを禁止しました。しかし禁止してもホームページを作ったり、あるいはいろんな自衛隊情報を2ちゃんねるなんかに流したりしております。またミクシィという、800万人ぐらい会員がいる、青年層というか10代から30代ぐらいが中心のコミュニティがありますね、インターネット上の。私もここに加入しまして、ちょっと探ってみたら、ミクシィの中に膨大な自衛隊員のコミュニティがある、部隊ごとにコミュニティがあるわけです。参加するにはいろいろ制限があったり、現職自衛官限定だったりするんですが、見るのは自由なんです。そこを見ていますと、訓練の実態なんかけっこう詳しく書いてあります。

2007/04/14

自衛隊は何を考えているか②小西 誠

◎ 隊内で執拗・陰湿なイジメ

Konishi002 実例を出したほうが分かりやすいと思います。今週来たばかりのものを読み上げさせていただきますが、これは母親からEメールで来ております。

「お返事ありがとうございます。子供にはメールにてイジメのことを知らされました。今年の2月から勤務地が決まり、現在地が変わります。今のところ無休状態のため、外出もできない状態です。初めてイジメについてメールが来たのは、仕事を始めて2週間ぐらいしてからです。先輩に呼び出されて、棒で殴られた。夜、部屋の中で屁の臭いを嗅げと、無理やり嗅がされた。このときは、そのくらい我慢できなきゃ駄目だよ、となだめすかしました。息子の甘さからくるわがままと思ってしまったからです。

その後、今週の月曜日の夜にイジメ問題のメールが来ました。全裸にされた。タバスコをかけられた。上司は見て見ぬふり。辞めたい旨伝えても、そのまま返事はなし。逃げると罰金と脅かされた。メールもあまりしていると、あいつは辞めろとか言われるので、あまり連絡がとれません。寮にいる先輩がイジメに荷担しているようです。

私が息子から聞いた話はほんの一部のようですが、私の知っていることを書いてみました。本人はすぐに辞めたいのです。どうしても辞められない状態のときは、逃げ出させたいと考えています。私にとっては大切な一人息子です。就職はいくらでも換えがあるけれど、命の換えはないのです。どのようにすれば良いのでしょうか。力をお貸し下さい」

僕らの知っている自衛隊というのは、新隊員をいじめるのにこんな執拗なことはしなかった。命令で何かやらせたり、時には目立たないところを殴ったり、直接、短絡的なものだったんです。いまはこういう陰湿なイジメが、繰り返し継続的に続いている、いうことなんですね。

もうひとつご紹介しますのは、現職の自衛官からです。

「こんにちは。私は現職の自衛官として働いている者です。現在、上司からパワハラを受けており、精神が参っております。何かよい対策はないかと考えていますが、見つからないのが現状です。インターネットでこのサイトを見つけたので、メールをさせていただきました。詳しい話はメールでは長くなるので、電話でお話ししたいです。本当に精神状態が限界に来ております。もう退職しようと考えています。よろしければ電話にて相談を受けていただけないでしょうか。返信をお待ちしております」

いま私どものホットラインはメール専門の受け付けにしておりますので、こういうふうな中身なのですが、特別に電話で話しました。航空自衛隊の隊員で、32歳、2等空曹だと言っておりましたけれども、勤務上の報告書を出すのを忘れたということで、2ヶ月間の外出禁止になった。そして直接の上官から毎日、君はなぜ煙草を吸っているんだ、なぜ酒を飲むんだとか、ゲームを止めろとか、執拗にやられるらしいんですね。実は32歳の2等空曹を2ヶ月間の外出禁止にするなど、普通はあり得ないんです。航空自衛隊の場合は、下士官以上になればほとんど外出は自由です。外泊もできる。それが陸上自衛隊などとちょっと違うところですが。2ヶ月も外出禁止になりますと、精神状態がおかしくなりますね。籠の鳥みたいなものですから。

退職の制限にしろ、イジメにしろ、外出禁止にしろ、隊員を苦しめている。本当に死にたい、自殺したいという相談を、時々受けるわけです。こういう状態がなぜいま続いているのかということが、いちばん問題じゃないかと思いますね。

全自衛隊で自殺が増えておりますが、いくつか海上自衛官では裁判をやっています。長崎地裁で1件、横須賀の海上自衛隊のケースで横浜地裁で1件、訴えられています。1月にも宇都宮地裁で、海上自衛隊のイジメ問題が提訴されました。毎日新聞に小さな記事が載ったかと思いますが、これは海上自衛隊の幹部学校の学生で、同僚の防衛大出身のエリート学生から、お前は退職しないと殺すと執拗に脅されて退職していったという経過がありました。イジメに遭って、その後遺症が残っています。ある程度の障害は自衛隊側も認めているんです。私たちは裁判は、直接にはかかわる余裕がありませんけれども、事前の相談にはだいぶ乗ったケースです。

いま申し上げてきたように、自衛隊の中から大量の相談が寄せられているということですね。この動きの原因ですけれども、結論から言いますと、自衛隊がいま戦後最大の再編過程に入っているものですから、その過程で出てきている隊員へのストレス、そのストレスの中から出てくるイジメ、陰湿な嫌がらせ、それから退職制限です。こういう状態が背景にあるのではないか。

自衛隊側の方でもホットラインを設置して、対策をとろうとしたんですね。最初は自衛隊の中に作りましたけれども、その後民間に委託するような形でホットラインを作ったんですが、聞くところによりますと、ほとんど相談がないということらしいです。といいますのは、そこに相談に行きますと、翌日には直属の上司のところに中身が来ていて、お前、どうしたんだ、とか、仕事を異動させられたりする。相談が筒抜けになってしまっている。

もうひとつは、民間に委託したんですが、あまり自衛隊のことがよくわからないので、相談が来てもどう対応したらいいか分からない。ただ聞くだけで機能していない。こういう中、私どもに相談がそうとう多く寄せられてきた、というところです。

2007/04/13

自衛隊は何を考えているか①小西 誠

平権懇2007年第1回学習会

自衛隊は何を考えているか

――米兵・自衛官人権ホットラインの経験から

小西 誠

331日に行われた学習会の講師は、小西誠さん。かつて自衛隊内で治安出動訓練反対の宣伝活動をして裁判で無罪をかちとり、イラク戦争に際しては米兵・自衛官に「殺すな、殺されるな、出動命令を拒否しよう」と呼びかけている。学習会では、最近の著書『自衛隊のイラク派兵』『自衛隊そのトランスフォーメーション』の内容をふまえて、「隊内にはびこるイジメは自衛隊の戦後最大の再編過程にあるストレスから」「インターネットは兵営の壁を崩した」「脅威は存在しない」「少子化で戦争に耐えられない社会になった」と語った。

イラク戦争が始まってから、2003年の6月からですが、米兵・自衛官人権ホットラインというのを立ち上げました。それ以降もう4年近く経っているわけですね。

最初の2004年の前半くらいまでは、自衛隊員とその家族、とりわけ家族からの相談が相当ありました。行かせたくないが、どうしたらいいか、拒むことができるのかと。2004年の後半くらいになりますと、世の中のイラク反戦・平和運動が後退するとともに、相談もパッタリなくなってきた。

ところが、この2005年から6年、そして現在まで、急にまた相談が増えました。不思議な現象といいますか、そういう状況が起きております。イラク戦争が始まった当時の相談が数十件ぐらいとすれば、この2年間の相談は、正確には数えていませんが、300件くらいあるんじゃないかと思います。毎週、23件の相談が、現在でも来ている。ただ、相談の中身がだいぶ変わってきました。

かいつまんでお話ししますと、例えば航空自衛隊の隊員の息子がいる。その息子が暴力に遭ってうつ状態で、早急に退職させたいけれども、なかなか退職させてくれない。どうしたらいいか、というお母様からの相談があります。

あるいは、沖縄で自衛隊員の奥さんから、自分が反戦デモに出ていることを理由に隊員の夫に対して上官が退職の強要行為をしている、どうしたらいいだろうかというのですね。あるいは、海上自衛隊の隊員の場合は、退職を申し出て1ヶ月になるのに、なかなか退職させない、自殺したい、というようなことだったり。これもまた海上自衛隊の女性自衛官ですけれども、先任の海曹からセクハラを受けている、なんとかしてこれをやめさせられないかと。

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