2015年12月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
フォト

「平権懇」☆関係書籍☆残部僅少☆

  • ●大内要三(窓社・2010年): 『日米安保を読み解く 東アジアの平和のために考えるべきこと』
  • ●小林秀之・西沢優(日本評論社・1999刊): 『超明快訳で読み解く日米新ガイドライン』
  • ●(昭和出版・1989刊): 『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』
  • ●西沢優(港の人・2005刊・5000円+税): 『派兵国家への道』
  • ●大内要三(窓社・2006刊・2000円+税): 『一日五厘の学校再建物語 御宿小学校の誇り』
  • ●松尾高志(日本評論社・2008刊・2700円+税): 『同盟変革 日米軍事体制の近未来』
  • ●西沢優・松尾高志・大内要三(日本評論社・2003刊・1900円+税): 『軍の論理と有事法制』

« 自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告13 ① | トップページ | 読む・読もう・読めば 23 »

2008/01/12

自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告13 ②

6.判決の中で、積極的に評価できる点は、下の3点にとどまる。

第1に、箕輪さん本人尋問、山田先生証人尋問などを実現した実質審理を反映して、損害賠償(慰謝料)について却下でなく棄却判決であること。これは、06年7月の関西訴訟判決、前記名古屋判決に続くものである。

第2に、「原告らが、それぞれの立場,信条等から、平和のうちに生きたい、戦争行為や人殺しには加担したくないとの心情等を有し、本件派遣に対して不安や嫌悪感を抱き、その実施に強く反対していることは容易に認めることができるところであり、自衛隊法が成立した際、『自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議』がされていることなど、我が国における歴史的な経緯等にかんがみれば、原告らのそうした心情等は軽視されてよいものではない」(18頁)等と、原告らの訴えに対する理解と共感を示していることである。

第3に、結審間際に問題になった自衛隊情報保全隊のイラク派兵反対運動監視について、「本件派遣に際して、自衛隊保全隊による国民に対する情報収集活動が行われていたことがうかがわれ、そうした国民一般に対する情報収集活動自体はゆゆしき問題と言わざるを得ない」として(19頁)、「当該情報収集活動をもって本件派遣の違法性を基礎付ける事情として考慮することは格別」云々と(結論的には原告ら個人に対する侵害はないとした)、これがイラク派兵と一体の問題であるとする認識を示し、直接の監視対象となれば法益侵害性が認められることを示唆していることである。これは、07年10月5日に提訴した仙台新訴訟(情報保全隊の監視対象になった原告が国賠提訴)につながるものである。

7.弁護団は、今回の判決を確定させることは到底できない。原告団も、同様に控訴してたたかう決意を明らかにした。

自衛隊がイラクへ派遣され続けている現在、私たち一人一人に、主権者としての責任が問われている。私たちには司法府に対し、「憲法の番人」としての責任を果たさせる不断の努力を行う責務がある。 

私たちは,一日も早い自衛隊の全面撤退を目指し、引き続き裁判所に自衛隊派兵の違憲性を訴えていくとともに、平和憲法の破壊を食い止めるたたかいを続ける決意である。
                                    以上

◆参考資料-全国訴訟の到達点

■06年7月20日、関西訴訟判決、派遣差止請求について「却下」ではなく「棄却」の判決。

門前払いから実質審理へ

原告らの陳述書や本人尋問に立った原告名を全部列挙し、さらに「弁論の全趣旨によれば、原告らが、本件派遣等によって、生命・身体に対する危険を覚えたり、戦争に加担しないで平和に生きたいという思い、人殺しに加担したくないとの信念、自己の納める税金を戦費に使用されたくないとの願いを否定され、精神的苦痛を被ったことが認められる」と判示し、「人格権に基づく本件派遣等差し止めの訴えは適法」として、門前払いの「却下」ではなく、実体審理入りの「棄却」判決を言い渡した。それまでの山梨、名古屋、静岡が、原告らの「人格権又は保護に値する人格的利益が侵害されたとはおよそ認められない」とする却下判決からは、一歩前進である。イラク人2名を含む千人を超える原告団と証拠調べ(原告本人尋問)実施の成果である。

しかし、他方で「間接民主制の下において決定、実施された国家の措置、施策が自らの信条又は憲法及び法の解釈に反することによる個人としての憤慨の情、不快感、焦燥感、挫折感等によるものというべきであり、かかる苦痛は、多数決原理を基礎とする決定に不可避的に伴うものであって、間接民主制の下における政策批判や、原告らの見解の正当性を広めるための活動等によって回復されるべきものである」として、結局法的保護に値する利益であるとは言えないとしたのは、裁判所が政治の下僕となり、裁判所に付与された違憲立法審査権の意義を理解しないものである。

■07年3月23日名古屋第7次訴訟、法解釈の一般論で、平和的生存権の具体的権利性、裁判規範性を正面から認める画期的判決!(「定点報告 2」を参照)


名古屋の第7次訴訟判決(田近正則裁判長)は,結論は敗訴だが、平和的生存権と私法上の権利の部分で大きな前進を勝ち取った。判決は「平和」は抽象的概念でその達成の手段方法が一義的でないとし、直ちには具体的権利性があると言えないと否定したが、それに続けて、次のように判示した。

「もっとも、平和的生存権は、すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であり、憲法9条は、かかる国民の平和的生存権を国の行為の側から規定しこれを保障しようとするものであり、また、憲法第三章の基本的人権の各規定の解釈においても平和的生存権の保障の趣旨が最大限に活かされるよう解釈すべきことはもちろんであって(もとより国家の存立にかかわる国の行為についての違憲性の判断は間接民主制の統治システムが円滑に機能している限り慎重かつ謙抑になされるべきであるが)、憲法9条に違反する国の行為によって個人の生命、自由が侵害されず、又侵害の危機にさらされない権利、同条に違反する戦争の遂行ないし武力の行使のために個人の基本的人権が制約されない権利が、憲法上保障されているものと解すべきであり、その限度では、他の人権規定と相まって具体的権利性を有する場面がありうるというべきである」

平和的生存権を全ての権利の「基底的権利」としてその重要性を認め、憲法上の権利として具体的権利性を認められる場合があることを認めたのである。さらには、「国家の存立にかかわる国の行為についての違憲性の判断は間接民主制の統治システムが円滑に機能している限り慎重かつ謙抑になされるべき」とし、そうでない場合には積極的に司法判断を行う可能性を示している点も評価できる。

人格権侵害については、これまでの棄却判決と同様に、内心の感情の侵害であって人格権侵害にあたらないとの結論だったが、それに続く一般論の部分で、次のように一定の場合には肯定し得ると判示した。

「もっとも、憲法前文及び9条の法文並びにそれらの歴史的経緯にかんがみれば、憲法の下において、戦争のない又は武力行使をしない日本で平穏に生活する利益(かかる利益を平和的生存権と呼ぶか否かは別として)が法的保護に値すると解すべき場合がまったくないとはいえず、憲法九条に違反する国の行為によって生活の平穏が害された場合には損害賠償の対象となり得る法的利益(人格権ないし幸福追求権)の侵害があると認めることもまったく不可能なことではないというべきである」

これは,長沼判決以後、平和的生存権の価値について最も高く評価した判決である。結論は敗訴だが,平和的生存権の確立を求める闘いに展望を示すものとなった。
(杉山隆保・2008/01/12)

« 自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告13 ① | トップページ | 読む・読もう・読めば 23 »

杉山隆保 コラム「自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告」」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/204354/17645976

この記事へのトラックバック一覧です: 自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告13 ②:

« 自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告13 ① | トップページ | 読む・読もう・読めば 23 »

無料ブログはココログ