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2008年2月

2008/02/29

読む・読もう・読めば 26

事実は小説より

福井晴敏氏の『亡国のイージス』が講談社から刊行されたのは1999年。日本推理作家賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞とトリプル受賞して2002年に文庫になったので読んだ。お話の設定自体に馴染めず、メッセージ性にも違和感を持ったので、すぐに処分したらしく、いま手元にない。イージス艦「いそかぜ」の艦長、宮津弘隆が特殊兵器で首都東京を人質に反乱を起こす、という物語。北朝鮮の工作員がからみ、登場人物は多彩だ。映画化に際しては実物のイージス艦「みょうこう」が使われたが、防衛庁の協力をとりつけることができたのは、当時長官が軍事オタクの石破茂氏だったからで、さすがに艦長が反乱を起こすのはまずいから副長に変更されたという。この映画は見ていない。

小説・映画・コミック・ゲームソフトまで含めたエンターテインメントよりも、現実のほうがはるかに醜悪だ。イージス艦の艦長と石破氏が登場する、なんともやりきれない今回の事件の真相は、いまだ解明されていない。この事件を見る私どもの基本姿勢は平権懇の225日付声明に書かれているので、繰り返さない。

この3月には6隻目のイージス護衛艦(重巡洋艦と呼ぶべきだが)、「あしがら」が就役する。「こんごう」型より大型の「あたご型」2番艦で7700トン、佐世保に配備される。これで日本のイージス艦は横須賀に1隻、佐世保に2隻、舞鶴に2隻、呉に1隻になる。太平洋よりも日本海重視であることは明白だ。名称からして、すべてのイージス艦は旧海軍の艦名を踏襲している。金剛、霧島、妙高、鳥海、愛宕、足柄。今回の事件を起こした「あたご」は2005年に進水しているが、部内応募で艦名が「ながと」に決まりかけ、さすがに「時期尚早」として見送られたという。

このような大型艦は起工から3年かけて竣工する。最初のイージス艦「こんごう」が就役したのは1993年だから、ずいぶん前からこのような金食い虫の巨大艦隊は準備されていたのだ。いったい国会での予算審議で何をしていたのか、と改めて思う。

(大内要三 2008228日)

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2008/02/26

『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』 イージス艦の漁船衝突事件に際しての声明

『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』

編者 平和に生きる権利の確立をめざす懇談会  松岡英夫・浦田賢治・榎本信行

昭和出版 19891月刊

執筆 松岡英夫・西沢優・松尾高志・林茂夫・浦田賢治・斉藤一好・稲垣純・田熊久枝・梅靖三・谷口隆良・田中由美子・江川紹子・小澤一彦・横田力・ゆりはじめ・山崎元・間部俊明・三上正良・佐藤和利・田中孝典・山崎泉・杉山隆保・榎本信行

19887月に起こった「なだしお事件」の問題点を先駆的に追及した緊急出版。刊行18年を経て、軍事優先の海が今なお続くことを悲しむ。定価+送料 1200 円。残部僅少、購入申込は nora@cityfujisawa.ne.jp へ。

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ミサイル防衛計画を中止せよ!

太平洋を平和の海に!

イージス艦の漁船衝突事件に際しての声明

2008225

平和に生きる権利の確立をめざす懇談会

219日朝に千葉県野島崎沖で起こった、イージス護衛艦「あたご」の衝突による漁船「清徳丸」沈没事件は、軍事優先の海がなお続く実態を明らかにしました。1988年の「なだしお事件」、2001年の「えひめ丸事件」の際に、情報を隠蔽・改竄し責任逃れをする自衛隊・米軍に対して、海で働く皆さん、海の平和を求める市民とともに真相解明・被害者救援の運動の一端を担った私たちは、このような事故の再現に、強い怒りをおぼえます。

清徳丸はわずか73トン、家族経営の零細な漁船です。父親の吉清治夫さんとともにいまだ行方不明の吉清哲大さんは、23歳の若者でした。20万漁民の半数以上が60歳を超え、林業・農業に続いて漁業崩壊の危機が叫ばれるなかで、わずかに残る希望の灯のひとつを、海上自衛隊が消したのです。

防衛省・自衛隊の情報隠しにより、いまだ事件の真相は明らかではありません。しかし明らかなことは、「あたご」が前方に漁船団がいることを承知のうえで、自動操縦態勢のまま、海上衝突予防法を無視して、回避行動をとらずに突っ込んできたことです。さらに、事故通報の遅れにより救援活動の開始も遅れました。これは単なる事故ではなく、暴走艦によって引き起こされた重大事件と言わねばなりません。

奇妙なことは、艦の運航責任者である艦長の舩渡健1等海佐の肉声がまったく聞こえてこず、また航泊日誌の存在が不明なことです。横浜地検と第3管区海上保安部による調査の進行を待つほかはありませんが、被害者救援、事件の真相究明、事故責任の明確化、再発防止策の強化が望まれます。

そして「あたご」は、最新鋭・世界最大のイージス艦です。イージス・システムは、軍事衛星や僚艦からの情報も総合して、20の目標に同時に対応できると言われますが、米国製で全容は日本に開示されていません。「あたご」がハワイでの訓練からの帰路であったのも、システムの改良や点検、僚艦とのデータリンクの確認が、国内では不可能だったからでしょう。このイージス・システムと、開発中で近く配備されるSM-3ミサイルで、海上自衛隊のミサイル防衛システムが完備されます。こうして米国の核先制攻撃態勢に組み込まれ舞鶴に配備された「あたご」は、朝鮮半島を睨むのです。

このような軍艦が、はたして日本に必要なのでしょうか。このような艦の運用は、平和憲法をもつ日本にふさわしくないのではないでしょうか。日米同盟のもと、米国本土防衛に資することの驕りが、民間船を蹴散らして進むことにつながっているとしたら、恐ろしいことです。

そもそも海上交通稠密な東京湾口に軍港・横須賀があるのは誤りであることは、「なだしお」事件当時から言われていました。また房総から三宅・八丈付近の漁場へ向かう付近の野島崎南方に、広大な海上自衛隊の射撃訓練場「C区域」があり、今回の事件当日の予定も含めて頻繁に訓練を行っていることも、民間船にとっては脅威です。海の軍事優先使用をやめさせなければなりません。

東太平洋には、国家非武装の憲法をもつ国、コスタリカがあります。ラテンアメリカにはトラテロルコ条約、南太平洋にはラロトンガ条約、東南アジアにはバンコク条約があり、いずれも非核兵器地帯であることを定める条約です。東アジアに位置する日本が、米国とともに軍拡・軍備革新に邁進するのは、世界の動きに逆行するのではないでしょうか。

私たちはイージス艦の漁船衝突事件に際して、何よりも被害者救援と真相究明の徹底を求めるとともに、ミサイル防衛計画の中止を求め、太平洋を平和の海にするために、力をつくします。

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戦時に向かう言論統制と日本国憲法の精神⑧

20071215日 田島泰彦

抵抗の支えとしての日本国憲法

いずれにしてもいまの状況を見ると、ますます言論統制という面でも、戦時へと一歩一歩向かっている状況ですし、さらには戦時自体に足を踏み込む事態もあるというのは、残念ながら事実と言わざるを得ません。ただ、我々がこういう現実を仕方がないと黙っていなければいけないかというと、これは戦前とちょっと違うところがあるだろうと私は思います。

すなわち我々の憲法はいま改正のターゲットになっていますけれども、いまのところ憲法が変えられるという状況はないわけです。日本国憲法、とくにその中でも9条に書かれている平和条項、徹底的な非武装・非軍事の平和条項と、さらにいっさいの制限を受けない表現の自由の規定ですね、こういうものを我々が持っている限り、やはり非常に有力な抵抗の武器になるのではないか。

戦前の厳しい状況を考えると、明治憲法はそういう役割を果たすのはやはり難しかったわけです。それと比べると、先人たちの努力によって我々が作り上げてきた成果でもあるわけですけれども、我々は闘いに挑む武器というか手段を持ち得ているということですね。これはやはり我々がきちんと再確認すべきことです。日本国憲法があることによって多くの人たちに、いろいろ訴えることが可能なわけですね。とりわけ表現の自由という武器をもって、まあ表現に対する言論の規制は強まっていますけれども、全部なくなっているわけではもちろんないわけですから、そういうものも使って人々に働きかける、いまの事態が何であり、どうしなくてはいけないのかを言うことはもちろんできるわけです。そういうことを支えにして、いま向かっている方向に異議申立をして諍っていくということが、我々のすべきことかなと考えています。

状況は厳しいのは確かですけれども、そういうところを希望に持ってやっていくしかないかなというのが、いま思っていることです。

[付記]

軍事をも含む言論・メディア統制については、私の下記の文献を参照されたい。『この国に言論の自由はあるのか表現・メディア規制を問う』(岩波ブックレット・2004)、「統制される言論とジャーナリズムから遠ざかるメディア」法の科学38(2007)

なお、GSOMIAについては、福好昌治「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の比較分析」レファレンス200711月号も参照のこと。

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2008/02/25

戦時に向かう言論統制と日本国憲法の精神⑦

20071215日 田島泰彦

GSOMIAの成立と今後の動向

GSOMIAというのはあまり耳慣れない言葉かもしれませんけれども、こういう日米の軍事的な秘密保護協定が、今年の8月に成立しました。私は条文を早く知りたかったんですけれども、どこの官庁のウェブサイトのどこの部分に掲載されているかがなかなか分かりづらくて、少し時間がたってやっと分かりました。「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」というものです。

GSOMIAというのは、ある種の総称的な中身でして、General Security of Military Information Agreement というのが英語の表記です。日本語で言えば「軍事情報包括保護協定」です。

一部のメディアは多少報道しましたけれども、あまり大きな報道はされていないので、多くの人たちが認識しているというのとはかなり違う事態だと思います。ただしこれはかなり大事な問題で、今後の日本の秘密保護法制がどういう形で動いていくか、そのもっとも重要な根拠的な規定になっていく可能性があるわけです。

これはいったいどういうものか。アメリカは他の国とGSOMIAという一連の協定を二国間協定として結んできました。60数カ国がこういう協定を米軍と締結していると言われています。ただそのうちの20数カ国は協定の中身も秘密にしているので、克明に全部を調べることはできません。

何のために協定を結ぶかというと、基本的には米軍と他の国との間で相互に軍事秘密を提供した場合に、了承も得ないで勝手に第三国に提供したり等々ということがあるとまずいと、だから秘密保護を両国間でしっかり保護しましょうという話です。しかし向いている方向は、アメリカから他の国への情報提供が主要な側面ですね。アメリカに対して他の国が情報を提供することは少ない。相互の協定ですから、秘密保護のシステムは相互に守らなくてはいけないんですけれども。

しかもこのシステムが大事なのは、個別的な問題ではないということです。提供された軍事秘密についてはいっさいの保護の対象にするという協定です。あらゆる提供された軍事情報を包括的にカバーするということです。日米安全保障協議委員会でこの構想が議論されて、この810日に正式に日米間で合意されました。

その概要を言いますと、ひとつは先ほど言ったように、軍事情報を譲渡した国の了解なしに受領した国が第三国にその軍事情報を譲渡してはいけないということです。条文で言うと、第6条のaからfまでに書かれています。

2番目に非常に大事なことは、ではどういう形で提供された情報を保護するかという話です。譲渡した国と同程度の保護の措置をとらなければいけないというルールになっています。アメリカが日本に対して軍事情報を提供したとき、提供された日本の政府は、アメリカが自国で情報を保護しているシステムと同じような程度できちんと保護しなくてはいけない。アメリカには防諜法という法律がありますが、これはかなり厳しい法律で、刑でいうと10年くらいの刑ですね。しかも軍人だけではなくて、一般市民も軍事秘密を漏らした場合には対象になります。

ではここでいう秘密軍事情報とは何か。第1条、定義の規定のいちばん最後のところを見ていただきたいんですけれども、「秘密情報は口頭、映像、電子、磁気若しくは文書の形態又は装備若しくは技術の形態をとることができる」。なんでもみんな保護の対象だと書かれているわけですね。

さらに秘密区分についても、譲渡した国のレベルに合わせて受け入れた国のなかで扱わなければいけない。アメリカには秘密区分が3つあります。第4条のところに「同等の秘密としては次の通りとする」と書いてあります。top secret, secret, confidential というんですね、重要度に応じて。だからそれに相応して日本側も秘密指定をしなければならないと書いてある。

注意が必要なのは、この協定は今年8月に結ばれたということです。先ほど言った今年7月の「秘密保護と保全に関する訓令」では、日本の国内の省秘は秘だけになっている。そういう変動したときに日本のほうでどういう扱いをするのか、検討の余地はあると思います。

あと条文のなかで注意をしていただきたいのは、第7条の部分と、第16条の部分です。提供された軍事的な秘密情報に、誰がアクセスできるのかということについて、かなり詳細に書かれています。7条では公務員、16条のほうは契約企業、要するに民間企業で秘密の軍事情報にアクセスできる、そういう人についての規定です。両方とも共通して大事なことは、秘密軍事情報の取扱資格をきちんと明確に定めて、そういう資格がない人は、その人がどんな地位がってもアクセスできないということです。これをクリアランスと言っているようですけれども、要するに秘密の軍事情報へのアクセスをきちんとしたシステムにする、秘密軍事情報取扱資格を整備して、その人たちだけが情報に接することができるシステムを日本でも作るとことを要請しているということです。

それではいったいなぜ、こういう日米の軍事情報の秘密保護の新しい展開が見られるようになったか、その背景の問題です。

従来、政府は必要がないとは言っていないが、作るつもりはありませんと国会答弁で言っていたんですけれども、にわかに作ることになったんですね。その背景は何かというと、ひとつはやはり日本とアメリカの軍事協力の進展です。アメリカというよりもアメリカの軍事戦略に日米が深くコミットし、協力をしていくという、日米の軍事的な一体化の方向に向かって動いている。

従来、日米の関係の中心的なモチーフは何であったかというと、基地の提供がひとつ、もうひとつはお金の提供です。そういうスタイルは対等に向かうというよりも、上と下の関係ですね。しかしそれだけでは足りない、パートナーとして日本が軍事的な役割を強め、アメリカとの軍事的な関係をより一体化する、軍事作戦も含めてやっていくということになると、これはたんにお金の問題とか基地だけの問題ではなくなります。軍事作戦を一緒に推進し展開していくためには、軍事情報の提供が不可欠です。すると、提供された情報をみだりに漏らされては困る。みだりにというのは、他の国だけではなくて、国民とかメディアを含めてのことですが、そういうものからちゃんと守る必要がある。それがひとつです。

もうひとつの背景は、それとも密接にかかわりますけれども、ミサイル防衛システムの日米共同開発をはじめとする日米の防衛企業の関係の進展です。たんに政府だけが軍事情報を共有しようという話ではなくて、さまざまな企業による軍事技術、さまざまな形の装備の展開での協力を、どんどん強めているわけです。こういう日米防衛企業の協力関係を背景にして、お互いに必要な軍事情報を共有して守るというふうになる。

では結果として日本の今後の軍事秘密法制がどういう形で動いていくかというと、端的にいうと、現行の日本の国内法をもっと強化するというのがひとつです。もうひとつは、まだ作られていない立法措置について、新しい法律を作る必要がある。例えば国会議員に対して軍事情報保護について規制をストレートにできるようには、なっていないわけですね。いちばん新しいところで言うと、秘密保護新法というのを考えていく必要があるのではないかと言われています。これは何かというと、軍事転用可能な技術リストを作成して、公務員に対しても罰則を強化する、さらには軍事転用可能な技術リストを漏らした民間人を法律で規制する。要するに秘密保護新法を作る必要があるのではないかということです。

最終的にはアメリカの防諜法のような方向で、日本の新しい秘密保護法制を再編し、強化していくことは必至だろうと思います。

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2008/02/24

戦時に向かう言論統制と日本国憲法の精神⑥

20071215日 田島泰彦

軍事秘密の再編

そういうことも踏まえてさらに、日本の軍事秘密が再編成されていきます。

従来は自衛隊の秘密というのは、まず庁秘という類型のもと、先ほど見たような自衛隊法に定めるような秘密がありました。秘密の区分については「秘密保全に関する訓令」というのがあって、機密、極秘、秘という形で定められていたわけです。それともうひとつ防衛秘密というのがあって、MSA秘密保護法、すなわちアメリカから提供された装備品などについての秘密があります。さら3つ目は米軍の秘密、これは刑事特別法に定められている。この3種類の秘密があったわけですね。

それが9.11以降の状況も踏まえて、次のような形で再編されました。細かく4つに分かれたわけです。ひとつは省秘です。最新の訓令は今年(2007)7月に改正されたものですが、そのなかで省秘については、従来あった秘密区分、機密・極秘・秘とあったのを機密と極秘は廃止して、秘だけにするという扱いになりました。

では機密と極秘はどうなったかという話ですが、秘密性の高いものについては新たに防衛秘密、すなわち2001年に自衛隊法改正で作った防衛秘密のなかに統合されることになった。従来のMSA秘密保護法の防衛秘密は、現在は防衛秘密ではないわけです。現在の防衛秘密は2001年の自衛隊法改正、96条の2によって作られたということになります。MSA秘密保護法のもとで米軍によって提供された装備品等についての秘密は、新たに特別防衛秘密に変えられました。そして刑事特別法に定める米軍の秘密は、従来のままです。

こういう4つの秘密に再編・整理されました。

なお特別防衛秘密と米軍の秘密は、省秘や防衛秘密と異なっています。どこが異なっているかというと、探知・収集も犯罪の類型として対象とされているということです。探知・収集の行為ですから普通の市民も対象とされて、しかもかなり重罰が課されます。例えば秘密を漏らした場合、確か最高刑は10年ですね。

イージス艦の自衛官が逮捕される事件がありましたが、あれはどこに該当するかというと、MSA秘密保護法に基づく特別防衛秘密を漏らした、という類型になります。

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2008/02/23

戦時に向かう言論統制と日本国憲法の精神⑤

20071215日 田島泰彦

防衛秘密法制の成立

時間がオーバーしましたので手短に、軍事秘密保護の問題に入っていくことにします。

軍事秘密保護をめぐっては、とりわけ9.11以降、非常に大きな再編と強化がもたらされてきました。直接のきっかけは防衛秘密法制の成立、自衛隊法改正の問題です。

従来自衛隊の秘密を保護するシステムが現にあったわけですが、これは一般の国家公務員が職務上知りえた秘密を漏らしてはならないというのと同じで、自衛隊法のなかに自衛隊員の守秘義務の規定があった。この秘密というのは服務規程としての秘密であって、それをさらに超えて防衛秘密という形で秘密の保護と強化をはかるというのが、2001年の自衛隊法改正の動きに連なります。

分かりやすく言うと、かつて議論した国家秘密法、そのある種のミニチュア版を作るということです。国家秘密法を成立させるのは非常に難しかったわけですが、格好の9.11という出来事が起こって、ほとんど議論しないままに自衛隊法改正によって新たな国家秘密法の枠組みの一部が、全部ではないんですけれども、できてしまった。

具体的に言うと、防衛庁の長官、現在は防衛省の大臣ですけれども、それが一連の防衛秘密を指定する権限を与えられる。自衛隊法96条の2です。「長官は、自衛隊についての別表第4に掲げる事項であって、公になっていないもののうち、我が国の防衛上特に秘匿することが必要であるもの……を防衛秘密として指定するものとする。」

別表の第4というのが防衛秘密に指定される情報の項目と内容です。1から10まであります。自衛隊や防衛に関する情報は、ほとんど全部、基本的にはカバーされているということになります。

これが単なる服務規程ではないのは、自衛隊員だけがこの防衛秘密を守らなければいけない、漏洩してはいけないということだけではないんです。防衛秘密にかかわりのある人たち、一般の国家公務員も規制の対象なんですね。さらには公務員だけではなくて、防衛庁と取引をしている民間部門の防衛産業に従事している人たちも規制の対象にされる。しかも処罰もいろいろな形で拡大されて、未遂罪も対象になる。過失犯も対象になる。さらには国外犯も対象にする。さらには防衛秘密を漏洩する行為に対して、共謀した人も処罰の対象になる。処罰はさらに重罰化して、従来の自衛隊についての秘密では懲役1年以下だったのが、最高は5年になりました。

これによって自衛隊の情報が出にくくなるということだけではなくて、自衛隊に対して市民やメディアがはたらきかけるような行為、取材行為や調査活動についても法律の網が広くかけられることになるわけです。

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2008/02/22

戦時に向かう言論統制と日本国憲法の精神④

20071215日 田島泰彦

憲法改正と言論統制

3つ目は憲法改正の問題です。表現の自由の問題は、憲法改正の非常に重要なアイテムになってきました。9条だけが憲法改正問題のターゲットではなくて、21条の表現の自由を改変するというのも、非常に大事なテーマになってきた。

ストレートに21条に制限をつけようというのは、なかなか難しいですね。戦前の明治憲法のように言論の自由を法律の範囲内にとどめるというのは、そう簡単にはできない。けれど他の手段を使うと、いろいろな形で制約ができることがあります。いちばん有力なのはプライバシーの権利を使うことです。プライバシーの権利は今のところ日本国憲法に書いてないので、それを明示的に導入する、これがいちばん有力なやり方だと思います。

これについては、どこの政党も賛成しています。共産党と社民党は別で、憲法改正自体に反対ですが、民主党も公明党も自民党も、みんな賛成しているわけです。国民世論も、かなりの率でプライバシー権導入に賛成です。しかしここで言うプライバシーというのは、権力を縛るためのプライバシーではまったくない。住基ネットなんていうとんでもない制度を政府が作ってけしからんから、憲法にプライバシーの権利をちゃんと入れて、政府による国民のプライバシー侵害をやめさせようということならまだ話は分かるけれども、そんな議論は全然していません。

すなわち言論の自由とか表現の自由、あるいはメディアに対する有力な規制、それを縛るものとしてプライバシー権を作ろうという話になるわけですね。言論統制のためにプライバシーを憲法改正という手段でやってくる。いちばん国民には、憲法改正に抵抗がない問題なんです。新しい人権はいいとか、プライバシーはいいことだとか、そういうことで国民にも受け入れられる。

9条からいきなり憲法改正するというのは、安倍さんがコケたということもかかわりますけれども、おそらくやらないと思うんです。まずいちばんやりやすいところで改正の実績を作る、そういうやり方になってくる。

もうひとつ注意しなければならないのは、9条改変がもたらすこと、すなわち平和主義が変えられるということがもたらす表現の自由にとっての意味です。例えば自衛隊を正規の軍にしていくというようなことを、自民党の新憲法草案も、あるいは読売新聞社の提案もしている。9条改変がなされるということは、言論の自由の問題と非常に深くかかわるわけです。はっきり言って憲法に正式に軍隊が正面から掲げられるということは、言論統制の重大な理由、後ろ盾が公然とできるということです。戦前もそうですし、他の国もだいたいそうなんですね。言論の自由は大事かもしれないけれども、国の安全とか戦争ということになったら、それは制限されても仕方がないという、いちばん究極の根拠になるわけです。

その意味で、軍事秘密をもっと強化しようとか、自民党の新憲法草案では軍法会議まで作ると言っているわけですから、そうなればもういろいろな理由をつけて言論の規制・統制を大手を振ってできる。いま自衛隊はまだ曖昧な状態ですから、なかなか軍事を根拠にというのは、ある時点までしかできないところもあるんですね。憲法を改正すれば、一気にそれを突破できるということだと思います。

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2008/02/21

戦時に向かう言論統制と日本国憲法の精神③

20071215日 田島泰彦

有事法制とメディアの指定公共機関化

2番目は有事法制をめぐる問題です。有事法制全体が、戦時のための法制度をいかに作るかという話だったわけですが、そのなかにメディアも公然と組み入れられることになっていったわけですね。