戦時に向かう言論統制と日本国憲法の精神④
2007年12月15日 田島泰彦
憲法改正と言論統制
3つ目は憲法改正の問題です。表現の自由の問題は、憲法改正の非常に重要なアイテムになってきました。9条だけが憲法改正問題のターゲットではなくて、21条の表現の自由を改変するというのも、非常に大事なテーマになってきた。
ストレートに21条に制限をつけようというのは、なかなか難しいですね。戦前の明治憲法のように言論の自由を法律の範囲内にとどめるというのは、そう簡単にはできない。けれど他の手段を使うと、いろいろな形で制約ができることがあります。いちばん有力なのはプライバシーの権利を使うことです。プライバシーの権利は今のところ日本国憲法に書いてないので、それを明示的に導入する、これがいちばん有力なやり方だと思います。
これについては、どこの政党も賛成しています。共産党と社民党は別で、憲法改正自体に反対ですが、民主党も公明党も自民党も、みんな賛成しているわけです。国民世論も、かなりの率でプライバシー権導入に賛成です。しかしここで言うプライバシーというのは、権力を縛るためのプライバシーではまったくない。住基ネットなんていうとんでもない制度を政府が作ってけしからんから、憲法にプライバシーの権利をちゃんと入れて、政府による国民のプライバシー侵害をやめさせようということならまだ話は分かるけれども、そんな議論は全然していません。
すなわち言論の自由とか表現の自由、あるいはメディアに対する有力な規制、それを縛るものとしてプライバシー権を作ろうという話になるわけですね。言論統制のためにプライバシーを憲法改正という手段でやってくる。いちばん国民には、憲法改正に抵抗がない問題なんです。新しい人権はいいとか、プライバシーはいいことだとか、そういうことで国民にも受け入れられる。
9条からいきなり憲法改正するというのは、安倍さんがコケたということもかかわりますけれども、おそらくやらないと思うんです。まずいちばんやりやすいところで改正の実績を作る、そういうやり方になってくる。
もうひとつ注意しなければならないのは、9条改変がもたらすこと、すなわち平和主義が変えられるということがもたらす表現の自由にとっての意味です。例えば自衛隊を正規の軍にしていくというようなことを、自民党の新憲法草案も、あるいは読売新聞社の提案もしている。9条改変がなされるということは、言論の自由の問題と非常に深くかかわるわけです。はっきり言って憲法に正式に軍隊が正面から掲げられるということは、言論統制の重大な理由、後ろ盾が公然とできるということです。戦前もそうですし、他の国もだいたいそうなんですね。言論の自由は大事かもしれないけれども、国の安全とか戦争ということになったら、それは制限されても仕方がないという、いちばん究極の根拠になるわけです。
その意味で、軍事秘密をもっと強化しようとか、自民党の新憲法草案では軍法会議まで作ると言っているわけですから、そうなればもういろいろな理由をつけて言論の規制・統制を大手を振ってできる。いま自衛隊はまだ曖昧な状態ですから、なかなか軍事を根拠にというのは、ある時点までしかできないところもあるんですね。憲法を改正すれば、一気にそれを突破できるということだと思います。
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