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「平権懇」☆関係書籍☆残部僅少☆

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  • ●(昭和出版・1989刊): 『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』
  • ●西沢優(港の人・2005刊・5000円+税): 『派兵国家への道』
  • ●大内要三(窓社・2006刊・2000円+税): 『一日五厘の学校再建物語 御宿小学校の誇り』
  • ●松尾高志(日本評論社・2008刊・2700円+税): 『同盟変革 日米軍事体制の近未来』
  • ●西沢優・松尾高志・大内要三(日本評論社・2003刊・1900円+税): 『軍の論理と有事法制』

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2008/02/20

戦時に向かう言論統制と日本国憲法の精神②

20071215日 田島泰彦

イラク派兵と取材・報道ルール

自衛隊がイラクに派兵された際に、メディアの取材や報道について厳格な規制、ルールというのが作られて、それに非常に大きな影響を受けてイラクの報道・取材がされるようになりました。2004年です。これは皆さんおそらくご存じのことと思うんですが、ただ当時の報道からいうと、そんなにメディアは大きな扱いをしなかったんですね。ルールができたときに、メディアによっては大きな扱いをしたところもありますけれども、それを系統的に大きくかつ何度も伝えていくというやり方は取っていない。

2004年の311日ですが、日本新聞協会と日本民間放送連盟、要するに新聞と民放を束ねる業界団体ですけれども、ここが窓口になって、防衛庁と協議をして、一連の自衛隊取材に関するルールというのを決めました。それまでずっと協議していたわけですね。

具体的には4つルールを作りました。「イラク人道復興支援活動現地における取材に関する申し合わせ」というのがひとつです。2つ目が「『イラク人道復興支援活動の現地における取材に関する申し合わせ』に基づく日本新聞協会、日本民間放送連盟と、防衛庁との確認事項」です。3つ目が、これも長いですが、「イラク人道復興支援活動に係る現地取材について」という、これは防衛機関あて防衛庁長官官房広報課長の名前で出したルールに係わる資料です。それから4つ目が、「イラク及びクウェートに所在する自衛隊部隊に係る立入制限区域への立入取材申請書」という、防衛庁長官官房広報課長あてで出した文書です。

相当な分量もあるものなので、今回すべてこと細かに述べることはできませんけれども、要するに何なのかといえば、ある種の戦時的な情報統制のためのルールということです。戦時の典型的な情報統制ルールは検閲です。軍にとって都合が悪い情報は報道させない。そういう検閲のルールも、しっかり含まれています。

しかも非常に大事なことは、防衛庁なり自衛隊なりが強権を発動して、情報のコントロールを押しつけるということだけではないんですね。防衛庁がそのことを望んでいたわけですけれども、それをメディアが受け容れたということです。だから合意したルールになるわけです。

検閲に関する部分について、先ほど挙げた2つ目の資料の「情報の取り扱いに関する事項」の部分を見ますと、非常に明確なルールが書かれています。

「……現地部隊」、これはサマワに行った自衛隊を指していますが、「の生命及び安全の確保並びに現地部隊の円滑な任務遂行に関係する情報については、……報道によって安全確保等に悪影響を与えるおそれがあり得ないことを十分に確信した上で報道します。」

これはまだ序の口であって、その後。

「なお、下表右欄に例示する安全確保等に悪影響を与えるおそれのある情報については、防衛庁又は現地部隊による公表又は同意を得てから報道します。」念を入れて( )の中に、「それまでの間は発信及び報道は行われません」。

すなわち、自衛隊にとって「悪影響を与えるおそれのある情報」について事が生じた場合は、防衛庁がOKを与えないと報道してはならないと言っているわけです。要するにこれは軍の検閲です。

その「悪影響を与えるおそれのある情報」として表に書いてあるのが10項目、厖大な対象です。例えば8番目を見ると、自衛隊の「隊員、家族等の個人情報」が書かれています。9番目を見ると、「地元住民・部族等との信頼関係を損ねるおそれのある情報」、その例としては「地元の宗教・社会・文化の観点から特に反感を持たれるおそれのある隊員の日常の行動」。さらに10番目には「その他、防衛庁広報課又は現地部隊が別途具体化する事項に関する情報」、その例として「部隊及び隊員に係る練度、士気その他の無形の要素であって、実際に発揮し得る能力の低下又は要求水準以下での停滞を惹起しているもの」まで含まれているわけですね。

この表をトータルに眺めてみると、かなり包括的です。例えば向こうの人が自衛隊員を殺傷したというようなケースは、幸いに実際にはなかったようですが、「悪影響を与えるおそれのある情報」のカテゴリーに当然入ってくるわけですね。このルールにのっとると、報道がされない可能性が非常に強かったわけです。自衛隊員がテロリストでも何でもない普通の市民を間違って撃った場合でも、これもおそらく「悪影響を与えるおそれのある情報」のカテゴリーに入ってきますから、簡単には報道されることにはならない。そういうあからさまな防衛庁や自衛隊による情報のコントロールがこのルールのなかに謳われていて、しかもメディアがそれを是認したわけです。

ストレートに戦時的な状況であっても、報道や言論に検閲を行うというのは非常に問題になる事柄です。戦時には仕方がないという考え方は一方ではあるかもしれませんけれども、実はそういう状況になったときこそ軍が何をするか分からないわけですね。情報を意図的に出したり、あるいは情報操作するためにコントロールしたりということが、いちばんやりやすい状況になる。

自衛隊のイラク派兵は、有事法制の下、有事が発動されている状況ではないわけです、形式的には。政府は非戦闘地域に人道復興支援で行っている、まったく戦争とは違うと言ってるわけですね。しかし実際にはきわめて戦時的な検閲、戦時情報統制がもう、きわめて乱暴になされた。

さらに4月になってイラクで日本人の拘束事件が起こりました。防衛庁はサマワに行っている日本のメディアに対して避難勧告をして、C130輸送機を差し向けた。大半のメディアの記者はそれに乗り込み、それに乗り込むはのはまずいと思った若干のメディアは、タクシーを雇って陸路を行ったのですが、基本的には日本のメディアは415日の時点でみんなサマワからいなくなったんです。つまり陸上自衛隊が行ってから帰るまでの大部分の期間は、現地で取材・報道する日本のメディアがいないなかで、あの歴史的なイラクへの自衛隊派遣というのがやられたということです。

サマワからメディアが撤退してしまったために、いろいろな問題が起こりました。基地のなかに砲弾が飛んできたことも何回かありました。しかし実際にそれがどうなっているかということは、防衛庁・自衛隊の情報しか公にされないんですね。第三者の目でメディアがチェックするという機会がそもそもない。これではかつての我々の国の状況と、隔たりがないわけです。すなわち、かつての戦時中に大本営発表を右から左にただ受けてメディアが流す、具合が悪いことは当局に隠されている、それとまったく同じだということですね。

もう何十年も前に、大本営発表はインチキで真実のカケラもないと、日本の国民は肌で感じたし、あんなことは絶対にしてはいけないというふうに思ったはずですね。ところが何十年かたって、それとほぼ同じようなことをやっているわけです。やはり戦時ではないのに戦時的状況がみごとに生まれている、ひとつの典型的な側面というふうに私は思います。

有事でも戦時でもないのに、有事的状況、戦時的状況が言論の取材・報道というレベルで生じてしまったら、いったい本当の有事や戦時になったらどこまで行くのかという話ですね。ですから、このイラク派兵についての報道ルールをきちんとメディアも検証して、なぜこんな状況になったのか本気で反省をしないと、ズルズルまた行くのではないかと思います。

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