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2008/03/29

読む・読もう・読めば 28

責任の所在

322日の朝、千葉県野島崎から太平洋を見た。沖合をひっきりなしに大型・中型船が行き交い、その手前をたくさんの小型漁船が行き来する。このような状況のなかへイージス艦「あたご」は、仮眠中の艦長のもと自動操縦のまま、一直線に突っ込んできたのだ。東京に戻り、21日に防衛省が「艦船事故調査委員会による調査について」という報告書を発表していたのを知った。36日以来、約70名の「あたご」乗組員に対する聴取をした結果をまとめたものだが、「海上保安庁との調整により」当直員の一部について聴取が実施できていないという。

一読して驚くのは、問題の「あたご」に海上交通が輻輳する海域を航行している自覚がまったくなく、当直が弛緩しきっていることだ。「通り雨があり、見張員の配置を艦橋内に」とあるが、雨が降ったら視界が悪くなるのに、濡れるのが嫌で室内に入ってしまったということだ。衝突時の前の当直は7名が勤務すべきところ4名しかいなかった。漁船団を見つけた当直員は「この目標は目視ではっきり視認できたため、当直士官は当然了解しているものと考え報告していない」。「当直士官の『この漁船近いなあ』という発言と当直員Eが『近い、近い』といいながら、右舷ウィングに出て行こうとしているのを確認し、さらに窓に近づき、身を乗り出したところ、右70100メートル付近に近接する紅灯を掲げた『清徳丸』と思われる目標を視認した」。それから「両舷停止」と「後進一杯」をかけても、間に合うはずがない。救助のため降ろされた内火艇に潜水員は乗っていたが、夜間であるため「練度が及ばない」ので潜水作業を実施しなかった。

報告書は「あたご」の「対応の評価」について、それなりに厳しく評価してはいる。「艦全体として周囲の状況について見張りが適切に行われていなかった」。「『あたご』に避航の義務があったが、『あたご』は適切な避航措置をとっていない。また、衝突直前に『あたご』がとった措置は、回避措置として十分なものでなかった」。ただしこのような評価は、「現時点までの聴取結果によれば」とか、「可能性が高い」などの修飾語で限りなく責任の所在が希釈されている。

226日の衆議院安全保障委員会での石破防衛相答弁によれば、この報告書を作成した事故調査委員会には、事故当時「あたご」に乗艦していた護衛艦隊幕僚長もメンバーに入っている。自分で自分をチェックしているわけだ。これでは公正な調査はできないだろう。これから行われる海難審判の審理を注目したい。

(大内要三 2008328日)

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