読む・読もう・読めば 37
オリンピックと核
1964年10月16日、中国政府は初の原爆実験成功を発表し、開催中の東京オリンピックに冷や水を浴びせた。実験場は新彊ウイグル自治区のロプノールと発表された。シルクロードの要所、楼蘭に近い。核兵器の開発が行われたのは青海省海北チベット自治州の「221工場」だった。工場は95年に機能を停止し、99年に公開され、今では「青海原子城」の石碑が観光コースに入っているという。青海からロプノールまで直線距離でも1000キロ近いが、原爆はどのようにして運ばれたのだろう。鉄道だろうか。
本年6月には青海省が青海湖の世界自然遺産登録をめざす、と発表した。中国の核開発はソ連の指導で始まったから、初期の核廃棄物はソ連方式にならって湖に捨てるか浅い地面に埋めるだけだったはずだ。残留放射能はないのか、気にかかる。北京オリンピックに向けての聖火リレーも、6月23日には青海湖畔で行われているが。
中国の核兵器開発と核兵器配備は、主に漢族の地ではなくチベット族とウイグル族の地で行われてきた。米国の核実験が「インディアン居留地」や太平洋の環礁で行われてきたのと同じことだ。汚染された地域で暮らす多数の住民が被害を受けてきたと考えるのが当然だろう。しかし自由な取材のできない中国の情報は限られている。チベット国際キャンペーンがまとめた『チベットの核』(邦訳は2000年刊、日中出版)の内容は戦慄的だが、「本書の情報のほとんどは米国で機密扱いから解除された資料に基づいている」と堂々と書かれると、なにしろイラクの「大量破壊兵器」で公然とウソをついた米国のことだから、と引いてしまう。
この8月7日、中国から英国に亡命したウイグル人医師、アニワル・トフティ氏がウイグルの核汚染について東京で講演した。内容は主催者の日本政策研究センターの機関誌に載るはずだ。新聞では産経だけが10日にインタビュー記事を掲載した。「(新彊ウイグル自治区の)区都ウルムチの病院の腫瘍専門外科勤務だった私は、病床に占めるウイグル人の割合が極めて大きいことに気付いた。調査すると、ウイグル人の悪性腫瘍発生率は、中国の他の地域の漢人と比べ、35%も高かった。漢人でも、新彊ウイグル自治区に30年以上住んでいる人は、発生率がウイグル人と同程度に高かった。」トフティ氏は同時に中国でのオリンピック開催にも抗議している。
核にまつわる情報がみな明らかになる時が来るとすれば、それは核廃絶への展望が明らかに見えてきた時のことだろう。嘆息しながら、オリンピック漬けの新聞を開く。
(2008年8月14日)
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