読む・読もう・読めば 38
おお、ジョージア
黒海とカスピ海にはさまれた旧ソ連邦のグルジアの国名は、守護聖人ゲオルギウスに由来する。ドラゴン退治のゲオルギウス伝説の本場はここだ、ということだろう。ロシア語ならグルジア、英語だとジョージアで米国ジョージア州と同じ綴りになってしまう。ロシア側から見れば、モスクワの市章は聖ゲオルギウスがドラゴン退治をしている図だし、あのスターリンはグルジア出身という「親しさ」がある。米国側から見れば、ジョージア州の名は英国王ジョージ2世にちなむから、とりあえず聖人伝説とは関係がない。現グルジア大統領サアカシュビリが米コロンビア大学大学院出身、米国の法律事務所に勤務した経験を持つという「親しさ」か。そんなグルジアで米ロの対立がいま取り沙汰されている。
新聞報道では、グルジア内のアブハジア自治共和国と南オセチア自治州の独立を認めたロシアと、同地のグルジア帰属を死守したい米国との、民族独立運動をめぐる争いのように見える。しかしこの地は紀元前から、ビザンツ帝国、ササン朝ペルシア、イスラム帝国、オスマン朝、ロシア帝国と、さまざまな勢力の興亡の影響を受けたところであって、1民族1言語1宗教1国家でまとまることなどあり得ない。
インターネットで流れている投資家向けの情報では、もっぱら石油と天然ガスのことが語られている。グルジアにはカスピ海原油・天然ガスをヨーロッパに向けて運び出す複数のパイプラインが敷設されているのだ。2006年には米国の援助で南ルート、つまりロシアを全く経由しないルートも稼働し始めた。同じ年、ロシアは南オセチアに天然ガスのパイプラインを敷設し始めた。これらのラインが今回の軍事衝突で停止したことが、投資家たちの当面の関心事なのだ。
なるほど、それでロシアも米国もグルジアに関与したいのか。原油・天然ガスの消費者であるEUの関与で停戦が成立した後もロシア軍は居座っており、米国は平和維持軍を「多国籍化」して軍事介入することに失敗したが、イージス艦「マクフォール」をグルジアのバトゥーミに入港させた。ブッシュ政権末期に至っても緊張は続く。大国の思惑のとばっちりを受けるのは、いつも中小国の市民だ。 (2008年8月28日)
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