自衛隊の変貌を見る⑤
○平和的生存権はふところが深く広い
第3点は、平和的生存権に関する非常にふところの深い判決の説示であります。ふところの深いと申しますのは、「等」という言葉が非常にたくさんあるんですね。例えば「戦争の準備行為等」ということになりますと、準備行為の準備行為も入って来るのかなあと思いますし、これはもう今後の、平和運動を現実にやっておられて、その中で憲法を使おうと考えておられる方々、なにか根拠はないかと思っている方々、ずいぶん使えるんじゃないかと。これとこれを使ったらどうかというのがいっぱい出てくるような感じが、じつはしているわけです。
これを用いて、いまの日米同盟の変革・再編についての違憲性をついていったらどうなのかと。日米同盟の変革・再編というものがいまの自衛隊の変貌の根源であります。これは亡くなられた松尾高志さんが御著「同盟変革」のなかで解明されたことでした。アメリカ軍は9.11以後の対テロ戦争、テロリスト・ネットワークを軍事力を含めて打破するという、世界史上いまだかつてない横暴かつ傲慢というべきか、残酷なる戦争をいまやっている。しかも世界規模でやろうとしている。イラクの次はアフガニスタンだ、イランだと。
これをなんら批判することなく日本政府は、05年2月29日の「共通の戦略目標」でアメリカと共にテロリストを敵とする戦略に合意した。05年10月29日にはアメリカと日本の軍隊の役割・任務・能力を分担を決めて、それから米軍基地の再編の具体像を決める。06年6月1日にはそのロードマップで、2014年を期限とする。07年5月1日には実施状況をチェックする。こういう4つの日米同盟の文書は、わが国の主権国家としての誇りにかけて、しかも憲法の条項と精神にかけて、憲法違反の廃棄宣言をするに値する文書だと思います。まず、主権在民の日本国憲法に反する。正式案件で議題にしていないから、国会の最高機関という議会制民主主義に反する。もちろん憲法9条の平和主義に反する。それから日本国民の基本的人権を侵す。地方自治を侵す。という5点において、究明すべき問題だと思っております。
米軍基地の兵力の再編・強化の問題と同時に、後でお話しする米軍・自衛隊の一体化、外征軍への変質という2つの問題がこの日米同盟から出てくる。これを憲法違反の問題に結びつけて、いま全国に巻き起こっている7000を超える「9条の会」の力、運動と、沖縄・座間・相模原・岩国・横須賀等々で盛り上がっている基地反対闘争というものと結びつける設定は、この名古屋高裁の判決の憲法の論理なのではなかろうかと。こういうふうに思っております。
4点目の活用は具体的な、身近な問題です。つまり原子力空母の母港化による国民の生命への危険、それから乗組員5000人が常時基地周辺にたむろすることによる犯罪の問題、これと平和的生存権との関係はどうなのか。平和的生存権はもとより、横田・厚木の爆音訴訟の問題です。最近、自衛隊の武装した部隊が銃をもって市街地に出てきました。迷彩服で銃を持って、場合によっては装甲車を従えて市街地を行軍する訓練をしています。自衛隊の適令者である子どもたちに対する調査・協力を学校ないし役場に求めるとか、もっと露骨に、適令者の子どもさんまたは親御さんにダイレクトメールで応募するように求めていく。最近は自衛隊の兵器展示等の機会にこれを子どもにさわらせる。制服を試着させる自衛館というのが渋谷に開館しました。それから情報保全隊の活動があります。こういうものはまさに、戦争準備のための活動です。これに対抗するために平和的生存権を活用していくことができるのではないか。
最後の第5点は、そういう基地の再編、訓練の強化、自衛隊の露骨な行動というものが頻発するに従いまして、アメリカ追随の中央政府でなく、地方自治体が住民の盾になっていただきたい、という要望が非常に強くなっている。この際、地方自治体の首長さん、あるいは議員さん、あるいは職員さんにこの判決をお読みいただいてですね、地方住民の平和的生存権を守るという観点がまさに地方自治体の果たすべき責務であると。したがってより確信を持って、ただ住民の生活・福祉を守るというに留まらず、平和的生存権を守ることは高裁判決でも定められた我等の責務であるという自覚をもって対抗していただくことを期待するのであります。もちろん単に期待するのみではいけないので、住民の側が積極的に判決を地方自治体の方にご説明し、ことあるごとにお話しをして、ご協力をいただくということが必要ではないかと思います。
最後に申しますが、この判決の中身を矮小化してですね、ここまでしか認めていない、ここまでしか言っていないと、あまり位置づけを早くしないで、無限にゴム風船のようにふくらんでいく可能性がある、柔軟なものであるということから、これを研究し、これを使っていく必要があるだろうと思っております。
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