自衛隊の変貌を見る⑦
○集団的自衛権と集団的安全保障
もうひとつ重要な文書は、明らかに名古屋高裁判決を意識して出されたと思いますが、6月24日に出されました、いわゆる安保法制審の報告書、これもいまの自衛隊の変質問題を法制面から見るうえで注目していきたいと思っております。
これは柳井もと駐米大使を長とする安倍前総理の任命した委員会の報告書であります。現在の憲法解釈を変更することを提言する、というのが結論です。集団的自衛権の解釈変更という側面だけが強調されて報道されていますが、正確に読みますと2つの面があるんです。集団的自衛権の解釈を変更することと、それからもうひとつ、国連の集団的安全保障のために活動している自衛隊には、憲法9条1項は適用されないという、大胆な解釈を打ち出しているということです。
安倍前総理がこの柳井懇談会に諮問した具体的ケースは4つあります。第1は、日本の軍艦とアメリカの軍艦が公海におきまして共同作戦行動をとっているときに、アメリカの軍艦が攻撃を受けた場合に、それを日本の軍艦が守れるようにしてやると。これは集団的自衛権の行使の問題ですね。今まで日本人の頭にあったのは、例えば給油のためパイプでつないでいるときに、相手のアメリカの軍艦に攻撃があったときですが、そうではない。海上作戦というのは、日米の艦艇が数百キロ離れて共同作戦をやる場合があるんですね。太平洋を渡って来る艦隊が、それぐらいの大きさの陣形をとることがある。そういう場合を含めて敵を撃てるようにするということです。
第2は、アメリカに向かっていると判断された弾道ミサイルを見過ごさないで、日本列島からミサイルを撃つ。これも集団的自衛権です。アジアの某国が弾道ミサイルを撃つ場合に、それはまずアメリカを意図して撃つということを前提にいまのミサイル防衛システムというものは組み立てられている。ですからこれは集団的自衛権の解釈の問題です。
3番目はいわゆる「かけつけ警護」と申されております。外地において多国籍軍の活動に従事中の自衛隊の隊員が、別のところで攻撃されている、同盟国軍の部隊を助けるためにかけつける。これは集団的自衛権という視野ではない。集団的安全保障で国連の決議に基づいて活動している部隊には、そもそも9条1項の武力行使の制限は適用されない、ということを言っているわけですね。
4点目は、補給・輸送です。これまで武器・弾薬を除くという解釈をやってきた。それから前線へは補給を行い得ないと言ってきたけれども、それでは集団的安全保障の仲間入りができない。今後はその場合にも、集団的安全保障で参加している部隊には国際基準と同様にやるという、大胆な解釈変更です。
しかし、さすがに内閣法制局は、50年来やってきた解釈を変更することはできないと思います。私は2期12年、参議院議員を勤めまして、内閣法制局というのは意外と頑固な役所だと、敵にすると本当に憎たらしいが、味方にするとけっこう頼りになるものだという、複雑な感じを持ったのであります。法制局ぐらい頑固な、旧態墨守のお役所はないと思うんですね。その役所がいま私が説明したような提言を簡単に呑むわけがない。福田総理はしたがって提言直後の談話で、我々内閣はこういう解釈変更をやるつもりはないと言っておりました。しかしこの内閣がいつまで続くか分かりません、新しい内閣ではどうなるか分からない。そういうことを見越して出した報告だとも思います。
この報告が出た6月24日の2日後の26日に、北朝鮮の外交当局がですね、6か国協議の議長国である中国政府に対して、核処理の状況の申告をいたしました。同日、ブッシュ大統領はテロ支援国の指定を解除することを米国議会に提示した。このような状況はもう24日には察知されますから、北朝鮮を6カ国協議で封じ込めているときに弾道ミサイルがどうのこうのという提言を出した場合には、いかにも気の抜けたビール以上の間の抜けたことになるので、あわてふためいて6月24日に柳井さんたちは出したのかなあと思っております。
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