自衛隊の変貌を見る③
次に、この判決をどう活用するかという問題について、お話をします。まずこれまでの例では、違憲判決が9条関係で出た場合の政府側の反応というのは、異常に強力でありました。
ひとつは砂川事件のときのことです。今年の4月に私の昔からの友人である新原昭治さんが、アメリカの国立公文書館にいらっしゃって、1959年の砂川1審判決から後の最高裁弁論に向けての、アメリカ大使館と国務省との間の電報を入手してまいりました。私はそれを見て非常にびっくりしたんですが、59年3月29日、米軍駐留違憲判決が下りますと、翌日の朝、午前8時に駐日大使が外務大臣・藤山愛一郎氏のところにやって来てですね、跳躍上告を暗にそそのかした。藤山外相は1時間後の岸内閣の閣議に出て行って、その方向を決めた。ただしその後最高検と東京地検は2日間議論しまして、東京地検は東京高裁のほうがいいと言ったらしいんですが、最高検が最後に押し切って、跳躍上告を4月3日にしたという経過なんですね。
そのとき最高裁長官は、とにかく弁護団と会わなかったんですよ。15人の裁判官のうち田中耕太郎長官ともうひとり、2人だけ会わなくて、13人は全部僕らと会ってくれたんです。ところがその長官が、駐日大使と会って、現在、松川事件を含む3000件の事件が最高裁に滞留しておるというから、早くとも9月の判決だと言った。それを大使は電報で国務省に連絡しています。まあ、日米同盟というのはこういうものだということを示したものですね。
長沼判決の場合はここで申し上げるまでもなく、裁判長に対する書簡による干渉があり、忌避申立、訴追申立等の連続攻撃が行われて、判決後は裁判官を地方に不当に転勤させるという措置が取られたのであります。
今回は福田総理は、「主文では勝った」とか、「憲法違反は傍論に過ぎない」と言い、外相は「ヒマになったら読む」、幕僚長は「航空自衛隊は関係ない」という態度でありますので、このレベルの反論であれば、前の2回に比べて弱い。こういう場合は学習会を全国的に行って読み合わせをやって、まずこれを定着させることが重要です。すでに一般のマスコミは翌日以後はピタッと報道いたしません。これを忘れさせる戦略だと思うんで、逆にこちらは忘れさせないということが大事だと私は思います。6月7日に岡山で行われた全国弁護団・原告団の会議でもその方向を決めてやっております。
名古屋高裁の判決の活用については、5点申し上げたいと思っております。
第1は今後の政局とのからみです。空輸作戦を9条1項違反と断定された判決が確定したわけですから、これを使わない手はないんで、遠慮はいっさいいらない。100パーセント使っていく必要がある。
まず当面の焦点になっているクウェートのアリ・アルサレム基地から、引き続き週3、4
回、C131輸送機によるバグダッド基地その他への空輸が依然として行われておるわけでありますから、この判決に基づいて、根拠法であるイラク特措法をただちに廃止させる。さらにもうひとつの筋としては、本年の12月末日をもって国連安保理の決議1720号が失効します。国連安保理が再び多国籍軍の駐留を認める見込みはない。多国籍軍の根拠がなくなればイラク特措法の存立の根拠が12月末をもって消失する。この問題は秋の臨時国会で徹底的に追及していただかなきゃならないと思います。
関連してインド洋派遣艦隊の問題です。昨日、再開後第3次の補給艦と護衛艦が佐世保から出港いたしました。この艦隊の活動は、イラク自由作戦、アフガニスタンにおける不朽の自由作戦、インド洋における海上阻止行動、3つの海上作戦を命令されているアメリカの中東軍、第5艦隊、中東方面の海軍部隊、その指揮下のイギリスやパキスタンの海軍に給油をすることです。海上自衛隊は直接米空母に給油している証拠はないんですが、アメリカ海軍の給油艦に給油して、アメリカの給油艦から米空母キティホーク、アイゼンハワーに給油されている。してみるとこのイラクの判決の、米軍の武力行使と一体になった行動というものについて、これはどうなんだと。確定判決を適用して、新テロ特措法の違憲性をつくということが非常に大事な問題になると思います。
しかもさっき指摘しましたように、内閣法制局の伝統的な見解、大森法制局長官時代以降の伝統的見解を元にしても違憲だというのですから、この判決とこの見解を手元に置いて、キリキリ詰めていただいたら、政府は本当に立ち往生する。言い逃れをするにしても、何回も審議ストップに追い込むことができるんじゃないかと思います。参議院では多数を占めている野党だから、あまり質疑をしないで最後に否決するということだけではなくて、充実した審議をやってもらいたいと、議員経験のある私としては期待しているところなんです。
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