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「平権懇」☆関係書籍☆残部僅少☆

  • ●大内要三(窓社・2010年): 『日米安保を読み解く 東アジアの平和のために考えるべきこと』
  • ●小林秀之・西沢優(日本評論社・1999刊): 『超明快訳で読み解く日米新ガイドライン』
  • ●(昭和出版・1989刊): 『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』
  • ●西沢優(港の人・2005刊・5000円+税): 『派兵国家への道』
  • ●大内要三(窓社・2006刊・2000円+税): 『一日五厘の学校再建物語 御宿小学校の誇り』
  • ●松尾高志(日本評論社・2008刊・2700円+税): 『同盟変革 日米軍事体制の近未来』
  • ●西沢優・松尾高志・大内要三(日本評論社・2003刊・1900円+税): 『軍の論理と有事法制』

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2008/09/28

2008.9.6 平権懇学習会「裁判員制度を考える  西野喜一」⑤  

○こんな粗雑な裁判でいいのか

公判を3日程度で終えることにしますと、今度はどんな証拠をどんな順番で調べるのか、事前に決めておかなければなりません。それが今度導入された公判前整理手続です。今までは起訴状一本主義と申しまして、裁判官は法廷が始まるまでは検察官の起訴状しか見ていない。被告人は何の容疑で起訴されたかということだけは分かるけれども、それを被告人が認めるのか認めないのか、そして認めない場合にはどんな証拠調べが必要になるのか、背後の状況はどうなのか、そういうことは全然分からず、虚心坦懐に法廷に臨むとされていました。

それを今後は公判前整理手続で、どんな証拠をどんな順番でどの程度調べるか、あらかじめ決めておくというわけです。証人Aを検察側が1時間程度尋問する、弁護側が1時間程度反対尋問する、と決めておくわけですね。実際に証拠調べを始めたところ意外な証言、意外な事実が出てきて、もっと聞きたいとなったらどうするのか。公判期日を延ばすのは裁判所は危険だと思うでしょう。裁判員が出てこなくなる恐れがあるわけですから。そうすると途中で中途半端なまま証拠調べは打ち切りになる恐れがあります。これからは場合によっては、中途半端なままに終わった証拠調べの結果に基いて判決を出せというわけです。

それからまた公判前整理手続で検察官と弁護人が、それぞれのやりとりをします。検察官は事前に証拠を承知しております。弁護人の証拠も事前に出ております。それに基づいて整理をするのですから、当然、その雰囲気は裁判官にも伝わります。したがってこれからは公判前整理手続で裁判官に予断を与える技術がどんどん発達すると思います。私が弁護人なら当然そうしますね。これは冤罪であると裁判官がもしかしたら信じてくれるかもしれない、というような雰囲気を作り出そうとするわけです。言い換えますと、検察官も逆の立場で当然そうするだろうということです。今後はそのへんから裁判の実体が始まるわけです。

それから、今回の裁判員制度では非常に乱暴な点がいくつもあります。

そのひとつは公判の更新手続というものです。裁判員も生身の人間ですから、突然急病になって公判に来れなくなるということはあるでしょうね。事故があって来れないということもあるでしょう。そういう場合に備えて予備の補充裁判員も一緒に公判に立ち合わせておきます。誰か正規の裁判員が欠けたら補充の裁判員を繰り上げて公判を続けるわけですが、その補充の裁判員も使い切ってなお足りなくなったらどうするのか。その場合は裁判員をあらためて選びなおすんですね。新たに選びなおして公判に参加してもらいます。公判の途中から参加させるという、たいへん乱暴な制度です。

欧米諸国では陪審でも参審でも、途中で陪審員なり参審員なりが欠けて、途中で選びなおした場合は当然、手続は全部最初からやり直します。そうでないと途中から証拠調べに加わった人、先週はどんな証拠調べをやっていたのか知りません、という人が入ってくるわけです。ですからそういうことがないように、足りなくなって人を選びなおしたら、手続をいちばん最初からやり直します。

しかしわが国ではそうはしない。途中から入ってきても構わないというのです。その人に今までどんなことをやってきたのかということを、どうやって伝えるのか。法廷での証拠調べの様子をビデオかDVDで撮っておくのかもしれませんけれども、それはまた1週間分を見るだけでも1週間かかりますから、どんなことになるのか、私などはたいへん不安に思います。

また、部分判決制度というこれまたたいへん乱暴な制度が、昨年の法改正で取り入れられました。たとえば連続殺人事件のように、大きな事件が2つも3つもある場合には、これはどうがんばっても3日では終わらないので、事件ごとに裁判員のチームを作って判断しようというわけです。AチームはA事件だけの証拠調べをやって、A事件の有罪か無罪かだけを判断する。BチームはB事件の審理だけをやってB事件だけ有罪か無罪かだけを判断する。最後のCチームはC事件の証拠調べをやって、C事件が有罪か無罪かを決めたうえで、A事件、B事件を含めた全体の量刑を決める。

ということは、全体の量刑を決めるCチームは、A事件、B事件の証拠を見ておりません。証拠を見ずに量刑をさせるという、とんでもなく乱暴な制度です。のみならず、A事件は有罪の結論が出た、B事件も有罪となった、しかしC事件は無罪となった場合でも、Cチームは、A事件、B事件の証拠を見ずに全体の量刑をしなければなりません。そんな乱暴な制度をやっている国はひとつもないわけでして、被告人としてはたまったものではないだろうと思います。

それからまた一審で判決が出ますと、検察官も弁護側も、不服があれば控訴ができます。そして高裁が何らかの理由で原判決を破棄し、審理をやり直せと言って一審に差し戻す。まあ、ときどきあることですね。この場合、すべての陪審国・参審国では審理は最初から完全にやり直しです。陪審員を選びなおすことから始めて、証拠調べを全部やり直す。そういう国では同じ証人が何回も呼ばれることがあるわけですね。それはもう仕方がない、国民が裁判に協力するということにはそういうことも含まれると割り切っている、そういう国柄です。ところがわが国の裁判員制度では、高裁で破棄されて戻ってきた場合、一審の審理はどうするかというと、証拠調べは何と前の続きだけをやるのです。裁判員は選びなおします。そうすると、前の証拠調べの様子を知らなければなりません。ビデオを見てくれ、DVDを見てくれということになるのだと思いますが、1週間審理をした事件ならば再生するのにやはり1週間はかかるでしょう。その後で、また新しい証拠があればそれだけを付け加えて、新たに判断する。

しかしながら一審と高裁の判断が分かれて、高裁から差し戻されてきたという、裁判官でも難しいような事件を、抽選で当たった国民にやらせようというのでは、いったいどんな判断になるのか、私はたいへん不安に思いますし、被告人も不安に思うでしょう。

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