イラク戦争で劣化した自衛隊と日本⑤
●不祥事続発の背景
以上、多発する不祥事の一端を見てきました。単純な暴力事件や破廉恥事件は挙げればきりがないし、旧防衛施設庁の談合事件や守屋次官の収賄事件のようなものはまた別の機会に詳しく分析する必要があると思います。なお、本年7月15日に防衛省改革会議が発表した報告書「不祥事の分析と改革の方向性」が分析しているのは、①給油量取り違え事案 ②情報流出事案 ③イージス情報流出 ④「あたご」衝突事案 ⑤前事務次官の背信(いずれも同報告書の表現による)です。
なぜこのように不祥事が続発するのか。旧軍のような鉄拳制裁よりも陰湿なイジメが蔓延するのは、昨今の社会状況の反映とも言えるでしょう。しかし上に挙げたような諸事件の裏には、海外派兵の影が垣間見えます。見てきたように海外派兵関連勤務は過酷なものですし、装備ばかり立派になっても定員を充足していないもとで、特定部隊には相当な負担がかかっています。
自衛隊は「国際貢献」によって世界一流の軍隊へと脱皮するはずでした。昨年の防衛庁から省への格上げがそれを象徴していました。しかし現実には無理な海外派兵によって隊内にさまざまな形で亀裂・乖離が生まれ、そのことが不祥事続発の背景になっているのではないか。この実態を、私は自衛隊の「劣化」と表現します。
第1は、派兵部隊の将と兵との乖離です。幹部学校出身の指導部は海外経験によってさらに昇進の機会をつかみますが、「熱望」して選抜された兵はこき使われるだけで、任期制自衛官が長く生活が保障される曹に昇進する昇任試験に合格するのは至難の業だそうです。しかも現地で見るのは米国の戦争への貢献にすぎない。日米同盟強化が国益なのかどうか、兵が疑問に感じても当然だと思います。
第2は、選抜された者と選抜されなかった者の乖離です。参加を「熱望」しても家族が病気だったり本人に虫歯があったりすれば選抜されない。そして選抜者が抜けたあとは日常的に足りない員数からさらに減るわけですから、任務はきつくなります。
第3は、派兵部隊と国内世論との乖離です。イラク派兵は世論の反対の中で実施されました。実施以後賛成・反対は逆転したとはいえ、国民の半数近くは派兵に疑問を持っているわけですから、海外任務の経験を誇れない。
なお、かつての自衛隊はとにかく員数をそろえるために強引な勧誘をしましたから、他に行き所のないような若者が自衛隊に行く、という印象を今でも持っている方があるかもしれません。しかし、現状は違います。むしろ社会のエリートです。公務員試験対策の予備校が各地にありますが、ロビーには「会計士○○名合格」のような国家試験合格者の人数が張り出されている。そのなかに並んで「自衛隊○○名合格」と張り出されるような時代になっているのです。
また、カンボジアPKOなどでは選抜されて拒否するかどうか悩んだ隊員もあるといいますが、イラク派兵に選抜された世代はみな海外派兵が恒常化して以後に入隊した者たちですから、喜んで参加した者が多い。それが現地を見て幻滅するわけです。
日米同盟強化=対米従属への疑問を抱かせる現象のひとつに、生命保険の問題があります。自衛隊にも共済組合はありますが、それでは不足するというので、ほとんど強制的に保険に入らされる。その保険会社が、ずっと2社に独占されていました。ところが近年の金融再編のなかで、2社とも外資系に買収されてしまったのです。協栄生命がジブラルタに、東邦生命がAIGエジソンに。東邦は戦前の徴兵保険以来の軍御用達会社です。25万自衛隊員の生命の値段が外資に決められる事態が起こっているのですね。
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コメント
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とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
投稿: 生命保険の選び方 | 2010/09/17 20:49