読む・読もう・読めば 52
書籍流通のオルタナティブ
もともとは文学評論畑の出の方だと思うが、行動する批評家の大澤信亮氏が、出版社や取次を通さない書籍流通の別の市場を構想している。昨年暮れに相次いで出た『フリーターズフリー』2号と『ロスジェネ』2号で。巨大市場とは別にコミケ(コミックマーケット)やフリマ(フリーマーケット)が成立していることからの発想のようだが、より直接的には、上記2誌の刊行企画を持ち込んだ出版社の対応からであるようだ。
大澤氏らの構想そのものは実際に掲載された誌面で読んでいただきたいが、ひとりの編集者として(現流通機構に縛られて多くの出版企画を没にしてきた痛みをもつ者のひとりとして)大いに共感した文章を、少しだけ引用する。
ひとつは物書きとしての矜恃(違うかな)について。「出版社や取次や書店を敵視しているのではありません。みんなギリギリだということはわかっている。しかし、採算度外視のボランティア的な試みを続けるなら、若者の労働問題に物書きとして関わる私の当事者性がなくなってしまう。先行投資的に話題を作って、商業出版へ勝ち抜けるという、つまらないルートしかなくなる。」
もうひとつは「無料で配れ」という意見への反論。「お金を払ってものを買うとは、そのお金を得るために払った自分の努力を、敬意をもって他者の努力に譲渡するということです。それはイデオロギーとは別のレベルで『社会』について考えることでもあります。私は『無料で配れ』という放言に、働くことに苦しんだ人の感覚を認めません。」
本が売れなくて困っているのは、著者も編集者も出版社も流通業者も小売店も同じだ。文字を読み理解する能力のある人が減ってきているからではないか、という推測は恐ろしくて誰もしないが。流通過程がいちばんの問題だろうということから、これまでにも独自の流通機構が、中小出版社などによってさまざまに模索されてきたが、壁は厚かった。新しい世代の新しい構想の展開に注目したい。 (2009年4月14日)
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