読む・読もう・読めば 58
書籍の流通は変わるか
東京ビッグサイトで行われていた第16回東京国際ブックフェアの専門セミナーとして7月11日、「2009年本の学校 出版産業シンポジウムin東京」が開催され、特別講演「出版産業の課題解決に向けて」と4分科会が行われた。特別講演といっても、日販・トーハンの2大取次(要するに本の問屋さんですね)、出版社の筑摩書房、大手チェーン書店の丸善、集団仕入をしている書店グループNET21、の5氏によるパネルディスカッションで、司会は出版業界紙『文化通信』の編集長が務めた。
なんと言っても書籍の返品率が40%を超える、つまりいったん書店まで届けられた本の半分近くが売れずに戻って来るのは異常なことだ。委託販売システムでは、書店側が注文しなくても自動的に見計らいで本が届き、その時点でいったん出版社・取次側の収入になるが、期限内に売れなければ返品・精算される。1970年代までの教養主義が生きていたころには有効なシステムだったが、本の定価が相対的に安すぎるのに売れない現状のなかでは、うまく機能しなくなった。小売店の取り分を増やすことが難しいなら、マージンの多い責任販売システムや、また定価販売の縛りを外す(賞味期限の迫った弁当をコンビニで安売りできるようにするのと同じ)時限再販制との併用を進めなければならないだろう。
確かに、読者のニーズを読めない出版社が倒産したり、地域の文化に貢献しない書店が立ちゆかなくなっても、仕方がない。けれども男性書店員が結婚を機に辞める、つまり家族生活が成り立たない給料というのは異常ではないか。書店側から、どこの店に何冊あるというデータまであるのなら、なぜ偏在(ある書店では売り切れで注文しても入らない本が、別の書店では山積みになっている状況)が起こるのか、という問いがあっても、取次側は答えられない。きめ細かな対応をするためのシステム改良と流通経費負担には腰が重いのだろう。
「出版産業シンポ」の前身は1995年から5年間続いた「本の学校 大山緑陰シンポ」だった。米子の今井書店が肝いりとなって全国から出版業界人が集まり、「地域から描く21世紀の出版ビジョン」を熱く討議した。復活をとげ東京国際ブックフェアに併せて開催されるようになって4年目だが、次第に本音の議論ができなくなっているように思える。今回の特別講演でもオンライン書店について、ブックオフについて触れられることがなかったのは、これらに深く関与している取次への遠慮からではないかと思ってしまう。
(2009年7月1 4日)
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