読む・読もう・読めば 60
デジタル・ライブラリー
『日本経済新聞』は8月6日、「国会図書館の本、有料ネット配信 400万冊対照、11年にも」という記事を掲載した。すべての本は全文、パソコンで読めるようになる、それも来年から、という報道だ。日本文芸家協会、日本書籍出版協会との共同作業で、来年春には著作権者に著作権料を分配するための法人を発足させ、利用者へのサービス提供は民間の書籍通販サイトなどを通じるシステムにするという。たとえばAmazonのサイトから、新本を買うか、古本を買うか、ネットで読むか、読者の好みと料金によって3択になるということですね。
翌日、国会図書館は、この報道は「事実と異なるところがある」、日経からの取材はなかった、スケジュールは決定しているものではない、と発表した。「当館は、デジタル化した資料及び将来電子的に納本される書籍等を、著作権者及び出版社の利益に配慮しつつ、国内のどこからでもアクセスできるような仕組みを模索しています。」「今年に入り、日本文芸家協会、日本書籍出版協会及び弁護士有志と、このような仕組みの実現の方法について話し合い、研究会を設けることを検討しています。」という。
ということは、日経記事は書籍出版協会あたりからのリークによるもので、流れとしては誤りではないけれども、まだ検討段階であってスケジュールが決まっていないことについては誤報、ということになる。
国会図書館は、すでに「児童書デジタルライブラリー」で主に昭和30年以前に刊行された児童書を、「近代デジタルライブラリー」で明治大正期に刊行された書籍を、インターネットで無料で全文公開している。劣化して複写どころか閲覧も難しい本が読めるのはありがたいことだが、現在流通中の書籍までネット配信するとなれば、遠くない将来に出版業界は単なるコンテンツ産業になり、紙に印刷・製本する必要はまったくなくなる。
国会図書館は蔵書デジタル化のテンポを早めた。このように拙速な動きをするのはむろん、Googleによる書籍の全文ネット配信システムが年内にも稼働する可能性があるからだ(『図書新聞』6月27日号の高須次郎さんのインタビューなど参照)。この件についてはあらためて書く必要があるが、著作権とはたんにビジネス上のことだけではないはずだと、いちおう物書きの端くれとしては言っておきたい。何が読者の利益・著作権者の利益・出版社の利益になることなのか、慎重に検討すべきだと思う。 (2009年8月14日)
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