読む・読もう・読めば 64
「友愛」の祖
鳩山由紀夫首相は就任の少し前、月刊誌『VOICE』に「私の政治哲学」という文章を特別寄稿した。これが切り縮められて『ニューヨーク・タイムズ』電子版に掲載され、言うことを聞かない者は誰でも反米だとされてしまう米国で問題になった「事件」については、池田龍夫さんが「日刊ベリタ」(http://www.nikkanberita.com/)掲載論文で分析しているので、ここでは書かない。NYタイムズが端折ってしまった冒頭部分には、祖父・鳩山一郎の政治信条がクーデンホフ・カレルギーから学んだ「友愛」であることが書かれていた。現民主党のいう「友愛」はこれを引き継ぐものだという。
では、半世紀前の鳩山一郎首相とは何をした人なのか。在任は1954年12月10日から56年12月20日までのほぼ2年間と、長くはない。保守合同を実現し、さらに「ハトマンダー」と揶揄された、いかにも無理な区割りの小選挙区制を導入して憲法改正を目指したが、果たせなかった人、というのが第一印象だろう。しかしこの首相の他の「業績」にも鋭い目を向けているのが、荒川章二・静岡大学教授の『豊かさへの渇望』(「日本の歴史」第16巻)だ。2箇所を引用してみる。
その1、家族計画推進。「鳩山一郎内閣時代は、1955年2月の総選挙で、新生活運動の拡張を選挙公約とするなど世論の焦点とし、家族計画を重点とする生活改善運動が広く展開された。」専業主婦+一家の主人+子供2人を「標準世帯」とする近代家族が理想像とされたのは、このあたりからだった。少子だからこそ教育に力を入れる、つまりは受験競争もここに始まる。
その2、核持ち込み容認。「鳩山首相は1955年3月、原爆貯蔵を認める発言をし、野党の追及によってその撤回を迫られる。結局鳩山内閣は、在日米軍は核兵器をもたず、将来も日本の承諾なしに持ち込まないという架空の日米合意をつくりだし、追及を逃れた」。
さらには第五福竜丸事件の幕引き、横田基地の拡張、などなど。鳩山一郎内閣は米国からの自立を求める憲法改正指向のはずが、従属を強める結果になった。米国を手本に近代家族もつくった。その意味でも、なるほど1955年体制を作ったのは鳩山一郎内閣だった。お孫さんは『VOICE』論文の結論部分で、米国と中国の間で「いかにして政治的経済的自立を維持」するかが今後の課題、と書く。先々代の「友愛」路線から何を学び、何を引き継ぐのか。 (2009年10月14日)
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