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「平権懇」☆関係書籍☆残部僅少☆

  • ●大内要三(窓社・2010年): 『日米安保を読み解く 東アジアの平和のために考えるべきこと』
  • ●小林秀之・西沢優(日本評論社・1999刊): 『超明快訳で読み解く日米新ガイドライン』
  • ●(昭和出版・1989刊): 『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』
  • ●西沢優(港の人・2005刊・5000円+税): 『派兵国家への道』
  • ●大内要三(窓社・2006刊・2000円+税): 『一日五厘の学校再建物語 御宿小学校の誇り』
  • ●松尾高志(日本評論社・2008刊・2700円+税): 『同盟変革 日米軍事体制の近未来』
  • ●西沢優・松尾高志・大内要三(日本評論社・2003刊・1900円+税): 『軍の論理と有事法制』

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2009/11/22

現代世界経済をどのように捉えるか

――「創出と破壊の20世紀」からの脱却

2009109 平権懇学習会報告

岩田 勝雄(立命館大学教授)

21世紀の世界経済、国際経済はどのような方向に行くのか、どのようにあらねばならないのか、ということを、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。

先ほど司会者が「100年に1度の危機」と言われましたけれども、私は100年に1度の危機とは思っておりません。これはアメリカの危機だと思っております。例えば中国は危機にいたっておりません。危機は英語でクライシスですが、恐慌もクライシスです。ですから恐慌と捉えるか、危機と捉えるか、これは非常に難しい問題です。日本やアメリカでは、この100年間でどうにもできないような状況になっています。それはなぜかということを、これからお話しして参ります。

 1825年に最初の恐慌がありました。この1825年というのは、じつはイギリスで資本主義が誕生した年ですね。ですから資本主義はまだ200年に満たない、今までの歴史のなかで最も短い生産のやり方の体制です。1825年の次は1873年の大不況、グレート・ディプレッションと言います。それから1929年、これは皆さんもよくご存じの世界恐慌で、ウォール街から始まったものです。そして1974年、75年、これは石油危機です。だいたい50年周期で恐慌が起こっておりますので、専門的には「コンドラチェフ循環」と呼んでいます。そうすると次は2025年ぐらいに起こるのではないかと思われたのですが、それが2008年に起こった。コンドラチェフ循環が崩れてしまった大きな理由は、アメリカにあります。

アメリカ覇権の意味

20世紀の世界を考えてみます。20世紀の資本主義は最も繁栄した資本主義社会でありまして、このときにアメリカはいわゆる覇権(英語でヘジェモニー、ドイツ語でヘゲモニー)を獲得いたしました。まさに20世紀はアメリカの世紀でした。なぜアメリカが繁栄して他の国でなかったかというと、まず第1にアメリカは移民国家でありまして、新しい産業、新しい技術、あるいは新しい労働者を受け入れる素地が十分あった。それで急速な経済発展を行ったのです。急速な経済発展のなかに、新しい技術が次々に誕生いたしました。

 第2に、アメリカはいま自動車文明ですけれども、20世紀の初めに自動車産業が生まれて、これがアメリカの繁栄を支えました。これも皆さんご存じのように、アメリカの自動車産業は発展するとともに、鉄道を衰退させてしまいました。自動車を売るためには鉄道を廃止する。所得を上げる。道路網を整備する。第二次大戦後の日本の高度成長期はまさにその政策を行ってきました。要するに自動車を売るためには、公共機関を廃止する、所得を上げる。とくにアメリカ本土のGM、フォードは非常に賃金が高いです。退職した人たちが年金を1000万円ぐらい貰っています。労働者でも1000万円、退職しても1000万円。非常に高い賃金を貰うということは、高い自動車を買うことができる。これがアメリカの政策でした。これが完全に行き詰まったんです。日本も高度成長期には賃金は上がりました。自動車を買えるようになりました。こういう政策がアメリカで浸透して、それでアメリカの一人勝ちになりました。医療技術だとか物理学、量子学、素粒子学が非常に発展いたしまして、原爆や水爆を作った。

それから3 番目、第二次世界大戦でドルを国際通貨として流通させました。これもアメリカだけが可能であったわけです。

 4番目は、世界の潮流として特徴的なことですけれども、人口の増大がありました。現在、世界の人口は68億人といいますが、1800年の世界の人口は13億でした。1900年には16億、1945年には26億。それからこの60年間ちょっとで40億も人口が増えたんです。非常な出生率です。20世紀は人口の爆発的増大の世紀でした。これがさまざまの問題を生んでいます。けれども少子化が問題だと言われて、日本の場合は人口を増やそうとする政策をとっています。人口の増大には2つの意味があります。ひとつは新しい労働力を生み出すこと、2つ目は作った商品の買い手となることです。この2つが20世紀に非常に拡大したのですね。人口の増大は資本主義の発達を支えてきたという役目をもっています。

 5つ目が、20世紀に入って労働運動が非常に活発になりました。とくにドイツ、イギリスで発展しました。第二次大戦後、1960年代から労働運動が下火になりました。労働運動が活発化した原因となったのは明らかに労働者の貧しい生活ですけれども、第二次大戦後、社会保障政策がとられましたので、これが労働運動の衰退と結びついています。

 6つ目の特徴は農業問題、食糧問題です。現在、世界の穀物生産は約22億トンです。人口が68億人ですから、1人当たり320キロぐらい消費できる数字になっています。だいたい1日に900グラムくらいで人間の生活は維持できるとされていますから、いまの食糧生産は人口に見合って行われています。ところがほとんどの食糧生産は先進国に集中しているという特徴があります。多くの方々がアジア・アフリカの発展途上国のほうが農業国だと考えますですけれども。事実は先進国で食糧生産が維持されています。

 ちなみに日本の場合は年間2500万トンから3000万トンぐらいしか生産できておりません。穀物は1人当たり60キロから70キロぐらいしか生産していない。したがって外国に依存するほかありません。ところがアメリカやヨーロッパでは全部自給できております。アメリカは1人当たり800キロの穀物を消費しています。牛肉は1キロ生産するのに穀物が13キロ必要です。豚肉は8キロ、鶏肉は3キロです。それでアメリカ人の生活を見ていますと、非常に分厚いステーキを食べています、半ポンドとか1ポンドとか。それを食べますと、その13倍のトウモロコシを食べる計算になります。サハラ以南のアフリカの人たちは、平均すると160キロです。先ほど、平均的人間が生活するのに穀物が300キロ必要だと言いましたけれども、サハラ以南ではもう人間生活を維持できない穀物生産しかできていない。つまりこれだけ食糧生産が偏在するのは、20世紀に特徴的なことです。それまではどこでも自給自足で生活できていたわけです。日本でもかつては100%、食料は自分の国で調達しておりました。第二次世界大戦後、食糧問題が非常に重要な問題になっております。

 イギリスは穀物消費がだいたい650キロ。面白い話がありまして、1980年から2000年の20年間に、男性は20キロ体重が増えて、女性は15キロ増えました。これはイギリスの厚生労働省が発表した数字ですが、これで成人病が非常に増えました。アメリカで年間800キロということですけれども、太っている人たちはどういう人たちかというと、圧倒的に低所得層です。発展途上国で太っている人は裕福な人ですが。アメリカの低所得層は自分で調理することはありませんで、ジャンクフードのハンバーガー、コーラ、チップスを3食あるいは4食食べて、間食にチョコレートを食べたりしている。だから非常に体重が増えるんです。つまりアメリカでは、セルフコントロールできないような最下層が太っている。イギリスでは平均的に体重が増えております。日本はどうかというと、確実に体重が増えています。中国も増えています。痩せておりますのは、サハラ以南の人たちです。

 平均余命ということで言うと、日本は非常に高いですが、サハラ以南では38とか40歳です。旧ソビエト、いまのロシアは所得が増大するとともに平均余命が減少していまして、いま男で40代になっています。裕福になって肉を食べて病気になる。ですから平均余命が少ないところは貧しいところと、急速に豊かになったところです。世界全体は総人口と寿命が延びたという特徴があります。

 7番目は石油の問題、資源の問題です。石油あるいは原油の確認埋蔵量、これはアメリカのNASA、あるいはアメリカの石油会社が探索した数字を発表しているんですが、現在のところ約2000億トンとされています。されている、と曖昧な言い方をしていますが、20年ぐらい、ずっと2000億トンで変わっておりません。20年間消費しても2000億トン。そこでどのくらい消費しているかと言いますと、1年間に45億トンです。ですからこのままの状況でいくと、43年しか保たないという計算になります。

 アメリカのイラク戦争だとかアフガニスタンの戦争は、まさにアメリカの石油資源を求めてのものです。アメリカは世界最大の石油消費国です。アメリカは年間6億トンの石油を消費しています。アメリカはあと10年で8億トンの消費を予定しています。ところがアメリカ国内の石油資源は88000万トン。要するに最大消費すると1年間でアメリカの石油は枯渇することになります。そこでアメリカは石油資源の確保に、イラク戦争を始めました。アフガニスタン戦争も始めました。アフガニスタンは皆さんご承知のとおり石油を産出する国ではありませんけれども、中央アジアで産出したものを、アフガニスタンを通ってパキスタンから海へ運ぶ重要なルートです。アフガニスタンを確保することは中央アジアの石油を確保する政策でして、これが戦争に結びつきました。アメリカはジャスティスと言いますけれども、アメリカの石油を確保するジャスティスということになります。日本の場合には全量輸入ですから、アフガニスタンでもイラクでも、とにかくアメリカに提携していく。

石油は2000億トンあると言いますけれども、実はまだはっきり分かっていないところがあります。ロシアの石油採掘に関わっている科学者の発表では、石油は化石物ではなくて、地球の造山運動、地球の内部の運動で原油が造られているのではないか、とされています。過去の動植物の死骸が石油になったという証明は、いっさいなされていないそうです。ですから石油に関しては非常に不透明で、どのくらいあるか分からないんです。とにかくアメリカとしては自分の国の石油は消費しないという政策で、これがアメリカの石油戦略、あるいは戦争を生みました。

 それから第8番目の問題としては、20世紀は社会主義が誕生し、崩壊した世紀でした。中国は社会主義かと言われると非常に難しいですが、少なくとも社会主義とは言えない社会です。北朝鮮はご存じのように誰も社会主義とは言わない、統制社会、管理社会、独裁社会です。キューバはマルクス・レーニン主義ではないし、社会主義を指向すると言っていますが、キューバ国民1100万人、誰も社会主義だと思っていないでしょう。社会主義を名乗る国として、ベトナム、リビア、それからスリランカが社会主義と国名についていますけれども、社会主義だと思っている人はいないだろうと思います。

 1917年にロシア革命で社会主義が誕生いたしましたけれども、崩壊しました。崩壊した理由は何かと言われれば、たぶん基本的人権を確立していないということが、いちばん大きい問題だろうと思います。私も崩壊する前のソ連とポーランド、それから東ドイツを見ましたけれども、とにかく窮屈な社会で、これが社会主義とはとても思えない。と同時に、それまでソビエトに行ってきた人、あるいは東欧に行ってきた人が、社会主義だと宣伝してきたことを、非常に私は罪深いと思っています。本当のことを言っていれば、もっと違った対応ができたと考えますし、自由な批判ができたと思います。この共産党支配社会が、あるいはソビエト社会が崩壊いたしました。20世紀は社会主義の誕生と崩壊という、歴史的な契機となった世紀でございました。

 9番目として、交通・運輸・通信手段の急速な発展がありました。これは第二次大戦後とくに発展いたしまして、交通手段の点では飛行機とか自動車が、人の交流と商品の交流拡大を可能にいたしました。つまり交通・運輸手段の発展が資本主義の発展を支えてきた。逆に言いますと、ソビエト社会は交通手段があまり発展していない、自動車は3年とか5年も待たないと買えない状況です。これは相当の違いがあります。それから飛行機の発明というのは、人がどこでも行くことを可能にいたしました。それからインターネットなどの通信手段、情報手段の発展は、リアルタイムでどこの国の状況も知ることができるわけです。これは非常に大きな発展だと思います。  

 それから、最後になりますけれども、20世紀のもっとも大きな特徴は、戦争の継続した世紀でした。1897年にボーア戦争がありますけれども、それ以後一貫して戦争が続いてきました。いっときも平和になったことがありません。今も戦争は継続しております。要するに20世紀は戦争の継続の世紀という特徴があります。

なぜこうなったのか。資本主義だけに原因を求めることはできないと思います。アフリカでは民族問題がありますし、宗教問題、あるいは領土問題があります。中国とインドの間の戦争は領土問題ですし、中国とソビエトの戦争は島をめぐる領土問題でした。イラク戦争、アフガニスタン戦争はアメリカの石油をめぐる戦争です。幸いなことに日本は1945年に戦争は終わっているわけですけれども、ヨーロッパ社会でもアジアでも、ラテンアメリカでも、戦争が行われてきています。

 これをどうやってなくすか。じつは21世紀にどうやってこれらの問題を解決するかという課題を担っているんです。アメリカは覇権を持っていますが、それは最大の生産力、政治力、軍事力を持っているからです。ですから別の言い方をすると、平和な世界を作ればアメリカの軍事力を削減することを可能にする。では平和の世界をどう作るかということですが、そのことを考える重要な問題は、発展途上国の問題を解決すれば、平和を確立することが可能であろうと思っています。

発展途上国は第二次大戦中の植民地でした。皆さんはお分かりだと思いますが、学生に日本は植民地を持っていたというと、どこに持っていたんですか、という話が多いんです。韓国・朝鮮だけは分かるんですが。満州、今の東北3州ですね、それから台湾、南サハリン。1931年から始まった15年戦争は、中国全体を植民地化する戦争だったと言っても、なかなか学生は信用しないというか、分からないんです。そういう意味では、正確に学生に知らせる必要がある。アメリカは植民地を持っていないんですが、実質はたくさんの疑似植民地を持って、拡大しています。アジアではフィリピンがそうですし、太平洋諸国のほとんどは信託統治領という形で植民地化しています。日本はその植民地を持たなくなったということでは、非常に発展途上国にとっては信頼できる国になっていたのですが、でも過去の事実としては植民地を持っていた。

 植民地をなぜ持つのか、と聞かれますが、植民地には3つの意味があります。ひとつは植民地で食糧生産をする。あるいは原料を確保する。日本の場合には台湾のコメを輸入しました。黒竜江省でコメの生産をしました。黒竜江省や台湾ではコメを日本に輸出しますから、足りなくなるので朝鮮から輸入する、という関係がありました。第二次大戦中ではベトナムからコメを輸出いたしまして、ベトナム人が300万人も餓死した。こういう事実もほとんど知られていない。

 植民地を持つと、さらに商品を売ることができる。3つ目が、人を送り出すことができる。日本の場合には、土地なし層だとか農家の次男坊、三男坊が送り出されましたし、それから小作農の人たちが送り出されました。アメリカの場合には若干違いまして、土地なし層とかではありません。イギリスの年季奉公人という形で農場に働いている人たちがアメリカに移住しました。それで大きな土地を耕していくわけです。日本の場合には満州で、あるいは朝鮮で、土地を取り上げて自分たちの土地にしました。アメリカの場合には基本的に開墾という形になります。

ですから先ほどの農業の問題で言えば、農業規模に相当の違いがあります。日本はだいたい1.5ヘクタールから2ヘクタールが平均的な耕地面積になっています。実際にはこれの30パーセントが遊休地です。アメリカの平均的な農地面積は180ヘクタールです。日本の100倍近い耕地面積ですから、農業生産では全く不利になっています。ヨーロッパはいちばん広いフランスは50ヘクタール、日本の30倍ぐらいの耕地面積です。だから、よくこの狭い耕地面積で日本は5000万、7000万の人口を養ってきた、と言えると思います。ちなみに中国は78000万の農業人口ですけれども、平均的な耕地面積は0.8ヘクタールですから、日本の半分です。中国はおそらくこのままでいくと、世界の食料輸入大国に変わっていかざるを得ないと思います。

これだけの仕掛けがございまして、これがアメリカの繁栄をもたらしました。と同時に、食料は68億の人口を養えないという条件が生まれてきたわけです。ところが発展途上国、アフリカのサハリ以南は非常に、人口増大は大きいけれども食糧生産は減少しているという状況があります。

人口が半分になれば

それで、どういう形で21世紀を作るか。実は私は非常に極端な提案をいたしておりまして、人口が半分になればよろしいと。いま68億ですから、30億あればいい。日本の人口はいま12700万ですから、6000万ぐらいになれば、おそらく環境問題も解消するし、雇用問題も解消するし、いろんな過密や過疎も解決する。過疎のほうは、むしろ私はいいと思っている、安心して生活できると思っているんですが。

そうしますと、生産の担い手はどうなるのか。いま我々の社会で製造業はどんどん減っています。流通部門が中心になっています。皆さんご存じのGDPという指標があります。日本は約500兆円ですが、この10年、ほとんど変わっておりません。2007年は513兆円、昨年はマイナスになりましたが500兆円、ほとんど変わっていないんです。それで12700万の人口がありますから、この人口で割れば、一人当たりGDPが出てきます。約380万円ぐらいですね。この500兆円という付加価値額は、どこから生まれてきたかというと、製造業とサービス業から生まれています。日本は製造業の比率が高いんです。ところが雇用者は非常に減っておりまして、最盛期より300万から500万ぐらい減っております。だから製造業に携わる労働者が減ったとしても、十分生産できる状況があります。

先ほどの農業で言っても、日本は1.5から2ヘクタールの耕地面積です。20ヘクタールぐらいは一人で生産できるんです。いま機械化が進展していますから、20ヘクタールは完全にできる。いま農業者が一年間でどのくらい働いているかというと、だいたい30日から50日ぐらいしか働いていない。ですから耕地面積を広げれば、ひとりで十分生産できる。

製造業の場合でも、例えばロボットを造る工場ではロボットがロボットを造っている。無人の工場です。ほとんど人間は管理、設計、こういう労働に変わってきている。直接生産過程に携わる労働者は非常に減っております。だから十分生産の担い手はある。例えばトヨタ自動車は、正規雇用者が68000人いるんですけれども、生産の現場で働いているのはその3分の1、すべて機械化することが可能だと言っております。なぜ機械化しないかというと、雇用者を守らなければならないという建前だというんです。だから機械化が進展すれば雇用者は確実に減らすことができますから、人数が減っても十分やっていける。

500兆円を現在の人口の半分の人が所得ということになれば、だいたい700万円の1人当たりGDPになります。これが豊かな社会を形成することを可能にいたします。人が足りないのではなく、人は余っているんです。非正規労働者とか、5.8パーセントの失業者とか。

ちなみにアメリカのGDP13兆ドルです。日本は製造業で40パーセントを超えているんですが、アメリカは13兆ドルのうち、製造業はわずか10パーセントです。もうアメリカは製造業に関しては完全に衰退している国なんです。何がアメリカの13兆ドルを支えているかというと、圧倒的に医療部門です。アメリカは国民皆保険になっておりませんから、医療制度は私的保険に入って、あと低所得者層と一部の人が国家支出からの健康保険が適用される。だから有名な話ですけれども、盲腸の手術に100万円かかるという。アメリカの医療は非常に高いんです。医者にかかるのにも、保険センターに電話して、どこの病院にかかっていいか、許可を受けないと病院に行くことができない。保険会社はいかにして保険料を払わないかを考える。こうして医療部門が18パーセント。20年後にはだいたい30パーセントになるだろうと言われます。アメリカは異常な社会です。

それから政府部門が約16パーセント。アメリカは小さな政府だと言いますが、ヨーロッパや日本なみの政府支出を行っています。アメリカの政府支出、それから医療、それからボランティア活動がGDP6パーセントを占めています。

アメリカの社会は本当に異常な社会でして、製造業が衰退しているけれども大量の肉を消費する。穀物を消費する。こういう社会が形成されています。なぜかというと、要するにアメリカのドルが国際通貨として流通して、アメリカに還流するシステムが作られたからです。従いましてアメリカは異常な過剰消費の社会を形成したわけです。今度の2008年のサブプライム問題は、過剰消費の歯車が崩れたことによって、アジア、ヨーロッパ、そして日本に影響を及ぼした。従いましてアジアはアメリカ一国に依存する経済関係を止めれば、この問題を解決する。さらに人口を減少する、それからアメリカ依存から脱却する社会を形成すれば、違った経済社会を形成することができる。なにも日本はイランやアフガニスタンにはせ参ずる必要はない。石油を大量に消費する社会という、環境にもあまり配慮しないような社会を避ける。これがたぶん、21世紀の課題です。

では日本はどういう状況になっているか。いまの状況で言いますと、日本は経済発展が復興する条件は100パーセントありません。例えば自動車を1990年代は1360万台生産していたんですが、いま1000万台を割りました。再び1360万台生産することはありえません。なぜありえないかといえば、アメリカで自動車を生産し、中国で生産し、オーストラリアで、台湾で、タイで、それからヨーロッパで生産する。明らかに日本の企業は外国指向になっておりまして、日本で生産することはありえません。だから今のGDPで分配の仕方を変えるのと、人口が減れば、おそらく所得は増大する。そういう社会を目指したほうがいいと思います。

また新しい産業が生まれるかです。20世紀はいろんな産業が生まれたと言いました。21世紀に新しい産業、GDP10パーセントを占める産業が生まれるかというと、非常に難しいと思います。先ほど自動車は日本のGDPの約10パーセントと申し上げましたけれども、自動車に代わるような新しい産業が生まれることは、たぶんありえない。だからアメリカ的に医療を私的な保険に代えて行くということになれば、医療産業を中心に発展するかもしれませんけれども、いまの日本の所得状況ではたぶん非常に難しいです。ですから新しい産業は生まれてこない。新しい技術革新も出てこない。農業は先ほど言いましたように規模が小さいものですから、生産が発展できない。となると、もう今の生産規模で分配の仕方を変える以外にない。

鳩山首相は「東アジア共同体」と言っていますけれども、東アジア共同体に可能性があるかと言いますと、非常に難しいと思います。どこの国がイニシアチブを取るかによって大きく変わります。アメリカは中国がイニシアチブを取ることに猛反対ですが、ニュージーランドやオーストラリアを入れることで中国の政治的な圧力を弱めようとしている。たとえばASEANが地域共同体をつくるという提案に、アメリカは賛成しています。とにかく日本が入って中国の力を弱めるということに関してはアメリカは賛成していますが、そういう意味ではアジア共同体の確立は非常に難しい。

そこで日本の生きる道は、ということになると、とにかく世界が平和になる道を探る、平和になるというと、やはり生産を一定に拡大しなければならない。これは先進国ではなくて、アジア・アフリカ諸国で生産を拡大する必要があります。先進国では生産力拡大ではなくて分配の公平化と人口抑制です。この政策を採ることで、おそらく20世紀の諸問題から脱却できると思っております。

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