読む・読もう・読めば 69
牧瀬恒二さんのこと
民主党政権になったおかげで、1972年沖縄返還時の日米密約の全貌が明らかになりそうだ。核持ち込み容認密約に関していえば、鳩山首相は自らの憲法私案では「持ち込ませず」を含まない非核2原則を主張しているから、密約でも約束は約束、になる危険がある。このテーマでも鳩山首相の発言は二転三転四転しているから、先は分からない。
密約問題と普天間問題で、沖縄がまたクローズアップされている。確かに佐藤栄作首相の熱情がなければ72年沖縄返還はなかったかもしれないが、返還協定の陰の部分が今なお私たちを縛っているわけだ。私の頭の中では本土復帰運動といえば瀬長亀次郎、沖縄返還運動といえば中野良夫・高安重正・牧瀬恒二、みな故人となられた。牧瀬さんの最後の著作『日本史の原点としての沖縄史』(本邦書籍、1984年、89年に改訂、『日本史の原点・沖縄史』と改題)は、なぜか国会図書館に入っていないが、幸いに入手しているのでこの機会に読み返してみる。面識はないけれど、奥付記載によれば牧瀬さんが住んでおられたのは新宿区百人町、つまり私の仕事場の近くだから、なんとなく親近感がある。
牧瀬さんは各地で「立神」と呼ばれるもの(多くは海中の岩)が先史時代以来の海神の依代であり、沖縄のニライカナイ信仰が黒潮に乗って運ばれたものと考え、検証のために現地へ行ってみた。そして火祭りや御舟祭からして、和歌山県の那智の滝もまた立神と考える。さらに千葉県一宮の玉前神社の祭にも沖縄の祭祀に共通するものがあるという。黒潮文化論は柳田国男の『海上の道』以来、繰り返し語られてきたものだが、海神信仰がカツオを追って来た海人によって伝えられたという主張には説得性がある。
柳田民俗学には日本軍国主義の南進に利用されたという批判もある。しかし牧瀬さんは「日本の原点」沖縄をふたたび日本に迎えよう、米軍支配下の沖縄の人々を日本国憲法のもとに迎えようと奮闘した人だった。 (2010年1月14日)
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