読む・読もう・読めば 79
バラ園で 雨に打たれると花弁にも葉にも斑点ができて醜くなるし、湿度の高いときにはカビも病気も広がりやすいから、梅雨時はバラ園には辛い季節だ。見頃は、ゴールデンウィーク明けからの1ヶ月間だった。繰り出した人々は、大規模な花壇やアーチ、パーゴラなどベランダ園芸ではとても望めないためか、みなケータイで写真を撮りあっている。園内放送で禁止されても三脚を立てて大型望遠レンズを向けているのは中高年のハイアマチュアたち。重かったでしょうね、ご苦労さまです。最近の手ブレ防止機能のあるカメラなら、手持ち、中望遠で十分なのですけどね。それより撮影したバラの品種名くらいは控えておいたほうがいいと思いますけど。 メイヤン、マグレディー、コルデス、ラマーツ。世界のバラのブリーダー(育種家)たちの個性を楽しそうに解説して下さったのは鈴木省三さんだった。実を鑑賞するバラの品種もたくさんあるんですよ、と教えて下さったのは塚本洋太郎先生だった。ダブリン植物園の「ラスト・ローズ・オブ・サマー」のことは坂西義洋先生に教わった。みな故人となられた。内外のたくさんの植物園・バラ園を見たけれども、日本の有名バラ園は手入れが行き届きすぎて退廃の匂いがない。 交配によるバラの品種改良は、ナポレオンの后ジョゼフィーヌのマルメゾン庭園以後の話だから、たかだか200年の歴史しかない。バラ属の原種は約200種、東洋のバラと西洋のバラの交配で四季咲き性が加えられ、香りが加えられた。大輪、高芯剣弁のハイブリッド・ティー系の品種は1867年のラ・フランスから。房咲きのフロリバンダ系は1942年のピノキオから。けれども近年では何系とも呼びようのない品種が増えた。 もう30年も前のことになるが、各地の園芸家を訪ねたときに一様に言われたのは、戦時中の苦労のことだった。花作りなど非国民と言われ、泣く泣く苗木を焼却してイモ畑にしたこと。全部割れた温室のガラスがなかなか復旧できなかったこと。いま立派なバラ園のベンチに座ってぼけっとしていられるのは、なんと幸せなことかと思う。 (2010年6月15日)
« 6月19日 第2回「連続学習会 日米安保50年の現実」 | トップページ | 読む・読もう・読めば 80 »
「大内要三 コラム「読む・読もう・読めば」」カテゴリの記事
- 読む・読もう・読めば 127(2013.06.12)
- 読む・読もう・読めば 126(2013.04.06)
- 読む・読もう・読めば 125(2013.02.11)
- 読む・読もう・読めば 124(2012.12.15)
- 美濃部革新都政への道をふりかえる(2012.11.22)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント