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  • ●(昭和出版・1989刊): 『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』
  • ●西沢優(港の人・2005刊・5000円+税): 『派兵国家への道』
  • ●大内要三(窓社・2006刊・2000円+税): 『一日五厘の学校再建物語 御宿小学校の誇り』
  • ●松尾高志(日本評論社・2008刊・2700円+税): 『同盟変革 日米軍事体制の近未来』
  • ●西沢優・松尾高志・大内要三(日本評論社・2003刊・1900円+税): 『軍の論理と有事法制』

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2010/07/28

国会改革・比例削減でよいのか

201063日、坂本修さんの報告を受けて

◎質疑討論

―― 鳩山総理が辞任する動きになって、比例定数削減の動きはどうなるのでしょうか。近づくんですか。

坂本 民主党は参議院選挙の公約にはちゃんと衆院比例定数80削減を維持していて、参議院も40以上の定数削減をすると、あらためて数を明記したんですね。自民党も衆議院選挙のときの公約は定数の1割以上の削減、つまり48以上の削減だったんですね。みんなの党は半数削減です。いくつかの新党もそうですね。当然反対のはずの少数政党が「俺たちは削減していいんだ」と言っている。今度の参議院選挙の結果によって、変化はあるでしょうが、いずれにしてもどういう形で出てくるか分からないが、比例削減の流れは消えないと思います。

それからメディアで言いますと、寺島実郎さんは、民主党がいまいちばん最初に実行すべき公約は比例定数の削減だと言っているんです。確かにこれは金はかからないし、財界もアメリカも「そうだ」と言うでしょう。議員ひとりの歳費に1400万かかり、秘書の金から立法事務費から全部で7000万以上かかっているんだから。それを80削る、あるいは総定数を半分にするというと、いいんじゃないのと国民にうける可能性がある。

テレビで元バレーボールの選手は定数80削減ということが出たときに、国民がこんなにリストラで苦しんでいるんだから、80なんて少ない数じゃダメです、と言っていました。それからキャスターは、少数政党が割を食うと言うけど、それは94年当時に理論的には決着のついた問題ですから、と言う。

もっとも、メディアにはかつてのような熱狂的キャンペーンは今のところまだない。難しいんです。今日私がみなさんに配った「本家英国で小選挙区制ノー」というのは赤旗日曜版の530日付の記事ですが、非常に要領よくまとまっています。実はこの赤旗日曜版で書いているようなことは、讀賣新聞や朝日新聞も特集をして、イギリスでこうなっている、小選挙区制が問題だということを書いているんです。日本はイギリスをモデルにして二大政党制、小選挙区制で政権交代と言ってきたけれども、肝心のイギリスがこうなったと大新聞がみんな言い出したんですね。現実は否定できないのです。

二大政党制とこれを支える小選挙区制の根拠は、大きく崩れているのですが、先ほど話したように強権的国家の実現を狙っている支配勢力は、比例定数削減の企てをやめないでしょう。比例定数削減はいくつかの悪法のひとつではないんですね。たとえば国家機密法をつくられたら大変ですよね。けれども仮に国家機密法ができても闘う道はあると思います。だって、誰かを起訴しなければいけない、裁判をする、全部パクるわけにはいかない。いろんな形で抵抗闘争はできると思う。消費税がアップされたら大変です。けれど消費税をアップしたら絶対多数の国民を敵に回すことになり、闘いは次の段階につながりますね。でも国会で共産党も社民党もなくなって、どうあがいてもみんな死に票になって、という状態をいっぺん作られたら、その制度を改めるのに何年かかるか。ものすごく不利な状況での闘いを強いられることになるでしょう。強権政治をやるには、小数政党は邪魔者。なんとか国会から消したいと支配勢力の中枢は考えているのだと思います。ひとつには強権政治をしたいからですが、もうひとつでいえば、それは、彼らが「支配の危機」を感じているからです。たしかに、共産党と社民党の議席は大変少ない。でも私は議会内での力関係だけでは見てないのです。民衆の運動のなかで、新しく起きている波があります。たとえば、反核の問題だって、何十年も前に杉並で始まった運動が、いまは世界を動かすものになりつつある。長い間、ラテンアメリカは、アメリカの裏庭であり、国連の投票機械と言われていました。しかし、今は左派政権が人口の過半数を大きく超えています。

私は、政治家でも学者でもない一介の弁護士にすぎませんが、世界は大きく変わりつつあると実感しています。私の経験でも、1985年に派遣法反対で国会で参考人として意見を述べましたが、今回、派遣法の抜本改正の運動は大きく広がっています。支配勢力の無理は結局は通らなくなる。人間はさまざまの曲折はあっても、立ち上がっていく。どこでどう変わるかは分かりませんが、いまは、そうした民衆の側の運動が、国会内での活動と結び合って、支配をゆるがしていく徴候が出てきている――支配勢力はそのことを恐れて比例削減を企てているのではないでしょうか。

 ―― 仕分けをやったじゃないですか、民主党が。ああいうふうに無駄をなくすことを一生懸命やっているんだから、今度は国会の無駄をなくすと言われれば、けっこう賛成する。そこへどう切り込むか。

坂本 学習会で質疑・討論をすると、いちばん問題になるのはその点なんです。自由法曹団主催の勉強会でも、比例削減は反対だけど定数削減は賛成だという意見があった。

―― 民主党は一方で政党助成金の増額を検討しているということです。最高裁判決も政党助成金制度を合法性があり、違憲ではないと認めている。要するに、個人献金はどうせ伸びないから、その状況を考慮して、政党助成金の増額を検討します、ということですね。

坂本 無駄論は議員の数が多すぎると言ってます。しかし国会図書館の調査資料では、人口あたりの議員数はスウェーデンなんかに比べたら7分の1ぐらい、イギリスの4割弱です。諸外国に比べたらちっとも多くない。寺島さんはインチキで、アメリカの州の例を挙げている。アメリカは連邦国家ですから、州議会と国会では全然違うんですよね。それをごまかしている。国会議員数はアメリカがいちばん少なくて(スウェーデンの20分の1)、その次が日本です。圧倒的に日本とアメリカが少ない。だから議員の数が多すぎるというのは事実ではありません。

それから、金がかかっているのをどうするかということについては、320億円にもなっている政党助成金を減らせばいいんだと思う。たいし、政党助成金なしに、企業献金なしに、自前でやっている政党は残念ながら共産党しかない。だから庶民感覚で言ってそれは無理でしょうと、それこそ他の政党のジェノサイドじゃないですかと学習会で言われたことはあります。共産党の市田さんは去年の選挙のときに非常に分かりやすい話をしていました。無駄遣いだというけれども、議員ひとりにかかっている金は公設秘書の人件費から何から何まで全部併せてひとり7000万円、80減らしても56億円、政党助成金を減らせばいいのだと。

私も同じようなことを言っていますが、それだけで納得が得られるかは分かりません。本当はまともな政党や議員をもっとも必要とする階層、境遇の人たちが年収200万以下とか300万以下のときに、議員報酬がこれでいいのか、よく分からない。

名古屋で共産党の市議団がかなり思い切ったことを言っているのを御存じですか。二元代表制、つまりそれぞれ直接選挙でひとつには首長を選ぶ、もうひとつには議員を選ぶ。選ばれた2者が緊張関係を持ちながら地方自治をやることによって、住民の利益が守られる。議員を減らし議会を弱めるということは、首長の独裁を許すことになる。そういう原則論を言っているんです。その上で、次のように提起しています。第1に、立法費とかいろんな金がある。これについては住民監視で徹底してオープンにして、使わないものは全部返す、それを徹底する住民監視のシステムを作る。第2に、今の議員歳費が適正なのかどうかについては、住民と協議をする用意があると。

同じことを国会議員について言うのか言わないのか。いま言うと結局は無駄遣い論の土俵に乗るような気もするので、私は迷っています。ただ、あのバンソウコウを貼っている議員とか、宿舎をラブホテルに使っている議員とか、議場でメール交換をしている議員とか、なんとかチルドレンとかなんとかガールズとか、スポーツ選手が続出するとか、あんなのはいらないんじゃないの、という国民感情はあると思います。

私は、民意を反映するまともな選挙制度になれば、国民は本当に役に立つ議員をちゃんと選択していくと思う。それを民意切り捨ての制度に改悪して減らしてしまえとしたら、どうなるのか。「短気は損気」で、結局もっとも役に立つ者を殺すことになり、最大のマイナスだと言っていますが、そういうことを含めて、議論が必要ですね。

―― 比例定数削減をやりたがっている人々というのは、なんとなくイメージとしてはありますけれども、もう少し明確にしないと闘えないんじゃないかと思うんです。つまり先生は論文のなかで「支配勢力、その中核である財界」というふうに言われていますけれども、いま財界は全然ひとまとまりではないですよね。金融資本なのか製造業なのかITなのか。対米自立なのか、それともまだアメリカにまだくっついていくのか。そのあたりをもう少し腑分けしないと、自民党と民主党の役割分担をさせて、というようなところが、いまひとつ明らかにならないんじゃないかと思うんです。それはジャーナリストの役割かもしれませんけれども。つまり小泉構造改革のときは、アメリカの要求、財界の要求はかなりはっきり見えました。しかし小泉構造改革のときには比例定数削減は大きな問題として出てこなかった。政権交代になって、民主党になってから出てきた、小沢がやりたがっているわけですね。財界主流にまったく食い込んでいない小沢がこれをやりたがっているのは、ものすごい矛盾ですよね。

坂本 たしかに財界は全くの一枚岩ではないでしょうが、私の見方は若干違います。小沢氏は16年前ですか、『日本改造計画』を書いていますけれども、彼がそこで言ったのが、思想と基本構想の一致する2つの政党による政権交代、ダイナミックな政治、内閣の優位です。あれは財界が書いた『提言』とそっくりだったんですよね。小沢氏は財界主流から見たら乱暴で、アウトサイダーかもしれない。でも財界の言っている政策を小沢氏がそのまま言ったことは間違いない。小選挙区制を94年のときに進めた主力は財界でした。その流れはいま変わっているのかといったら、財界は依然として二大政党論でしょう。そしてそのための可能な限りの小選挙区化なんですね。だからその点では、少なくとも財界のなかのどの部分かということは分からない点があるんだけれども、いま民主党が掲げた比例代表の削減というのは、財界の主流の要求だと私は思いますね。

それからもうひとつ言うと、もっと財界中枢と直結している自民党も、やっぱり定数削減なんですね。だからまとめるとやはり、比例定数削減は支配勢力の総意として今も強力だと思うわけです。

少し別の視点から言えば、財界や民主党、自民党らが定数削減に熱心なのは、いまの小選挙区制・比例代表併用性では、彼らの目的が達成できない、はっきり言えば失敗しているからです。二大政党・政権交代がなぜうまくいかないのか。これは渡辺治先生が力説しているんだけど、彼は共産党や社民党が邪魔になっていると言うんです。二大政党でやろうとすることにたてつく、理屈を言う、正しい政策を立てる、やっぱりそれは国民に受けると。だから思い通りにできない。アメリカのように、共和党と民主党の賛成でイラク戦争をやれるのと違う。これが二大政党制で思いのままに政治をやれない大きな要因だと。

矛盾が深まったから政治を、福祉国家型に変えてバランスをとっていくか、EU型に近づけるような形で社会を動かしていくかとなると、少なくとも私の見ている限り、ひとつは財界がそうではない。もうひとつはアメリカが、オバマ大統領になってからも、安保条約をも超えて日米軍事同盟を強化していくという体制はまだ変わっていないんじゃないか。そうすると、国民との矛盾を抑え込むために、もっと強力な政治体制が必要だと彼らは考える。

―― それはその通りだと思います。ですから、民主党の今後は新福祉政策ではなくて新自由主義への回帰ですよね、明らかに。

坂本 はい、そうだと思います。そしてもうひとつ日米軍事同盟の強化です。

―― 坂本先生の本を読ませていただいていちばん分からなかったところは、衆議院の11の比例ブロックをそのままでいいとされていることです。そこのところは参議院と同じ単一の選挙区のほうがいいのではないか。というのは、前々回の選挙のときでも、国民新党より新党日本のほうが、比例が持っている票自体が多くても、細かく切られたブロックによって議席数が減っている。本当に少数を生かすとしたら全国統一にすべきで、比例定数を減らす、減らさないは別としてもそうしたらいいのではないかと戦術的にも思うんですけど。

坂本 考えられる選挙制度はいろいろあります。ひとつは中選挙区制に戻して定数格差を縮めるという選択肢です。1票の値打ちが2分の13分の1になるんじゃなくて、1票の値打ちをせいぜい11.25くらいまで縮めてしまうというやり方をすれば、中選挙区制はかなり民意に比例するんです。そういうシステムもあり得る。公明党がそう言っているんです(ただし定数は削減)。もっともある大学の学園祭で話したときには、中選挙区には絶対反対だという学生が多かった。なぜ反対かと聞くと、候補者の顔が見えないという。第選挙区で480、中選挙区は中ぐらいに分けるから4050と思いこんでいるんです。つまり、3人から5人が中選挙区制だったということを、若い世代は知らないんですね。

 それからあなたが言うように、全国をすべてひとつの選挙区にしてやるという、完全比例代表制が考えられます。これがいちばん正確に民意を反映することは確かなんです。そういう考えもある。だけど私はもうひとつあると思うんですね。11ブロックに分けていいと。11ブロックの定数をちゃんと決めて、その定数は全部比例でいくという形もある。共産党はこれを政策として言っていたんですね。ただし、この間の共産党の大会決議を読んでみると、「小選挙区制の撤廃、政党助成金の撤廃、比例代表中心の選挙制度への選挙制度の抜本的改革」を要求していますが、中選挙区制に戻しての選挙制度も、「選択肢のひとつとなりうる」と言っているんです。

全国を1区とする考えの弱点をひとつ言いますとね、それこそまったく政党に対する投票になる。候補者の順位は政党がつくる。政党が作ったリストに対して、イエスかノーかしか有権者は言えないのか。それは嫌だという有権者はけっこういるでしょう。その嫌だという気持ちには、やっぱりかなりの合理性があるように私は思うのです。

―― 前提を言っていなかったですが、私は小選挙区と比例代表は、国政のレベルでは平行してあるのはしょうがないなと思っているんです。

坂本 そうすると小選挙区の定数と比例のそれはどういう割合ですか。

── 定数を完全比例にするとなると、島根県は0.6だとか、そういう形になりかねないんで、そこの部分の調整はなかなか合意が取れないので厳しいと思っているんで、まあブロックの定数の部分をあらかじめ割りふっておいて、増えたところを上乗せするみたいな仕組みでも作らないと。

坂本 いま300180でしょう。もしそうした枠組みは基本的には変わらないとすれば、今のような歪みは完全にできますよ。しかも比例について、政党リストの信任投票みたいになることを、果たして有権者が納得するでしょうか。いずれにしろ、民意をより正しく反映させようということを共通の前提として、選挙制度をどう民主的なものに抜本的に改革するか、みんなで討議してみる必要があると思います。

―― 中選挙区制の話なんですけれども、去年、衆院選がありましたよね。あれを分析してみると、やっぱり公明党が中選挙区で得をしているんですね。3人区以上では常に議席獲得率が得票率を上回っている。だから公明党は比例代表制よりも中選挙区制を言っているんじゃないかと思います。票割りのうまいところが得をするわけです。立てすぎてもいけないし、足りなくてもいけない。共産もかなり損している選挙区がありますね。

坂本 たしかに公明党にはそういう計算があるかもしれません。でも、中選挙区制のもとで共産党は、定数格差がひどかったんですけれども都市部で勝ち進んだんですね。中選挙区制で名古屋の革新共同を含めて、40議席を取った。得票率も12%前後ありました。10%前後でも30前後取れるんです。かなり比例するんです。だから学問的にも中選挙区制は準比例代表制だと言われています。

例外は多少あるとしても、3から5の中選挙区制にして、定数格差を是正すれば、かなりの比例効果が出ると思います。そうすると連立政権になったら政治が動かないというのは根拠のないドグマです。このドグマがマスコミで論説を書く方に牢固としてしみこんでいる。でも、EU諸国を見ても連立政権で政治はちゃんと動いているでしょう。

結局、人間がいま見いだしているシステムとして言えば、民意を反映する選挙制度のもとで、議会を充実させて政治をおこなっていく以外に、人間はまだそれを上回るシステムを発見していない。私は複数政党制が絶対にいいと思う。民意を歪め、切り捨てて、巨大政党が政権を独占したり、少数政党抹殺の二大政党制になったら、結局は独裁の強権政治になり、大きな禍になる。

もっとも、「民意を反映する」といっても、そもそも「民意とはなにか」という問題はあるのですね。

民意というものはマスコミの世論操作で激しく揺れ動くことがあります。だいたい世論というのは、固い世論と柔らかい世論とがある。柔らかい世論というのはメディアにすごく弱い世論です。固い世論というのは、要求を掲げている運動のなかを経由しながら、一人ひとりの人間が自分の人生観を含めて形成してきた世論だと思います。もちろんこの固い世論と柔らかい世論との間は万里の長城のようではなくて、こっちからこっちへと移ったり、いろいろすると思う。そのなかでまともな政治や、まともな選択をどうしていくのかを、私たちは自分の活動を通じて作り上げていくしかない。私たちの運動が弱いと世論を左右するメディアの役割は飛躍的に大きくなってしまうと思います。

私たちがこの間何度も経験しているように、マスコミの世論操作の力は強力です。残念ながら、マスコミは真実に背を向けることが多い。昔の話ですが、私が弁護士になったとき三井三池闘争の現場に50日いました。第二組合が無茶苦茶にひどいことをやる。右翼暴力団が来て人を殺す。警察は右翼と第二組合の暴行を放っておいて、こちらが何かやると全部パクっていく。現場の帰社はみんな見ているのに書かない。記事にはならない。泣いてくってかかっていたよね、組合員が。あんた、見てるじゃないか、と。それについて記者は、「記事はきちんと送っている」と言っていた。そういう新聞社内部の緊張関係のもとで今のような記事になっているのかどうなのか。公害とか薬害とかB型肝炎とか、ああいう問題になるとやっぱりメディアの報道のなかで、心に沁みるようなものがあるのですが……。

 ── 今は原稿をコンピューターで処理するでしょう。かなりの部分、原稿が出たかどうかが調べられるんですね。だけどそれが載るかどうかということは、やっぱり全体を観ますからね。メディアが全部ダメというわけではなくて、やはり記者自身が関心を持たなければ、紙面にはならないと思うんですね。

 坂本 定数削減は当然だという論調がマスコミの主流になっています。二大政党と選挙制度でのメディアの共同歩調はなぜなのか。先ほどの『法と民主主義』(20102月・3月合併号)に元朝日新聞大阪本社編集局長の長谷川千秋さんが書いているんですが、「総選挙の公示日から投票日前日までの12日間、京都配布の全国版5紙と、地元紙1紙を対象に、テレビの視聴率に当たる面別注目率が最も高いとされる、朝刊の1面と第1社会面に政党名の見出しが何回出たか、党首の写真が何回出たかを調べた。両方とも、自民と民主の両党だけで8割近い。党名の代わりに使われた、麻生首相、鳩山代表という両党の代表者の名前をもそういう記事だとしてカウントすれば、見出しでは9割台になる。少数政党の党首の写真は、公示日前日に日本記者クラブ主催の6党党首討論会があったのが公示日朝刊に1度載っただけだった」というのです。

定数削減についての反対意見はけっこうあるけれども、載せない。絶対に。私が見たのでは東京新聞のコラムに武村正義さんが、小選挙区に自分も関与したけれども問題がある、さらに比例定数だけ減らすのは絶対反対だと書きました。東京新聞は、これ以上死に票を増やすのは問題だという特集記事を載せていますが、他の大新聞は書かない。賛成、反対のどっちに傾くかというレベルではなく、批判する側の意見がほとんど抹殺されている紙面になぜなっているか、理解できませんね。

── 先ほど、新聞社が悪いということではなくて、記者が関心を持つか持たないかだという意見があったけど、私はそういう見方はしていないんです。朝日新聞はたとえば普天間問題でいえば、最近の論調はもうはっきりと本土分散せよという論調です。船橋洋一主筆が書いた長い記事があって、その後はいろんなところにその論調が現れるんです。本当にトップの言うことに追随するような内容になってきている。沖縄が差別されているということを良く言うんですが、それは本土も被害を受けろと言っているんじゃない、そんなことじゃないと分かっているのに、朝日の記事は沖縄は差別されている、だから本土も痛みを分かち合うべきだという論調になっていく。こういうふうに見ると、単に器舎一人ひとりがどうのこうのではなくて、もっと大きな、新聞社としての流れというのがあるんじゃないかと、私は思っていますね。

―― 私は去年選挙前にね、じつは朝日から選挙制度関連で取材を受けたんですよ。民主党の定数削減に抗議声明を出したものですから。わざわざ朝日新聞社まで行って取材を受けたんだけども、記事になりませんでしたね。

坂本 やっぱり21世紀臨調にメディアの人が名を連ねているのを見ると、気になりますね。社長、会長、主筆、論説委員、全国紙正治部長ら総計70人もの人々が集まっているのです。それから船橋さんの話ですが、ある新聞のかなり重要なポジションにいる人を呼んで、東京9条の会を支える法律家9条の会、というややこしい名前で学習会をやった。いまのメディアの普天間基地問題についての論調などについて聞いたんですね。その質疑討論のなかで、船橋さんの話が出たんです。そしたら彼はこう言ってましたね。「安保マフィア」があるんだと。マスコミ界に78人くらい、アメリカとツーカーで専門家になっている集団がある。安保とか基地の話になると全部その人たちが取り仕切る、高度の専門化だということで周りから口を差し挟まないし、差し挟めないという雰囲気になっていると。

── 「安保マフィア」というのは適切ではないです。朝日にそういうしっかりしたシステムがあるわけではないと思いますよ。ただ船橋さんはジョゼフ・ナイ氏の親友だということですね。

坂本 93年に小選挙区制について朝日新聞は一斉にキャンペーンを始めました。そのときに自由法曹団はあまりにもおかしいというので、何度も意見書を出したんですが、弾劾とか告発ではなくて、かなり冷静に分析したものを持って、主要メディアに行きました。朝日新聞はちゃんと別室を用意してくれまして、3人の中枢幹部と1時間以上討論しました。朝日新聞はその2年前だったと思いますが、中選挙区制のもとでも自民党はもはや政権を維持できない状態である、政権交代は必然だという両面見開きの記事を書いている。

かつては小選挙区制は民意を曲げると言っていたのに、なんでこんなふうに変わったのかと私は聞いたんです。そのときの返事ですが、「今どき中選挙区制のもとで定数是正をすればいいなんて言っているのは日共だけでしょう。日共しか言わないことをなんで朝日が言えますか」と。それで私はこう言ったんです。「何党か何派じゃないんです。民意がどうなるかなんです。もし仮に共産党しか言っていないとしても、それが正しいか間違っているかの問題です。戦争中に侵略戦争反対を言ったのは確かに共産党しかいません。朝日新聞は戦争を賛美したことを強烈に自己批判したでしょう。何党しか賛成しないから朝日が言えないということは、朝日が正しいということならない。」でも、それで話は終わってしまいました。

 小選挙区制が通ってからたった1人だけ、メディアの自分たちの記事は間違いだったんじゃないか、埠頭に国民を煽ったんじゃないかという、署名入りの記事を書いた人がいます。毎日新聞の長崎さんという方です。でもこうした人は本当に例外でした。参議院で否決されたときのメディアは本当にひどかった。断固としてやれとみんな社説で書いた。テレビで久米さんも「こんなことをやるんだったら国会なんて何もできない」と攻撃しました。筑紫徹也さんは、どんでん返しで成立したときに、「社民党で造反して反対した人は自己批判すべきだ」と言った。

私はメディア駄目論とは思わないんです。記者で頑張っている人も知っているし、世論が変わればメディアも、たとえば9条の会についてまったく黙殺していたメディアが次第に変わりましたよね。だから変えていくには、やはり私たちの努力がいるんだし、投書ひとつであれ、努力すべきところはたくさんあるんだと思っています。

―― 裁判の記事では、弁護団にマメな人がいると、記者にレクチャーしています。

坂本 政治的でない冤罪とか公害とか、いわゆる人権問題は取り上げますね。政治的なのはなかなか載らない。それでも堀越事件のように、裁判事件は載るんです。ところが、政治の仕組みをどうするか、となると本当に載らない。

―― 私は財界は二大政党論ではないと思っているんです。小選挙区は1人ですが、確実に二大政党にしたいんだったら2人区にすればいい。二大政党を考えるならそうやったほうが効率的です。さっき、比例代表にすると政党しか出られなくなると言われました。私が1980年代の参院選の比例代表のあり方がいいのかなと思っているのは、あれは供託金が下がったせいもあってミニ政党とか訳の分からないのが候補者を出してそれなりに当選した。いまは供託金が高すぎるから、出たい人が出られない、がんじがらめに政党だとか宗教団体とか金のある化粧品会社とか、そういうところからしか出られない。供託金が下がれば誰でも出られて、当選するかどうかはそれこそ有権者が決める、という形にしたほうがいいと思っているんです。

坂本 供託金を下げるのは賛成です。こんな高い供託金は世界中でも日本だけでしょう。ただ供託金による縛りだけじゃなくて、一定の規模の政党でないと選挙活動でも車の使い方でもハンディキャップが大きいんですね。これもあらためるべきです。

もうひとつ、二大政党を本当に考えるなら2人区にすればいいというのは、全然気付きませんでした。けれど財界はこの間、一貫して二大政党にするマニフェスト選挙を求め続けていました。だから、やはり二大政党制論だと思います。つまり一報がダメになったときにスペアがあって、AがダメになったらBがあるというのは、アメリカ、イギリスの流れのなかでそれがいちばん典型的なモデルだと、それが歴史的に照明されたかどうかは別として、そういう固定観念が財界にあるんです。

―― 自民党がヨタヨタだから小選挙区にして、とにかく何百回選挙をやろうが自民党が勝つために小選挙区制にしたと思っているんですが。

坂本 1956年鳩山一郎内閣のときはそうだったと思います。しかし、94年のときは、財界は単純に自民党擁護ではなかった。その証拠というか、小選挙区制に最初は自民党は反対して、非自民の細川内閣が賛成したんです。財界は1政党が長く政権を独占して、金丸副総裁の金の延べ棒事件のような形で腐敗を深めていって、国民から大きな批判が起きるよりは、スペア政党同士で行ったり来たりする仕組みをこの時点では考えたと思います。だから二大政党制の実現だったのだと思います。

ただ小選挙区制はやってみたら、片方圧勝、片方ボロ負けの可能性があるんだね。それは多分日本のメディア状況とからんでいるんだと思います。イギリスとかアメリカはここまで極端なメディアの偏りはないんだと思いますよ。イギリスとかアメリカはこの形は敬虔していないと思います。日本の小泉内閣のときと昨年の総選挙のときのような片方のアッ法は世界的に稀な現象なんじゃないか。一か所あった。カナダは政権政党が3議席か5議席になって結局解散した、という話を聞いたことがあります。

今度の選挙はやってみなけりゃ分かりませんけど、どっちも勝たないとすれば、衆議院もまた引き続き解散して、衆議院に信を問うという形になるのか。衆議院では308という既得権益を民主党が維持しながら、参議院ではねじれ国会になるのか。公明党や場合によっては「みんなの党」なんかをくわえ込んでの民主党の参議院での多数が可能なのか。ただどうなっても、支配勢力の比例削減の策動は消えないと思います。どういう連立になるにしろ、国民の不満と要求は広がりますから、こうした要求をともに掲げてたたかう少数政党は結局は、邪魔だから消せという動きがつよまる危険があると思っています。

―― 基本的に参院選は中選挙区制、1人区が多いですけれども2人区もあれば東京では5人区もあったりするんで、少数政党がある程度確実に受かる。衆議院みたいな大きな差はできないのでは。

坂本 この間の参議院選挙でも、1人区で民主党は得票率を大きく上回る多数議席を取った。1人区では圧勝しているわけです。やっぱり1人区が民意を歪曲することになるのではないでしょうか。

―― 参院は完全小選挙区ではなくて、比例もあるんです。

坂本 比例があっても改選議席総数の4分の1の議席数しかありません。民意に反する虚構の多数になる可能性は参議院だって強いと思います。ただ今度はどっちもダメだから激勝ち・激負けにはならないと思っています。そうではなくて、民主党の参議院・衆議院の絶対多数がもし連動したときには、比例定数削減、国会法「改正」という怖い政治になるんではないでしょうか。

―― なぜ財界が二大政党制を求めるかといえば、単純にアメリカのマネだと思います。あるいはイギリスの。イギリスは今回コケましたけれども。

坂本 マネはしたくないですよね。アメリカの中間選挙の投票率はものすごく小さいでしょう、大統領選挙のないときの中間選挙では30%代、その少ない投票率のなかでも、富裕層の投票率が高いんです。日本でのワーキング・プアあるいはそれ以下の人たちの投票率は20%以下でしょう。つまり本当に貧しい人、もっとも政治を変えることに利益のある人たちが、自分の願いを託す政党がなく二大政党制のもとでは投票に行っていないということです。そういうアメリカのような仕組みに日本もなっては困るんだというふうに思っています。

 私は今日はみなさんに正直に、いろんな意見に対して考えるところを言いました。みなさん本当に、国会定数削減・比例削減で良いのかということを、身の回りの人と議論してみてください。簡単には広がらないことはよく分かっています。9条改憲反対の分かりやすさ、打てば響くような流れに比べて、これはそうはいかない。

なぜいかないかといえば、奥深くにある原因として、議員が本当に自分たちの仲間で、自分たちの要求のためにともに闘ってくれるという実感が、民衆的なレベルでは、まだまだ乏しいんだと思うわけです。つまり、自分の1票の値打ちは、平等でなければならないという要求が反戦・平和の要求に比べればまだ弱いと、私自身反省をこめてそう思うのです。もう一度「平等な1票」は基本的人権であり、民主主義の柱なのだということを、私たちがそれぞれにつかみ直す必要があるように思われてなりません。

それとの関係で政党と国民との関係についても、見直しをしなければならないことがあると私は感じています。政党は「われわれは正しいことをやるんだから私に1票を」と言うだけでなくて、人間的に平等に交流しあい、解け合う、結びあう努力がいるのではないでしょうか。

この間ある集会で政党代表としてのある人の話を聞いたときに、「私の政党はこれだけのことをやりました」、と言うから、「議席が少なくてもこれだけのことができる」という話かと思って聞いていたら、そうではなかった。「みなさんが要求を掲げて動いたから、一緒に私たちがやったからこれだけのことができたんです」「それを、みなさんとともに、もっと大きな規模でやりたい」と言われました。そこに何か大事なヒントがあるんだと思います。

今日は長い時間、熱心に討論していただき、本当にありがとうございました。ぜひ、これからも比例定数削減阻止、選挙制度の改革のためによろしくお願いします。

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