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「平権懇」☆関係書籍☆残部僅少☆

  • ●大内要三(窓社・2010年): 『日米安保を読み解く 東アジアの平和のために考えるべきこと』
  • ●小林秀之・西沢優(日本評論社・1999刊): 『超明快訳で読み解く日米新ガイドライン』
  • ●(昭和出版・1989刊): 『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』
  • ●西沢優(港の人・2005刊・5000円+税): 『派兵国家への道』
  • ●大内要三(窓社・2006刊・2000円+税): 『一日五厘の学校再建物語 御宿小学校の誇り』
  • ●松尾高志(日本評論社・2008刊・2700円+税): 『同盟変革 日米軍事体制の近未来』
  • ●西沢優・松尾高志・大内要三(日本評論社・2003刊・1900円+税): 『軍の論理と有事法制』

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2010/08/29

読む・読もう・読めば 84

あたご事件初公判傍聴記

823日、横浜地裁で、2008219日に起きたイージス艦「あたご」による漁船沈没事件の初公判が行われた。事件から2年半、「主因はあたご側」と認定した横浜海難審判所の採決から17か月になる。海難審判裁決は、衝突時の当直士官だった長岩友久・元水雷長の過失のみを事故の原因とし、海上自衛隊第3護衛隊群第3護衛隊(事故当時第63護衛隊)に安全教育の勧告をした。しかし検察は、長岩被告に加えて、前当直士官だった後潟桂太郎・元航海長をも起訴した。2人の被告は起訴求職中となっている。

公判日も暑かったが、傍聴券を求めて集まった人々は屋外の駐車場で待たされた。2人の被告は大勢のカメラマンが待ち受ける正面玄関を避けて裏口から入場したが、こちらにもカメラマンはいた。2人はダークスーツに灰色のネクタイ。取材陣は各紙とも若い横浜支局員が主力のようで、記者クラブに加盟していないマスコミに雇われて抽選に並んだアルバイト学生にまで、「どのような動機で傍聴を?」などとインタビューしていたのに苦笑。45枚の傍聴券に対して約5倍の競争率、幸いに私は抽選で当選した。

横浜地裁第6刑事部、業務上過失往来危険等平成21()715号事件。101号法廷。判事は3名で、秋山敬・裁判長、林寛子・裁判官、海瀬弘章・裁判官。10時開廷、午後4時過ぎまでかかった。起訴状の要点は以下のとおり。後潟被告は接近中の漁船の動きを正確に引き継ぐ注意義務を怠り、停止操業中と誤った申し送りをした。長岩被告は誤りに気づいた後も衝突を防ぐ注意義務を怠り漫然と航行を続けた。2人の過失の競合により漁船に衝突し沈没させたことは、業務上過失往来危険罪にあたる。また沈没した清徳丸の吉清治夫さん、吉清哲大さんを死亡させたことは、業務上過失致死罪にあたる。

起訴内容認否では2被告とも無罪を主張した。後潟被告「検察の航跡図は真実とまったく異なる。私は船乗りの常識に従って行動した。私の引き継ぎが長岩を混乱させたことはない。」長岩被告「衝突したことに間違いはなく同義的責任を感じている。しかし検察の主張する位置関係や航跡は虚報であり、悪意をもって表現されている。作られた過失で刑事責任を問われるいわれはない。」

検察側冒頭陳述は今村智仁検事による。以下は要点。漁船を右方向に見るあたご側に回避義務があった。後潟被告はレーダーで3隻の漁船を確認し、速力などを算出させる操作をしたが、速度と進路を示す矢印マークを見落とした。停止操業中と誤った引き継ぎをした時点での清徳丸までの距離は7.1キロ。これはあたごの航行指針で回避行動を開始すべき7.2キロ以内。見張りを引き継いだ長岩被告は漁船群の一部は航行中と気づいたが、清徳丸は停止操業中と誤認。91メートルまで近づいてから自動操舵止め、後進いっぱいを命令した。

弁護側は峰隆男主任弁護人以下、5名であたった。パワーポイントを使っての説明で、いかにも手間と金をかけている。海難審判で退けられた、清徳丸が2回にわたり右転したため衝突したという主張をあらためて証明する主張を行うため、高等海難審判所OBの宮田義憲氏の鑑定による、金平丸船長の証言を基にした航跡図を提出。また多数の証言を矛盾なく総合したという、3時点での清徳丸の「存在圏」という新しい概念でも説明し、検察側の主張する航跡とは異なるという。清徳丸が右転しなければ衝突せず、あたごの後方を横切ったはず、という主張である。

証拠提出では、検察側が遺族や漁協関係者の陳述書なども提出したのに対して、弁護側は小型漁船の船首がわずかな波でも振れることを証明する実験結果や、事故後のテレビ取材への各船長の証言ビデオも提出した。後者の映像は放送局・出演者の承諾を得ているのか、疑問だ。総じて見た目では検察側の主張に迫力がなく、被告側が健闘した。11月の結審までに全17回の公判が予定されており、判決は来春になると思われる。次回公判は921日。

いまや刑事裁判は公判前整理手続きにより争点が絞られており、今回は清徳丸の航跡と後潟被告の過失の有無に限って審理が進められる。法廷で艦長の責任が問われることもなく、海上自衛隊の責任が問われることもない。事件発生の原因は漁船群の存在を知りながら自動操舵のまま回避行動をとらずに突っ込んできた「あたご」にあると私は考えるが、それが常識ではないだろうか。東京湾に近づいたのに艦長は就寝中、見張りは雨を避けて甲板から艦橋に入っていたのも弛緩としか言いようがない。また事件の遠因として、ミサイル防衛で米国防衛まで担うようになったと自認する海上自衛隊の慢心があったと思うが、どうだろうか。

私たち平権懇は、事件発生6日後の08225日に「ミサイル防衛計画を中止せよ! 太平洋を平和の海に! イージス艦の漁船衝突事件に際しての声明」を発表し、0939日には毎日ホールで「あたご事件」を考えるシンポジウムを開催した。シンポ報告のなかで私は7点のあたご側の問題点を指摘した。1.見張りの不備 2.衝突回避をしなかったこと 3.救済の不備 4.通報の遅れ 5.証拠隠滅の疑い 6.情報隠し 7.安全対策がなかったこと。声明、シンポ記録ともこのブログに掲載した。以後、東京新聞の半田滋記者が著書『ドキュメント防衛融解』で当時の防衛省・自衛隊の内部事情を書いた。しかし重要な問題点を不問にしたまま、というよりも不問にすることを前提として公判が進むならば、法廷外での私たち市民平和運動の役割は小さくない。(2010829日)

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