読む・読もう・読めば 89
菅直人氏はもともとどんな外交・安保政策を持っていたか
菅直人氏の著作のうち最も読まれたのは、岩波新書『大臣』だろう。1998年に刊行され、2009年に増補版が出た。しかし彼の政策の原型を知るためには、1996年に光文社から出た『日本大転換』を読むのが早道だ。ここにはすでに「最小不幸社会」「小さな中央政府と充実した地域福祉」「総理補佐官の法制化」などの言葉が見られ、政治家としてのライフワークを「行政改革と土地政策」と規定している。高杉晋作の「人生唯一度」を座右の銘とし、「現代の奇兵隊」をめざすとも書いている。
96年といえば、菅直人氏は橋本内閣の厚生大臣だ。ここでは「霞ヶ関を変えていきたい」と熱く語っているわりに、外交・安保政策に割くページはごく少なく、その内容も抽象的だ。それでも次のような記述は言質として重要だろう。「アメリカを通じてのみ考えるのではなく、アメリカを含む世界の国々と、どういう関係を結んでいくか、自立した思考を持ち、あらたな外交方針をつくる」。「核独占クラブの国連常任委員国入りは国益に反する」。「いわゆる集団的自衛権も、憲法が認めていない。私は、この問題で憲法を変えるべきではないと思う」。
もうひとつ。菅直人氏は2001年11月号『軍縮問題資料』誌のインタビューで「日本の安全保障と憲法」を語っている。当時、民主党幹事長だった。読んでみると、なんとも歯切れが悪い。少々強引にまとめてみると、安保は「トータルで見れば日本にはプラスになった」が、「アメリカに結果的にすべて依存し追従する形の外交方針」になった。「21世紀、日本がアメリカともアジアともきちんと向かい合い議論して位置関係を決めていくベースは必ずしも十分にできあがっているとは言えない」。「アジア地域、太平洋地域の広い意味での安全のために協力するところは協力する、もしくは協力しているという意識を持てばいい」。
対米追従が問題だとは分かっている。けれどもどのように独自の戦略を展開すべきか具体像が描けない。菅直人氏は有能な安保・外交ブレーンを得られず、15年前から進化しないまま、いま外に向けては「日米同盟の深化」を語り、内に向けては「菅」内閣のクサカンムリが取れていっているように見える。それが彼の最大不幸か。高杉晋作は維新前に没し、長州奇兵隊は官軍のなかに埋没していったが。 (2010年11月14日)
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コメント
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菅首相が「有能な安保・外交ブレーンを得られ」ないのは、紹介された文章を見る限りでもご自身がこの問題を深くよく考えていないからではないでしょうか。助言してもいつ裏切られるか、あいまいにされるかわからないようでは、誰が近づくでしょうか。逆に外務大臣である前原誠司は、自分こそが専門家と自負しているようで、中国ともロシアとも関係悪化の道をひた走り日本の未来を一層暗いものとさせています。いま前原をやめさせないと。
投稿: 小幡利夫 | 2010/11/16 11:08