読む・読もう・読めば 95
ケルトの虎は夢か
1922年に独立したアイルランド(愛蘭土)の英国に対する恨み辛みは、たとえば現在は歴史博物館のようになっているダブリンのキルメイナム監獄の展示に現れている。天安の大韓民国独立記念館ほど直截的ではないけれども。日常的な話者が数パーセントなのに第一公用語をゲール語(アイルランド語)、第二公用語を英語にしているのも、そのためだ。けれどもアイルランドは悲しみの島であって、独立運動に敗れ、饑饉に苦しみ、海外に出た移民は残った人々より多い。
そのアイルランドが1990年代半ばから急激な経済成長を遂げ、古代のケルトの民の名から「ケルトの虎」と呼ばれたことは、なんとなく嬉しかった。しかし。1999年に欧州共通通貨ユーロを採用し、英国がこれに参加しなかったため、ユーロ英語圏となったアイルランドに米国企業が進出した。輸出入額も大西洋を隔てた米国に対するほうが隣国の英国を追い越した。そして。ここ数年の不動産バブルがはじけて、いまやアイルランド経済は自力での回復が不能になっている。あの純朴だった人たちはどうしているのだろう。
ダブリンのカルメル会教会聖堂には聖ヴァレンティヌスの聖血を納めた箱が置かれている。1827年に再建されたとき、ローマ教皇から贈られたものだ。ヨーロッパ大陸部でキリスト教が壊滅に近かった中世初期にカトリックの伝統を守り大陸に再輸出したのはアイルランドだったから、ふさわしいプレゼントであったかもしれない。『カンタベリー物語』の著者チョーサーのおかげで恋人たちの守護者として有名なった聖ヴァレンティヌスは、269年2月14日にローマ皇帝クラウディウス2世の迫害で殉教したと伝えられるが、そしてそのことがバレンタイン・デーの起源とされているが、この聖者の実像は明らかではない。だから、すでにカトリック聖人暦に聖ヴァレンティヌスの日はない。
昨今の日本ではバレンタイン・シーズンのチョコレート売上額は500億円を超えるのだという。これは今年1月のアイルランドの財政赤字と同じくらいの額だと思う。 (2011年2月14日)
« イージス艦「あたご」事件の公正な判決を求める 2.26横浜集会 | トップページ | イージス艦「あたご」事件の公正な判決を求める 2.26横浜集会 終了しました »
「大内要三 コラム「読む・読もう・読めば」」カテゴリの記事
- 読む・読もう・読めば 127(2013.06.12)
- 読む・読もう・読めば 126(2013.04.06)
- 読む・読もう・読めば 125(2013.02.11)
- 読む・読もう・読めば 124(2012.12.15)
- 美濃部革新都政への道をふりかえる(2012.11.22)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
« イージス艦「あたご」事件の公正な判決を求める 2.26横浜集会 | トップページ | イージス艦「あたご」事件の公正な判決を求める 2.26横浜集会 終了しました »


“ウイスキーはお好きでしょ・・”はコマーシャルだが。・
ウシュク・ベーハ。ゲール後で「生命の水」を意味するこの言葉がウイスキーの語源。
バーに通うほどの人でもアイリッシュ・ウイスキーにはなじみは薄いだろう。少し古い統計だが2008年の輸入量はアイリッシュは100キロリットル弱で、スコッチの8800キロリットルやバーボンの3800キロリットルと比べ物にならない。
筆者のお勧めは「ジェイムソン」というブランド。かつてアイルランド西部のゴールウエイ市を訪問したときに現地で知った。飲み口すっきり、まろやかでフルーティな香り、いつまででも飲んでいられる。スコッチのように麦芽を泥炭で燻蒸せず、3回蒸留する伝統的な製法に秘密があるようだ。
日本でたくさん輸入すれば、かの地の人も喜ぶかもしれない。ただCMの「ハイボール」はゴメンだ。
投稿: 小幡利夫 | 2011/02/16 16:41
訂正いたします。
誤 ゲール後
正 ゲール語
投稿: 小幡利夫 | 2011/02/23 14:57