読む・読もう・読めば 101
被災と憲法
東日本大震災の復興が進まない。被災から2か月余を経て、いまだに避難所で不便な生活を強いられている方々がたくさんある。ボランティアで力仕事をするだけの元気もなく、専門知識もなく、ただ物資や義援金を送るだけしかできないのがもどかしい。5月3日の憲法記念日前後に、憲法学者の談話がいくつか新聞に掲載された。こういう事態のもとで憲法学者は何をしているのだろうと不思議に思っていたので、興味深く読んだ。
上智大学の高見勝利さん(5月2日付朝日)。「憲法に盛り込まれた生存権は、当時衣食住が不足する中で国の理念を掲げたことで、戦後復興を果たす役割を担った。再び国民ががれきの中にいる今だからこそ、生存権が光り輝いているのではないか。」なるほど、その通り。名古屋大学名誉教授の森英樹さん(5月1日付赤旗日曜版)。「憲法は13条で、この国に生き暮らす人々すべてが『個人』として尊重され、人々の『生命・自由・幸福追求の権利』こそすべての人権の基底であると定めています。」「憲法11条・97条は『この憲法が保障する基本的人権』は『現在』だけでなく、『将来』の人々にも保障されるべき『永久の権利』と訴えています。」そして「軍事費削って復旧・復興にまわせ」の軍復運動が必要、と訴える。なるほど、その通り。
東京大学の長谷部恭男さん(5月2日付朝日)。「憲法はドラえもんのポッケではない。生存権をどこまで実現すべきかは、憲法からはなかなか導き出せない話。」「憲法でここまで絶対必要という話にはなかなかならない。そのために国会があるのではないか。」ん? いざというときに指針にならない憲法とは何だろうか、憲法をその程度のものと認識する憲法学者とは何だろうか、と考え込んでしまう。ドラえもんチャンネルHPだって、開けばすぐに「どうか元気を出してください。あなたはけっして一人じゃありません」と、「被災地。被災者のみなさまへ」のメッセージが目に入るけれども。 (2011年5月14日)
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コメント
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安倍が政権を投げ出してからは、憲法改正を目指す政界の動きは目立っていなかった。しかし、最近見過ごせない動きが起こっている。マスコミは東日本大震災と福島原発問題に集中し、小さな記事を追いかけなければならない。
5月9日、2007年以来休止中であった民主党憲法調査会会長に前原誠司前外相が就任した。彼が一貫して集団的自衛権を是認する改憲論者であることは周知の事実。一方自民党は来年がサンフランシスコ条約発効(いわゆる独立)60周年にあたることを目標に自民党憲法改正原案をまとめることを今年2月に決めている。
さらに憲法96条の改正一点に目的を絞り込んだ民主・自民などからなる議員連盟を今月中に設立することが企まれている。憲法改正の発議の条件を、衆参各議院の総議員3分の2から2分の1に緩和しようと。本丸を攻める前に堀を埋めようとするものだ。
憲法“学者”にも様々な人物がいるようだ。大宮法科大学院大学と姉妹校にあたる平成国際大学教授に高乗正臣という方がいる。今年5月3日「新しい憲法をつくる国民大会」なる集まりで講演し、「国家緊急権・非常事態規定」を憲法に新設すること(1933年ドイツ国会議事堂放火事件直後にヒットラーが非常大権を得たことを想起するが)、ならびに「憲法9条の改正」を訴えたそうだ。“憲法学会”理事長ということだが、どんな“学会”なのか。
という風にコメントの原稿を書いていたら、本日(5月18日)参議院で憲法審査会運営手続規程が可決・制定されたというニュース。制度の上では、いつでも改憲に着手できるということだ。使わせてはなるまい。
投稿: 小幡利夫 | 2011/05/18 15:15
5月18日の参議院では、社民党と共産党が反対。他に民主党の5名が棄権した。記しておく。大河原雅子(東京選挙区、生活者ネット出身)、相原久美子(比例、自治労出身)、今野東(比例、元衆院議員)、田城郁(比例、JR総連出身)、有田芳生(比例、ジャーナリスト)。今野、田城両氏はブログで「憲法9条を守ります」と明言している。
投稿: 小幡利夫 | 2011/05/22 14:42