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『平和への権利を世界に』を読む
国連人権理事会で「平和への権利宣言」をつくる運動が進められているという。スペインの法律家たちが2006年に始めた運動で、08年以降毎年、同理事会で決議が採択されているが、米国、EU諸国、日本は常に反対している。人権理事会で扱うべきテーマではない、という理由で。私たち「平和に生きる権利」をまさに人権問題として捉えてきた者として、日本国憲法前文に「平和のうちに生存する権利」が明記されていることを誇りに思う者として、日本政府のこの態度は残念だ。
「平和への権利」運動を紹介しているのは、この5月3日付で刊行されたばかりの笹本潤・前田朗編著『平和への権利を世界に』という本だ。かもがわ出版、本体1500円。スペインからの呼びかけ、国際的なNGOの運動、そして日本での平和的生存権をめぐる学説・判例が簡潔に記述されている。
「平和への権利」right of peoples to peaceは、「平和に生きる権利」=「平和的生存権」right to live in peaceとは微妙に違うし、「人間の安全保障」human securityとも違う。これらの概念はそれぞれの起源から、あるいはその実現をめざす運動の経験から、少しずつずれていて当然だ。けれども国家間の戦争が廃絶される時代に、国家の枠を超えた人々の運動のなかで、もっと交流があって良いと思う。
1973年9月11日のチリ・クーデタで殺された歌手、ビクトル・ハラの作品El Derecho de Vivir en Pazはまさに「平和に生きる権利」であって、日本ではソウル・フラワー・ユニオンほかが歌っている。ハラがキューバを歌い、ホーチミンを歌っているのは、「平和に生きる権利」の主張が受動的でも軟弱でもないことを知らせてくれる。 (2011年5月29日)

