読む・読もう・読めば 106
沖縄の前衛党
1972年の沖縄復帰後に日本共産党に合流した人民党からは、1985年に公式の党史『沖縄人民党の歴史』が刊行されている。日本共産党の側からは、論文集『沖縄・小笠原問題と日本共産党』が1966年に刊行されており、またこれを著者略歴欄で「著書」と書いているところの、1960年代にいたるまで日本共産党の沖縄対策責任者だった高安重正は、『沖縄奄美返還運動史(上)』を1975年に刊行している。しかし復帰前の沖縄人民党と日本共産党との関係は、いまひとつ明らかでない部分があった。最近明らかにされた資料と聞き取りを駆使して、なるほどそうだったのか、と納得させる本が出た。1968年横浜生まれだから復帰運動を経験していない世代の研究者、森宣雄さんの『地のなかの革命――沖縄戦後史における存在の解放』だ。「地」には「つち」とふりがながついている。
これは題名どおり地のなか(地下)で活動し、地のなかに消えていった党員たちの物語だ。そこには東京の沖縄青年同盟で活躍したのち沖縄に帰って人民党を躍進させた上地栄(「亀さんの背中に乗って本土へ」の演説だけが語り伝えられる)、奄美から派遣されて沖縄に非合法共産党を組織した林義巳、瀬長亀次郎の追放中に非合法共産党を維持し「島ぐるみ闘争」を準備した国場幸太郎など、まことに魅力的な、若い活動家たちが登場する。この時代の瀬長の柔軟性もまた魅力的だ。人民党は合法政党であり、共産党は非合法で地下にある。そして沖縄の共産党は日本共産党の地方組織として公認されながらも党中央とは絶妙な不即不離の関係にあり、たとえば50年代日本共産党からの武装闘争方針おしつけなどは拒否する。軍政下の那覇と半独立の東京は遠かった。
読み進むうちに、「国家のむこう岸への旅路」「越境する名前なき前衛党」などいう文学的な表現がやや鼻につき、現代史であるがゆえに現存者の人権を考慮して明記できない部分があることと重なって、隔靴掻痒の部分は残る。けれども「なるほど」の部分が多かったことを幸いとする。続いて、同じ著者による60年代復帰運動の腑分けを期待したい。
(2011年7月29日)

