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「平権懇」☆関係書籍☆残部僅少☆

  • ●大内要三(窓社・2010年): 『日米安保を読み解く 東アジアの平和のために考えるべきこと』
  • ●小林秀之・西沢優(日本評論社・1999刊): 『超明快訳で読み解く日米新ガイドライン』
  • ●(昭和出版・1989刊): 『釣船轟沈 検証・潜水艦「なだしお」衝突事件』
  • ●西沢優(港の人・2005刊・5000円+税): 『派兵国家への道』
  • ●大内要三(窓社・2006刊・2000円+税): 『一日五厘の学校再建物語 御宿小学校の誇り』
  • ●松尾高志(日本評論社・2008刊・2700円+税): 『同盟変革 日米軍事体制の近未来』
  • ●西沢優・松尾高志・大内要三(日本評論社・2003刊・1900円+税): 『軍の論理と有事法制』

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2011/08/09

7.29 ヴァインさんの話を聞く会 記録②

●北村
では、会場の方からご質問を受けるコーナーに移りましょう。
●会場から
 有意義なご講演、ありがとうございました。聞いていて思った感想、質問がありますのでさせていただきます。
 まず、こういう国が中国や北朝鮮の人権について言う資格がそもそもあるのかな、と思いました。あと、米軍基地の位置ですね、日本の原子力発電所にきわめて似ているなという印象を持ちました。
 今日は軍事の話だったので本筋からはちょっと外れると思うんですが、いまあまりニュースになっていませんが、TPPの問題が日本ではあります。これは経済的な問題ですが、アメリカはとことん外国を支配することにばかり興味があるのかな、と強く思ったんですが、それがまったく変わっていないという印象を持ちました。どうでしょうか。
●ヴァイン
 TPPについてどのポイントをおっしゃっているのか良く分からないので、もうちょっと詳しく、あなたの意見も言っていただいたらと思います。
●会場から
 僕もそんなに詳しいわけではないんですが、TPPは農業問題のことばかり言われているんですが、要するに日本の経済の植民地化がたぶんこれの本質だと思っています。ですから軍事の植民地化、ディエゴガルシアと非常に似ている。今もってイラクで行われていること、アフガニスタンで行われていること、そういうことも。そういう印象を持ったということです。
●ヴァイン
 非常に面白い質問をありがとうございました。何人かの方にご質問をいただいてから、まとめてお答えしてもよろしいでしょうか。
●北村
 では手の挙がっている方。
●会場から
 アメリカの基地がいかに多いかが地図で分かりました。最近聞いたところによると、キューバのグアンタナモ基地を縮小していくということです。それの代わりにディエゴガルシアにテロ容疑者を移すことを考えているのでしょうか。
●会場から
 札幌から来ました。2つほど。
 北海道はアイヌがおりまして、国際先住民年とかありまして、けっこう活発に私たちも行事をしています。国連のやり方がいいということではないんですが、そういう国際機関に訴えることはできないのでしょうか。軍事とからむと国連なんかは難しいのかなということがひとつ。
 それから、イギリスのトライデント・プラウシェア2000の人を前にお招きしたことがあります。アンジー・ゼルターさんという方ですが、スコットランドの核施設をハンマーで壊して無罪になったんです。というのは、インドネシアの東ティモール弾圧を援護に行くための原子力潜水艦の施設を、壊したのは悪いけれどもそれを防いだということで、3人の女性が無罪になったんですね。トライデント・プラウシェアは「剣を鋤に変えよ」という行動の会ですが、イギリスではかなり頑張ってやっているところです。そういうところは動いていないんでしょうか。
●ヴァイン
 最初のご質問ですが、確かに米国が他の国の人権蹂躙に対して批判する資格はないと思います。TPPの話も出ましたけれども、私も関心を持っている問題です。軍事と経済の関係についての問題です。私の本にも書いたのですけれども、第二次世界大戦以前と以後では帝国主義の形が変わった。軍事的に植民地を抑えるよりも、経済・政治という道具による帝国主義支配になってきているのではないかと思います。それでも地図をごらんになって分かりますように、軍事の重要性が減っているとはいえ、米国の基地は世界に1000以上あります。ですから戦後の帝国主義支配のなかでも、軍事基地をどこに置くかはやはり重要な問題であり続けています。
 日本でも世界でもそうなんですが、米軍基地を置くことでその国、あるいは周辺の国に政治的・外交的圧力をどのようにかけているか、これは非常に興味を持って見ています。たとえばそのなかのひとつに、自由貿易協定にサインさせることもあるのでしょう。交渉の場になると米軍基地が、やりとりの道具になるかもしれません。
 日本を担当していたある米国の高官と話したことがあるのですが、「私は日本に交渉に行くときに、沖に空母が浮いていると非常にやりやすい」と言っていました。空母はもちろん海上の米軍基地です。ですから米軍基地の存在がその国、その周辺国の経済的・政治的な交渉にどのような有利な影響を与えているかという研究をしてみたいと思っています。米軍基地があることで間接的に政治・経済を支配している、その様子を具体的に研究するということです。
 グアンタナモとディエゴガルシアの話に移ります。
2001年9月11日、9.11の直後は、ディエゴガルシアもグアンタナモもテロ容疑者収容所として考えられていました。9.11の直後はその2つのうちグアンタナモが選ばれて、そこが収容所になりました。けれども2006年以降、米国政府も英国政府も認めているように、最低2人のテロ容疑者がディエゴガルシアに収容されています。米国軍部の高官の発言によって、他にもディエゴガルシアに容疑者がいることが分かっています。他の証拠によると、8人から10人ぐらいは収容されていると考えられます。他の人によると、ディエゴガルシア島のなかではなくて、たとえば港とか沖合の船に収用されているという話もあります。真相がなかなか分からない理由は、米軍の兵士でない限りディエゴガルシアには行けないからです。赤十字さえも行けません。ジャーナリストも行けません。20年間もそのような状況が続いています。
先住民族の問題に戻ります。チャゴシアンは国連で先住民族として認められました。非常にそれは助けにもなっています。それでも国連全体で話題にするためには、一国が提案しなければなりません。しかしどこの国もそれを提案していないのです。
市民運動については教えていただきたい部分もあるんですけれども、私のいまの研究のメインは、米軍基地に反対する運動とその発展についてです。
●会場から
 3点うかがいます。
ひとつは『ワシントン・ポスト』が1975年に社説でこれを取り上げたとき、圧力がかかって発表の時期を遅らせたというような話がありました。実際に強制移住が終わるまで発表しなかったのか。それから、この社説以外にも『ワシントン・ポスト』は継続してこの問題を追及しているんでしょうか。それから、『ワシントン・ポスト』以外の新聞とか雑誌も、この問題を取り上げているんでしょうか。
 もう1点は、アフリカのジブチに日本の自衛隊が基地を持っているという話があるんですが、ジブチは「アフリカの角」の付け根にありまして、紅海の入口でもあって戦略的な要衝だと思います。米軍がアフリカに基地を強化しているという話がありますが、米軍もジブチに基地を持っているんでしょうか。もし持っているとすれば、自衛隊との関係についてもお話しいただければと思います。
 3点目は、国際人権裁判所に訴えているというお話がありましたけれども、その見通しとか、あるいは先ほど国連では一国の政府が取り上げないと取り上げられないというお話がありましたけれども、国際人権裁判所ではそういうことはどうなっているのかということをうかがいたいと思います。
●会場から
 今日は興味深いお話をありがとうございます。1点だけうかがいたいと思います。ディエゴガルシアではチャゴシアンが自分たちの島に戻ろうということで運動をしておりますけれども、沖縄では基地を返還してほしい、自分たちの土地を自分たちに戻してほしいという根強い要求で運動もかなり高まっています。私が見ているところによると、どうも日本政府が沖縄を裏切っているような気がするんですね。結果的に現在、日本政府がアメリカに従属しているから今の沖縄の基地返還がうまく進んでいかないんだと思うんですけれども、どういうふうにお感じになっていらっしゃるか、教えていただきたいと思います。
●会場から
 お話ありがとうございました。私の意見と質問なんですけれども、アメリカの市民というのはアフガン戦争とかイラク戦争のことには関心があるし、退役軍人はたくさんいるけれども、海外の米軍基地のことはほとんど知らない。逆に日本とか韓国とかドイツに住んでいる人たちは、米軍基地のことは良く知っているけれども、イラク戦争とかアフガン戦争に対する関心はどんどん低下してきている、と私個人としては思っています。軍事主義にはいろいろな側面があるので、それをつなげて考えることが必要だと思うのですけれども、具体的な私からのサジェスチョンとしては、アメリカの退役軍人の人たちと、海外でアメリカの米軍基地によって被害に遭った人たちが具体的に交流を進めて、その人たちの話を私たちなりアメリカの市民が聞く、というような動きが必要だと思います。それは軍事主義というものをひとつの全体の仕組みとして捉えるために必要だと思うんです。
 質問がひとつありまして、2009年の3月にワシントンD.C.で海外基地に関する市民の会、国際会議がありましたが、その後アメリカ国内の反戦平和運動のなかに、海外基地に関する関心というのはどうなっているのか、というのが質問です。
●ヴァイン
 皆さまの質問もコメントも非常にすばらしいです。私の今後の研究の方向性にもヒントを与えて下さいました。
 まず、『ワシントン・ポスト』と米国政府の問題です。圧力というのは1960年から65年にかけてなされました。チャゴシアンに関する報道はこの間全くありませんでした。1975年に『ワシントン・ポスト』に記事が載ったのですけれども、たまたま『ワシントン・ポスト』の記者がモーリシャスに、問題のことは知らずにホリデイとして行ったときに知ったことです。悲惨な状況をその記者が書いて、それが載って、問題になったのですが、残念なことに1975年に米国国会で1回だけヒアリングが行われて、その後何も起こりませんでした。メディアの関心が非常に低かったのが70年代から90年代の様子です。
 でも2000年になって、英国の裁判所でチャゴシアンが勝利を収めたときに、国際的な関心が爆発的に大きくなりました。それは英国メディアであって、米国ではまだまだメディアの関心も低いです。
 ジブチの質問、どうもありがとうございました。米国は世界中にある在外基地の95パーセントを支配しています。その他はフランス、ロシア、中国、そして日本が外国に基地を造っています。私の理解ではジブチの日本の基地は、つい最近完成したと理解しています。米国はジブチにかなり大きな基地を持っていまして、自衛隊はその一部に駐屯しています。米国の政府高官が日本の政府高官に、ジブチに日本の基地を造ったらいいと奨励したと聞いています。
 それを見ても、米国が軍事費があまりにも大きくて経済的に苦しいので、日本や韓国に対して、軍事費をもっと増やして軍事活動をもっと増やして、アジアで軍事活動をもっとさかんにするように勧めているように思えます。もしよろしければ、皆さんからジブチの自衛隊基地についてどう思うのか、戦後初めて日本の基地が海外にできたことについてどう思うのか、知識と意見をお聞かせいただければと思います。
 ヨーロッパの人権裁判所の件に移ります。非常にそのプロセスがゆっくりで、判決は昨年出るはずだったんですけれども、今だに出ていません。ヨーロッパの人権裁判所は一国からの提案がなくてもチャゴシアンの人たちが訴えることができますが、国際裁判所に持っていくためには一国の提案が必要になります。このような件を裁判所が扱いにくくしているのは、たぶん2つの理由があります。ひとつは帰還の権利は世界のいろいろな国が抱えている問題だからです。もうひとつは補償問題があるからです。
 誤解があるかもしれませんが、沖縄の地主に土地を返還すること、米国の基地をなくすことを邪魔している日本政府の役割というのは、非常に大きいと思います。米国が何かをやりたいときに、日本政府と英国政府は似たようなジュニア・パートナーの役割を果たしています。汚い部分を英国政府、日本政府がやっているのではないか。
 いま思いだしたのですが、チャゴシアンと沖縄の大きな相違があります。チャゴシアンは自分たちが苦しんだ末に、いつか帰還したい、補償が欲しい、というのが主な要求です。帰還と補償についてはチャゴシアンはみな一致しているのですけれども、米軍基地をそのまま置くべきか、誰がそこで主権を持つべきかについては、意見が割れています。ディエゴガルシア基地の労働者は、元の島民はそこで働くのは禁止されていて、その代わりにフィリピンやスリランカ、モーリシャスから人を連れてきています。チャゴシアンは赤貧ですので、島に帰ったとしても豊かな生活ではない。だから米軍基地で働くほうが豊かになると考える人たちもいます。
 3人目の方のご質問です。確かに米国人は海外の米軍基地について知らない。米軍基地の隣に住むことがどんなに大変かも知りません。エクアドルにも米軍基地があって、長いこと借地協定があったのですけれども、それを打ち切ったとき、エクアドル大統領がまさにその点を指摘しました。彼は言いました。「私たちが米軍基地の借地協定を更新するとしたら、ひとつ条件がある。エクアドルの基地をマイアミに造らせてくれるなら、米軍基地をエクアドルに置いたままでもいい。」そのようなことを考えることもできないのが米国市民です。
 私は新しい本を企画していますが、それは米軍基地のネットワークに関するものです。そこでは外国の基地がある生活というのはどんなに嫌なものかを、米国市民に知らせたいと思います。いろいろな問題があります。環境、健康、安全性、そして犯罪に巻き込まれる危険性、とくに女性がレイプされる危険性などです。もっと複雑な社会的・経済的な側面、とくに米軍基地があることによる平和と安全への影響についても書いていきたいです。米軍基地が必要だと考えている人たちは、米軍基地があるからこそ世界が平和なのだと信じています。でもその主張をがんばって分析していきたいと思います。
 2009年に開かれた国際会議は私も主催者のひとりですが、非常に良い結果をもたらしたのではないかと思います。日本からも韓国からも大きな代表団が来ましたし、他にも6カ国から人が来ました。会議自体は非常に盛り上がったのですが、米国社会に与えた影響のちいささに非常にがっかりしました。200人ぐらいが参加したのですけれども、その人たちには影響を与えたにせよ、その他には影響をこれっぽっちも与えられなかったのではないかと思ったこともありました。
 しばらく経って分かったのは、実際に参加した人たちには仕事場でも生活の場でもずいぶん影響を与えたと。そしてこの夏になって、米国の上院がその会議で使われた資料、半話の内容を材料にして、経費節減のために、世界の米軍基地をもっと閉鎖すべきだと主張したのです。やはりこの夏、米国のジャーナリストが同じような記事を書いたのですけれども、その材料は2009年の会議でした。米国がほとんど破産状態になっている今になって、やっと海外の米軍基地を閉鎖するという討議が始まったわけです。
 私も記者でもあり研究者でもあるわけですが、今やっていることがすぐに結果を出すわけではない、けれども、いつか意外なところから結果が出るかもしれない。これはずっと心に留めるべきことだと思います。ですから先ほどの話の中で、退役軍人と基地周辺に住むたちとの交流、それを始めるときにも、このようなことを考えれば良いと思います。
●北村
 最初のご質問であった、『ワシントン・ポスト』は継続的に報じているのか、他のメディアはどうか、という点はいかがでしょう。
●ヴァイン
 米国に「シクスティ・ミニッツ」というテレビ番組がありまして、政治にも影響を与えるような重要な番組です。この番組でチャゴシアンの問題を2003年に取り上げました。同じ2003年にはイラクへの攻撃が始まりました。チャゴシアンの番組は完成してもすぐには放映されずに、結局放映されたのは6月でした。米国では夏の休暇でみなビーチに行きますから、あまりテレビは見られないときです。番組が完成したのは2003年の初めだったのですが、そのころはまだイラクを攻撃をするかどうかという時期です。6月は、攻撃が始まった後です。もし完成してすぐ放映していれば、イラク問題に影響を与えてしまう恐れがあって、ブッシュ政権を刺激しないように放映を遅らせたと考えられます。
 その他はメジャーな放送局ではほとんど報道されていません。ひとつ、公共ラジオ局で流されたことはありました。メディアで取り上げられないので私は、これを研究して皆に知らせなければ、というモチベーションが上がりました。
 私の本『アイランド・オブ・シェイム(卑しめられた島)』が、少しでもチャゴシアンの運動の力になればと思っています。日本語版はまだ出ていません。これから出る本は、日本語だけでなく世界中で翻訳されたらいいなと思っています。ここに参加されている皆さんも、ぜひチャゴシアンの話を知り合いの方に広めてください。口コミが運動を広めてきたわけですから。私がやっている非常に小さな運動ですが、印税はすべてチャゴシアンに寄附しています。英語を読める方、英語の読める人を知っている方は、私の本を買っていただけたらそれがチャゴスの人たちを支援することになります。自分の本の宣伝をするのは恥ずかしいのですが、その利益を自分が得ているのではなくて、チャゴスの人の利益になるので、ここで宣伝させていただきました。アマゾン・ドットコムをよろしく。
●北村
 アマゾンで簡単に買えますから、英語のできる方はぜひ。
 2番目の方から、沖縄の基地問題で日本人が裏切っているのではないかという質問がありました。さっきのお答えのなかで、英国も日本もアメリカのやりたい汚いことを請け負ってやっているという話がありました。日本の沖縄基地問題は、いわゆる本土、沖縄以外のところに住んでいる日本人が沖縄のウチナンチューの痛みが分からない、この問題を自分のものとして感じていない、そういう意味で日本人が沖縄の人たちを裏切っている、そういうことだと思います。そのへんについて、もし良かったら教えてください。
●ヴァイン
 非常に重要で貴重なご質問です。私の本の狙いも、それを読んだ人が、自分がチャゴシアンだったらどう感じるだろう、自分が沖縄の人だったらどう感じるだろうと、その人の身になって考えやすいように書いています。1冊目でも2冊目でも、狙いとしては、私たちの生活はすごく遠くの人の生活とかなり直接につながっているということです。例えば私が税金として払うお金がチャゴスの人の強制退去、帰れない状況を長引かせている。私が払う税金が、沖縄の人を苦しませている。それはお金の問題だけではなくて、人としてのつながりについても書いていきたいです。ですから、地球の裏側の人と、同じ人間としてつながっているということです。
 それが米国のメディアの罪なところで、メディアの人もそこで報道されたことを読む人も、米国市民は地球の裏側に住んでいる人に何が起こっても自分たちには関係ないと思いがちです。それは悪循環で、知らないから気にかけない、気にかけないから知ろうとしない。その悪循環を断ち切りたいと思っています。
●北村
 結局、われわれ本土に住む者は、沖縄のことが分からないから自分のこととして認識できない。まだ知らないでいる。そういう意味で、今日はここにいる人はディエゴガルシアのこと、チャゴシアンのことが分かったわけですから、それを口コミで知らせていくことが必要だと思います。
 先ほど逆に聞かれたジブチの基地の問題です。「週刊金曜日」は、これは初めての自衛隊の海外基地であるということで批判的に報道していますが、日本のメディアでは残念ながらほとんど報じられていません。本格的な基地というような表現をとっていません。ですから大半の日本人は知らないというのが現状です。これをどう思いますか、と聞かれましたので、どなたかに語っていただけたらと思います。
●会場から
 ジブチの基地のことについて詳しいというわけではないんですけれども、とても悲しい出来事だなあというふうに思っております。今日のお話の感想も含めてなんですけれども、チャゴシアンのような少数民族の人たちが基地によって追い出されたり、人権を奪われていることについて、研究しておられるアメリカの方がおられるということに、とても励まされました。
 基地の問題を考えるときに、日本の中でも基地で利益を得ている人と、それで苦しんでいる人といるし、それからアメリカというひとつの固まったものではなくて、やっぱり現地でも貧しいがゆえに軍人にならなければいけない人もいて、それで家族から離れて基地で楽しい生活をしているわけではない、そういう意味でひとつの国の中でもそれで利益を得ている人と辛い思いをしている人がいて、辛い思いをしている人たちがつながっていく方法を、これからいろいろ考えたいなあと私は思っています。
 ジブチの問題ですけれども、日本で海賊対処法ができました。日本の商船が積荷を奪われるような危険があってはならないというので、初めてアフリカに日本の軍隊を送ったわけですけれども、その時からずっと心配していました。それがひとつの布石になって、そこを守るために日本も、それで利益を得る人たちのために、基地を造るような国になってしまったんだなあと。絶対に阻止しなければならないことだと思い続けてきました。海賊対処法ができたときに、日本が外へ出る第一歩だなあと思った、その延長線上にあって、これは決して日本だけではなくて、アメリカからも示唆をされ、ヨーロッパ諸国からも示唆をされて、一緒にやっていることだと思います。どんどん軍事力で日本も力を外に出して行こうとすることについては、日本の多くの平和を愛する人は反対しています。
●会場から
 デービスさん、今日は貴重なお話をありがとうございました。ジブチの基地に関して私が初めて知ったのはもう2年ぐらい前でして、だから「週刊金曜日」もずいぶん遅いなあと思ったんですけれども、どなたかのウェブサイトか何かで見たんです。本来ならば海外に基地を造るというのは国会を通してやらなければいけないものだったのに、これはジャーナリストの方もご存じなかった交換公文という、外交上のウルトラCを使って、知らない間に造っていた。外務省のホームページには、いちばん下に書いてあるんですよ。
外務省の地図には載っていないんですけれども、ジブチは地理的な重要性で、ソマリアの海賊に対処するためにあると言っているんですけれども、ジブチの重要性は海を隔てた対岸にイエメンがあるんですよね。『ニューヨーク・タイムス』の記者とかは、いまアメリカがイエメンで戦争を行っている。イエメンを攻撃している無人攻撃機というのは、ジブチの米軍基地から飛び立っているという詳細な報告が出ています。
これは私の補足なんだけれども、アメリカが外国を支配するときにひとつのパターンが見えるんですね。それは支配する国の軍隊とまず密接な関係を作る。80年代は中南米を支配する、中南米に対してテロ行為を行ったときに、エル・サルバドルとかグアテマラとか、グアテマラは1960年代に遡りますけれども。憲法改正とか日本では言っていますけれども、もう既成事実として日本の自衛隊は海外で、沖縄もそうかもしれないけれども、米軍と情報を密に交換して、軍隊が一体になっているんじゃないかという、そういう危惧を抱くんですよ。最後の最後に憲法改正。どんどんそういう流れが、日本の外で、僕らの見えないところで起こっているような気がします。
今日は本当はジブチの話が聞けるかと思って来たんですけれども、私はそういう危機感をすごく抱いています。
もうひとつ話をさせていただきたいんですけれども、いちばん最初に質問された方のヒントになるかもしれないのですけれども、私もこれだけ米軍基地があるのは変だと思うんですけれども、アメリカの戦後の歴史をたどっていくときに、第二次大戦後にアメリカが世界の最強国として台頭してきたときに、戦後世界をどのように作っていこうかという構想を立てたんですね。
有名な文書に、国務省の政策企画部門トップのジョージ・ケナンが書いたPPS24だか22だかという文書があるんですね。これはトップ・シークレットの文書で、戦後アメリカがそれぞれの地域をどのように支配していくか、地域ごとに全部書いてあるんですよ。アジア地域のなかに日本という項目があるんですね。そのなかにとくに印象に残っている文章がいちばん下の方にあって、これは1946年に書かれた文書なんですけれども、「われわれの人口はわずか世界の6パーセントに満たないが、われわれは世界の50パーセントの富を独占している。今後われわれはこの不均衡な状態をいかに維持していかなければいけないか、その戦略を立てなければいけない。」
ジョージ・ケナンはアメリカではどちらかというとハト派で、このレポートを書いたあと左遷されるんですね。その後はもっと頭のおかしいアチソンとかが入ってきて、もっと変な文書を書くんですけれども。
私が知る限りアメリカが1946年に策定した対外政策を、路線を変更した形跡はまったくないんですよ。そうすると、どうしてこんなに基地があるかとか、なぜTPPのような経済的な方法で支配しようとするか、それが見えてくるような気がするんですよ。
冷戦時代、1980年代には基地というのは、ソビエトや共産主義に対抗するためにあると言われていた。だけど冷戦が終わっても、本来ならば平和の配当があって、基地が少なくなっても良かった。米軍基地が冷戦とはまったく関係がないことがいま言えると思うんですね。アフガニスタンのオサマ・ビンラディンがいなくなったのに、アルカイダはほとんどいなくなったのに、デビッドさんの(世界の米軍基地の位置を示した)地図ではアフガニスタンの輪郭が分かるぐらいにまっ黒じゃないですか。だからそういう根本的なところを見ていかないとダメなのか。だから国対国、日本対アメリカという図式じゃなくて、ウィキリークスで外務省の人たちがアメリカの国務省の人たちにアドバイスしていたということがあるように、アメリカの支配層プラス日本の支配層・対・日本とアメリカを含む世界の人々、そういう考え方をしなくちゃいけないのではないかなと思いました。
情報提供ですが、私がディエゴガルシア島のことを初めて知ったのは、インターネットにジョン・ピルジャーさんというイギリスの優れたジャーナリストが作った「スティーリング・ア・ネーション(Stealing a Nation)」という、このことだけを取り上げた1時間ほどの映画があるんですけれども、それが無料でいつでも見られます。
●会場から
 今日はいいお話をありがとうございました。私はこのことを全然知らなくて、恥じる思いで聞いたんですけれども、例えば本土の人が沖縄の人に思いを重ねられなくて、沖縄基地の返還に力を注がないという事実があります。でも、そうじゃない人もある。その違いは何かを考えるときに、私は例えば20世紀の半ばに新たに植民地ができるというその事実を考えるときに、ではそれをどこから断ち切っていけばいいのかを考えると、本当にいろいろな運動がたくさんあったけれども、なかなか難しかった。すると、これが先の人々にどういう国民が、市民が育ってそれを変えていくのかというところにしか、希望が持てないんじゃないかというのが、私の大きな思いなんですね。
 それでとても気になるのが、良い教育を受けるかというところに行き着きます。教科書の問題にも関心があるのですが、今日、ヴァインさんが今後、調査をしたり研究をしたりする中に、ひとつ付け加えていただくとありがたいと思うのは、それぞれの国でどういう教育がなされているか、どんな教科書が使われているかという問題です。たとえばモーリシャス島に移住させられた人々はいまどんな教育を受けているのか。イギリスに1000人ぐらい行っておられるということですが、その人たちはどんな教育を受けて、いまどんなことを考えているのか、ということ。それからもうひとつは、たとえばアメリカの子供たちが広島に、長崎に、爆弾が落とされたことについて、どんな教育を受けているのかということを、関心を持って調べていただけると、何かもうひとつ別の切り口で、新しい、もっと人権を大事にする地球人が生まれることにつながるんじゃないかと思えます。
●会場から
 質問をしたいのはやまやまですが、ちょっとガマンをして、お知らせだけしたいと思います。「宇宙の核格差に反対するグローバル・ネットワーク」です。
 いま辺野古よりもっと熱い地区がすぐ隣にあります。韓国の済州島です。ここにいらっしゃる皆さんに広めていただきたいのは、いま済州島で農民が基地拡張に反対の運動をしようとしても、逮捕されて裁判にかけられたり、軍隊や警察が根こそぎ反対運動を弾圧しています。このことは日本でも一時期新聞に載ったんですけどいままた載らなくなって、知られていないんですけど。とにかく今、済州島で、恐らくイージス艦の基地になるであろうという海軍基地の拡張工事が進もうとしているという状況があります。ヴァインさんは沖縄に行かれると思うんですけど、ぜひその帰りにでも改めて韓国に取材に行っていただいて、それを全世界に広めていただきたいと思います。
●北村
 済州島にはもういらっしゃっているようです。
●ヴァイン
 あらためてご質問、そしてコメントをありがとうございました。本当に私の研究に取り入れていきたいと思います。本日意見を言って下さった方も、ここでは言えなかった方も、もし他にも研究に対してこうしたらというご提案がありましたら、ぜひここにご連絡ください。これは日本と沖縄、済州島でいろいろなことに関して、今日この場でもうちょっと教えて下さってもいいですし、ぜひご連絡ください。日本語でもOKです。すばらしい仲間がいて日本語と英語のバイリンガルです。
〔E-mail: vine◎american.edu ◎をアットマークに変えて送信してください〕
 済州島のことをお話しくださってありがとうございます。私もそこに行って、火曜日に戻ってきたばかりです。もうちょっと研究してみないとはっきりは言えませんが、済州島、ジブチ、いろんなところで行われている共通点があると思います。済州島の基地というのは、公式的には韓国の基地です。それでも米軍がその基地を使おうとしているだろうと疑いがあって、それは非常に濃い疑いです。ジブチと同じように、米軍が地元の政府にかけあって、武器をもっと買うように、そして基地をもっと拡張するようにと働きかけています。
これはホンジュラスでも見たんですけれども、地元の基地を拡張することで、実際には米国がそれに影響を与えているんだけれども、その米国の役割を隠すことができる、というのを狙っているのではないか。ですからホンジュラスでも国軍の基地をいくつか見てきましたけれども、実際の米国のプレゼンスがどれくらいのものか、そして将来的にその基地が米軍がどれだけ使うのかというのは灰色でした。
先ほどおっしゃってくださった方に大賛成で、ぜひ済州島のことをもっと知っていただいて、村人、農民の人たちの支援もして下さればと思います。いつでも韓国には行くことができるので、韓国軍が入るなというところもあるでしょうけれども、村人の人たちから情報を得ることはいつでもできると思います。もうひとつは8月にピース・キャンプがありまして、フロンティアーズという韓国の団体が組織しています。これに参加していただいてもいいと思います。ピース・キャンプについての日本語情報も、いま訳しているところです。週末にはウェブサイト〈www.davidvine.net〉でご紹介できると思います。
ピース・キャンプと辺野古の運動の人たちがもっとつながればいいなと思います。非常に共通点もあるからです。環境グループもぜひ済州島にも辺野古にも行って、本当に共通点が多いので、そこから運動を広げてほしいなと思います。
どうもありがとうございました。
●北村
 先ほど、ジブチの問題、教育問題のご発言がありました。
●ヴァイン
 先ほど教科書の話が出ましたが、戦争と平和について、そして基地について、どう教育を受けるかというのは、非常に大きな影響を与えると思います。いい提案をありがとうございました。私もいろいろな国を訪れますが、そこでは調査を進めたいと思います。たとえば米国のプレゼンスがどのように教育されているのか、など。
 ジブチとイエメンについての非常に有益なコメントも、ありがとうございました。そこにもディエゴガルシアとの共通点があると思いました。ディエゴガルシアでもジブチでも、どちらでも民主的でない方法で強制的に基地が造られました。ディエゴガルシアの場合は、米国議会も英国議会もどちらも承認はしませんでした。それは基地を造ることも、チャゴシアンを強制退去させることも、どちらも議会では承認されていないわけです。それどころか議会からの監視を非常にうまく避けて造られた基地でした。ですから民主主義も守るためにも、政府が何をするかに目を光らせる必要があると感じます。
 米国の基地も日本の基地も、地理戦略的に考え抜かれているわけです。イエメンの基地もアフリカ大陸に影響力を持つために造られたものだと思います。確かに地元の国軍との連携を強くしていくことが、米軍には見られます。エル・サルバドルでもそうですし、ホンジュラスでもそうです。グローバルに見ていく必要があるのだと思います。たとえば日本がジブチに基地を造ったことで、もしそこに日本の基地がなかったら米国がやっていたようなことを日本がやるわけで、だから基地の問題はその国だけのもんだいでなくて、グローバルに見ていく必要があると思います。米軍基地が何を行っているかというと、米国の世界支配を維持しているわけです。
 いま米国が外国基地で何をやりたいかというと、中国への牽制です。今日、全然中国の話が出なかったのが驚きなくらい、中国を米国は意識しているわけで、ですから米国と中国の関係、それから米中韓日の関係などをいろいろと見ていく必要があります。
 2つ懸念があります。もしかしたら基地の建設・拡大競争が行われているかもしれない。それは米国と中国とロシアの間でです。米国とその同盟国である日本と韓国で、アジアの軍拡を行っていると聞いています。でもそうやって基地を拡大することで、アジアの中での緊張が高まって、戦争が起こる危険がかえって高まることを懸念します。
 米軍が中国との戦争に備えて訓練をしたり基地を造ったりすることで、かえって中国との紛争が起こりやすくなると感じています。もちろん米軍の拡張は、お金がないのでそろそろ止まるかもしれません。ですから将来的にその軍拡競争がどうなるかは分かりませんが、少なくとも済州島の人、沖縄の人、ディエゴガルシアの人、その支援者の人たちの反基地闘争を見ていると、非常に励まされます。
●北村
 時間が来てしまいました。僕のほうからもうかがいたいこと、とくに中国のことをまさにうかがいたかったんですが、残念ながらが来てしまいました。今日は本当に刺激的なお話をたくさんしていただいて、ありがとうございました。ぜひまたメールででも、みなさんもご連絡してください。今日は本当にどうもありがとうございました。

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