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防災大国キューバ
東日本大震災以後、木造・プレハブの仮設住宅が5万2千戸つくられたという。障害者や老人への配慮に欠けていたり、暖房対策が不十分であったり、市街地から離れて生活に不便があったりする、という話もよく聞く。しかし仮設は仮設にすぎない。本来の自宅に帰れない人々がいちばん求めているのは、雇用を含めた生活の再建だろう。これが難しい。私自身も、父から相続した千葉県のリゾートマンションの1室を自治体に寄贈するので東北からの移住者のために役立ててほしいと申し出たが、マッチングは成立しなかった。
また眼ウロコの本を読んだ。中村八郎・吉田太郎『「防災大国」キューバに世界が注目するわけ』(築地書館、2011年)。毎年、猛烈なハリケーンに襲われるキューバでは、避難のシステムが整っているため、めったに犠牲者が出ない。壊れた住宅は、国から材料を支給され、専門家の援助を受けながら、その住宅の持ち主が自分の労働で再建する。住宅建設にあたってのその労働には国から賃金が出る。なるほど、究極の生活再建だ。
むろん、社会主義キューバが天国でも何でもない、自由に制限があり貧しい国であることは、私も見て知っている。この本の著者たちも、手放しでキューバを礼賛しているわけではない。しかし、この復興のありかたというのは、すごいではないですか。
もうひとつ、市民防衛について。ハリケーンは避けられないけれども、予測はできる。だから、とにかく逃げる、整然と避難する。家財道具は浸水しない上階に運び、無人になった町は軍が警備する。病院や避難場所の小規模電源は確保される。原発建設は、ソ連の援助が得られず挫折したことが幸いだった。こうして、米国では2005年のハリケーン・カトリーナで2500人を超える死者・行方不明者が出たけれども、同規模のハリケーンなら、キューバの犠牲者は数名だ。
キューバの軍と地域住民との共同による警戒・避難システムは、本来、米国からの軍事侵攻に対抗するためにつくられたものだったという(現に米国は1961年にピッグス湾侵攻事件を起こし、何度もカストロ暗殺未遂事件を起こしてきた)。しかし、もう米軍が大挙してキューバに侵攻・占領する事態は考えにくい。キューバの市民防衛のありかたは、自衛隊の災害対策部隊への再編にも、示唆を与えていると思う。 (2012年1月29日)

