読む・読もう・読めば 115
電子書籍
この4月2日、日本の大手出版社20社と産業革新機構、大日本印刷、凸版印刷は「株式会社出版デジタル機構(サービス名称:パブリッジ)」を設立する。産業革新機構は国営投資ファンドだから、国策として、ということになる。賛同出版社は274社に達した。100万点の電子書籍化を進めるというが、まだフォーマットポリシーも決まっていない。それでもやや拙速に出版デジタル機構が発足するのは、Googleなどの外国勢から日本の出版市場および著作権を守ろうということからだろう。いずれにしても今後、日本では怒濤の勢いで電子書籍が普及していき、書籍の制作・流通・保存の形態が大きく変わっていくことは避けられない。すでに活字本になっているものの電子書籍化も進むが、もっぱら電子書籍としてのみ発売されるものも増える。
消費者にとっては、同じ内容の活字新刊本、古書、電子本を、同じサイトから比較しながら利用方法に合わせて購入することができるようになるだろう。書店や図書館に行かなくても、家庭でも出先でもいつでも必要な書籍がダウンロードできるわけだ。画面で読む場合、単語にカーソルを合わせて辞書を引くことは今でも容易にできるが、電子本だと、多義語では「ここでは」どの意味かを示すようにすることもできるだろう。読み上げ機能が発達すればカーソルを合わせて音声を聞けるので、ルビ(ふりがな)もいらなくなる。障害者用の点字本や拡大字本も不要になるのか。
むろん「紙の」本や雑誌が消えることは当分は考えられないが、電子書籍化の波に乗り遅れた出版社、印刷所、製本所、取次、書店等の未来は暗い。だいたい出版デジタル機構で2大印刷会社が大きな顔をしているのは、書籍のデジタルデータを出版社でなく印刷所が保管しているからだ。出版社は単なるコンテンツ提供者になるのか。半世紀に満たない間に鉛活字から電算写植へ、DTPへと何度も頭を切り換えさせられてきた私ども編集者としては、私どもの仕事を支えてきてくださった書籍デザイナー、校閲者、そして印刷所の職人さんたちなどの処遇がいちばん気になる。町の文化センターとしての本屋さんは、すでに骨董品になってしまったし。 (2012年3月29日)

