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5つの改憲案
憲法記念日を前に、各党派から憲法改正案が発表された。自民党の「日本国憲法改正草案」(4月27日発表)は2009年の同党改憲案を引き継ぐもので、完成度は高いがおそらく前回と同じく中曾根康弘さんが嘆くであろうように格調は高くない。起草委員長は中谷元さん。立ち上がれ日本の「自主憲法大綱『案』(4月25日発表)は、天皇を元首とする、国歌・国旗を明記する、自衛軍(自民党案では国防軍)を保持する、国家非常事態条項を新設する、地方は道州制をとる、などは自民党と同じだ。みんなの党は4月27日に渡辺喜美代表の記者会見で「党としての憲法改正に対する考え」を語ったというのだが、その全文は同党ホームページにも掲載されていない。国会を一院制にするところは自民・たち日とは異なる。そして4月27日にはまた民主・自民・みんな等の超党派議員10名による一院制議連が、憲法42条を改正して国会を一院制にする憲法改正案を国会に提出した。
いまぞろぞろと改憲案が出て来たのは、国会の憲法審査会での実質審議を開始させることを目的としたものであって、各党派間ですりあわせをしなければならないから大綱にとどめている、ということか。肝心の民主党は党内とりまとめさえ至難の業だから、当分は憲法改正に手を付けることはできない。そのあたりの事情が良く分かっているマスコミは、改憲案がぞろぞろ出てもその内容を詳しく報道することはしなかった。ただ重要なことは、ほとんどの問題で保守諸党が一致団結できるということであり、また3月10日に発表された大阪維新の会の次期総選挙公約「維新八策」のたたき台なるものに通じるところが多いということだ。
橋下徹代表が「あくまで維新政治塾の『レジュメ』」だと言っているものが、「維新八策のたたき台の概要」として報道されている。1. 統治機構の作り直し 2. 財政・行政改革 3. 公務員制度改革 4. 教育改革 5. 社会保障改革 6. 経済・雇用・税制 7. 外交・防衛 8. 憲法改正。大阪都構想から始まった橋下旋風だから1がまず優先されるのだろうし、6で脱原発を掲げるのも新鮮だが、基本は小泉政権の新自由主義改革を踏襲するように見える。「生まれてから死亡するまでに稼いだお金を使い切る」などという表現が曲者だ。7では憲法9条国民投票と日米同盟基軸を掲げ、8では憲法改正条件を国会の過半数に緩和する。週刊現代報道によれば、筆者は大阪府議会の浅田均議長だという。京大・スタンフォード大院卒、NHK、OECD勤務を経て府議会議員という切れ者だ。
次回総選挙の結果によっては維新を軸に改憲へのおおきなうねりが生ずる。小沢一郎さんの動きはまだ見えない。『一個人』6月号特集「日本国憲法入門」も好企画だが、日本国憲法の平和条項を守り育てることを主眼とする私たちの運動も、「9条守れ」の理念的な運動にとどまらず、政策や将来展望とからめた厳密な憲法論議ができるよう準備しなければならない。というところでコマーシャル。「日本国憲法の平和主義に関する政府見解の論理の変遷を国会答弁を中心に分析し、9条改憲策動への厳密な対応を考察する論文集」を私の事務所「編集工房【要】」の発行、日本評論社発売で4月下旬に刊行した。著者は明治大学の浦田一郎教授、書名は『自衛力論の論理と歴史――憲法解釈と憲法改正のあいだ』、定価5000円+税。高価な専門書で部数も限られているが、ぜひ図書館に入れていただくよう、ご協力ください。 (2012年4月30日)

