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あたご事件控訴審傍聴記4
7月6日、第5回公判。この日の証人は2人。1人目は控訴審に提出されている清徳丸の航跡図を書いた横須賀海上保安部の救難専門官で、なんと3度目の出廷だ。航跡作図の元になったのは康栄丸からの視認だが、その康栄丸のGPSプロッターに残された進行方向は船首方位でなく実効進路、等について証言した。
2人目の証人は第一審の横浜地裁に清徳丸の航跡図を提出した宮田義憲・元高等海難審判庁長官。衝突直前の清徳丸が同船の能力を超える速力を出したとしていたことを追及されて、「船の速力は波、うねり、風、潮流などによってバラつきがある、小型船は大型船よりそれらの影響を受けやすい、秒単位で速度を求めると変動要因は大きく働く」と弁明した。「事故当日は凪に近い状態だったから速力の変動幅はせいぜい1ノット以下ではないか」との質問には、「うねり、波が少しでもあれば変わる」と答えた。
次回公判は8月1日。次々回9月14日の公判について、検察側は現地勝浦市で康栄丸を動かして検証したいと希望、しぶる弁護側を「東京から勝浦まで特急で1時間半ですから」と説得した。9月14日は勝浦大漁祭(16~19日)の準備たけなわだ。もちろん川津神社の御輿も出る。駅あるいは街道筋から港まで行くのは容易ではないと思われる。また狭い漁船の操舵室に人がたくさん入れるはずもなく、傍聴人は陸に取り残されるのだろうか。
蛇足1。問題のイージス艦「あたご」は艦長交代後の2010年7月10日、ハワイ沖で行われたリムパック(環太平洋合同演習)で、護衛艦「あけぼの」とともに、標的艦を撃沈させる演習を実際に行ったことが、今年の5月になって分かった。標的は退役した米海軍の強襲上陸艦「ニューオーリンズ」で、米・オーストラリア・カナダの艦艇が対艦ミサイルを撃ち込んだのち航空機からの攻撃があり、さらに「あけぼの」が76ミリ速射砲で、「あたご」が127ミリ速射砲で攻撃、「ニューオーリンズ」は40分で沈没した。なるほど、イージス艦はこういうふうにも使われるのか。しかし明らかにこれは「ともに戦う」行為であり、集団的自衛権行使のための演習ではないか。
蛇足2。「あたご」を無罪とし、事故原因は清徳丸にあるとした横浜地裁不当判決以後、こういう主張も出て来るだろうなと思っていたところ、やっぱり出て来た。佐藤守・元航空自衛隊南西航空混成団指令の『自衛隊の「犯罪」 雫石事件の真相!』という本だ(青林堂、2012年7月刊)。雫石事件(1971年、自衛隊の戦闘機が全日空機に接触、戦闘機のパイロットはパラシュートで脱出、全日空機の乗客・乗員162人は全員死亡)も「あたご」事件と同様に審理すれば、自衛隊側は無罪になるはずだという。『実録 自衛隊パイロットたちが接近遭遇したUFO』(講談社、2010年)などという本も書いている人だから、と軽視しないほうがいいと思う。 (2012年7月30日)

