脱原発・地球温暖化防止・自然エネルギー (レジュメ)
2012.10.27
日本のエネルギー戦略を考える
歌川 学(産総研)
はじめに
福島第一原発事故を契機に、電気・エネルギーのありかたを全面的に考え直す必要がある。
エネルギーの選択は将来社会の選択のひとつでもある。省エネ・自然エネルギー普及を進め、原子力や化石燃料を減らし、地場産業発展・雇用拡大、地域を豊かで持続可能な低炭素社会に移行させる方向を考える。
1.エネルギーと発電の現状
原発(日本に50基)が5月にいったん全て停止。現在も関西電力の2基を除いて停止。
化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)と原子力には、環境への負荷、リスク、資源制約がある。
現在はエネルギー全体も電気も化石燃料と原子力に約90%を依存している。
省エネと自然エネルギー普及で、負荷の小さなエネルギーへシフトしていくことが課題。
2011年は原発停止で火力発電所の燃料が増加したが、節電及び電気以外での省エネのため、化石燃料輸入量はほぼ横ばい。ただし、価格高騰で輸入金額は約3割増加。
政策の動き(別紙参照)
2. 夏のピーク電力について
電気を最も使うのは夏の平日の昼間(北海道は冬の夕方)。
2011年、2012年夏のピーク
福島第一原発事故を契機に企業も家庭も節電を実施
両年とも、節電で前年比13%のピーク削減(約2300万kW、原発23基分)。
2012年には原発は関西電力の2基以外全て停止(結果的に、大半が止まっていても需給可能。)
・ピークに近い需要はごく短時間
夏の最大電力に近い電力需要は年間10時間などごく短時間のみ発生。
この時間帯だけ節電を徹底することで、設備を使わずにすむ可能性も。
・節電(ピークカット)方法について
2011年・2012年夏は、冷房停止、深夜・土日出勤など無理も。熱中症で4万人が救急搬送。
無茶な行動依存では現状維持すら不可能。
スマートな節電手段は多数
・省エネ機器に更新すれば電力が半減する可能性
・もともと必要性の薄い設備停止、過大な容量の縮小抑制
・設備・機器はそのままで、労働環境や生活環境を損なわずに電力消費削減する制御など
・電力消費実態
東京電力のピーク電力時間帯の需要割合:オフィスなど4割、工場3割、家庭3割(経産省推定)
年間電力量:大口の工場・オフィスなどで3分の2を消費。家庭・中小商店やオフィス・町工場などは3分の1のみ。
・料金などを通じピーク電力を下げ節電を促すしくみ
デマンドレスポンス:需給逼迫時に節電と引き替えにボーナスを支払い、節電を促すしくみ
ピーク電力料金:ピーク時間帯近くの電力料金を上げて節電を促すしくみ
需給調整契約:需給逼迫時に供給を止めることを条件に、安い料金を適用(日本でも実施)
3.省エネの展望(自然エネルギーを最大活用するために)
(1)膨大なエネルギーロス
日本ではエネルギーの3分の1しか有効利用できず、3分の2は排熱で捨てている。最大のロスは発電所。
日本の1990年以降のエネルギー効率変化をみると、産業もオフィス等も家庭も停滞し、改善がほとんどない。運輸旅客(主に乗用車)は効率が大幅に悪化した。
(2)省エネの可能性(無理のないスマートな省エネで大きな可能性)
火力発電所は燃料のエネルギーの40%分が電気になり(発電効率40%、平均)、6割は熱として捨てている。→設備投資で発電効率を上げることと、排熱利用を進めることが課題。
工場にも大きな省エネ余地。経産省も「省エネ法ベンチマーク」として、業種ごとに中期的に目指す優良水準を発表(鉄鋼など一部業種)。
同じ種類の施設で、エネルギー効率(床面積あたりエネルギー)やCO2原単位(床面積あたりCO2排出量)に差があり(都内の施設では最大と最小で効率に4倍の違い)、省エネ余地がある。
設備、建物更新時に最良の省エネ設備を導入すると、技術的には日本全体で2020年には2010年比で25%以上、2030年には30〜40%の省エネが可能。
こうした対策を効果的に進めるためには実態把握が必要。
4.自然エネルギーの普及
(1)自然エネルギーの種類と導入可能性
地域資源。一度に大量に取り出せないが、長く使える。特徴を活かして組み合わせていくと有効。
自然エネルギー電力買取法が成立。住民や企業が設置で損しない価格で買取
自然エネルギーも事業として成り立つのが発展の基本。大量普及すれば製造コストは大幅に低下。
・自然エネルギーの電気の導入可能性(電気)
現在は電力の1割のみ(ほとんどがダム式水力発電)。
自然エネルギー電力は日本の現在の電力量の数倍もの可能性(環境省「再生可能エネルギーポテンシャル調査」)。
2020年の導入可能性は電力量の20%約2000億kWh
2030年は電力量37%約3580億kWh(政府「選択肢」)
今後の自然エネルギーの発電コストは大きく低下が予測される
日本は多様な自然エネルギーに恵まれる、資源の豊富な地域。
・省エネと自然エネルギーを組み合わせた可能性
2030年にむけ、電気でもエネルギー全体でも、脱原発でも省エネと自然エネルギーで、化石燃料消費を半減できる技術的可能性がある。
温暖化対策も、原発停止でも、技術的には温室効果ガス25%削減(2020年に1990年比)を上回る削減技術があり、その選択組み合わせが可能(省エネ、再生可能エネルギー、燃料転換など)。
5. 省エネ・自然エネルギー普及による地域産業発展や雇用増
・お金の使い方、支払先(自然エネルギーは雇用に。石油代金は海外に)
日本は石油などの燃料輸入に2008年には年間25兆円、国民一人あたり20万円を使う。これは環境・エネルギーで問題なだけでなく、国内雇用にもほとんど役立たない。
化石燃料やウラン燃料(輸入)は、大半が海外の石油会社などへ。
省エネ・自然エネルギー対策は、お金の流れを変えて、地域産業や雇用に役立てることでもある。
・省エネや自然エネルギー普及でCO2を減らす国、産業が発展
経済発展・雇用拡大と、エネルギー消費・CO2とは別もの(連動しない)。欧州、14ヶ国で1990年以降GDP成長が日本より大きく、かつ温室効果ガス排出を減らした。経済のサービス化や産業構造転換と、省エネ再エネ産業の発展の2つが背景。
・地域から持続可能な低炭素社会へ
デンマークやドイツは、住民や農家、地元企業など地域の主体が中心に自然エネルギー発電所を建て、売電収入を地域で得られるように制度を工夫してきた。
地域が省エネ自然エネルギーの低炭素社会に向けて先導先行できる可能性。
・新興国・途上国への発信
途上国がいったん先進国型の経済成長をし、環境破壊や資源エネルギー争いで疲弊した後にようやく低炭素社会への転換をするのではなく、最初から環境を意識した低炭素型経済発展を目指すことが望まれる。京都議定書の義務の枠組みに新興国等から順に入ってもらうことなども課題。
先進国が自らエネルギー・CO2減、かつ地域産業発展・雇用創出の成功例を示すことが必須。
・新しい環境・エネルギー安全保障
気候変動の悪影響防止、国際的な省エネ・自然エネルギー転換による化石燃料資源争いからの脱却が課題。
従来は大量エネルギー消費継続のまま、他国と競合して資源を確保。戦争になる例も。
今後は需要を減らし、国際的な共通ルール化(京都議定書の排出削減はそのひとつ)を広げていく。(国連安全保障理事会で環境安全保障、気候安全保障を議論したこともある)
これが途上国の貧困問題解決や、石油輸入による疲弊の解決、地域産業振興にもつながる
まとめ
省エネや自然エネルギー普及には大きな可能性があり、化石燃料・原子力を大きく減らすことができる。温暖化対策とも共通に取り組むことができる。
大量生産・大量エネルギー消費社会をやめ、エネルギーやCO2を減らしながら、経済発展することができる。途上国に成功例を示し、持続可能な低炭素社会への転換を促すことも重要。
実態把握・情報共有と計画的な普及のしくみが必要。
地域が、省エネ・自然エネルギー普及で持続可能な低炭素社会に向け先行できる可能性。住民や地域企業が自然エネルギーを「生産」、利益を得ながら持続可能な社会づくりに寄与、地域企業に様々な発注をし、地域が豊かに発展する可能性がある。
エネルギーの将来はその国の将来に大きく関与し、影響も大きい。国民・住民が意思決定し選び取るもの。
別紙
最近のエネルギー環境政策の動き
【1】「革新的エネルギー環境戦略」(9/14、閣議決定9/19)
1.原子力
(1)国内の原発
「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」
原発に依存しない社会への道筋の検討「検証を行い、不断に見直していく」
1)40年運転制限制を厳格に適用する
2)原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働とする
3)原発の新設・増設は行わない(ただし、建設中の3基は建設続行容認)
(2)核燃料サイクル:再処理工場、高速炉とも事実上継続。
(3)原発輸出:継続と読める文章がある
2.省エネと自然エネルギー普及(経済成長率が上がれば削減率も下がり、目標とは言えない)
電力消費削減:2030年に▲10%(2010年比)。経済成長率が上がれば▲1%
エネルギー消費(熱など含む)2030年に▲19%削減(同)、経済成長率が上がれば▲12%
注:成長するとエネルギーものびるという従来型経済を想定
自然エネルギー:電気2030年の電気の30%相当。(熱利用は数値なし)
3.温暖化対策
2020年の温室効果ガス排出量:1990年比で▲5〜9%、経済成長率が高ければ▲2〜5%。
2030年:1990年比▲約2割。経済成長率が高ければ▲約1割。
4.電力システム改革
発電送電配電の分離の方向。小売の全面自由化を実施、送電部門の中立化・広域化
自然エネ受け入れ強化のため、必要に応じ国が政策的に送電網の強化。
5.今後の政策スケジュール
年末までに政策とりまとめ
6.背景
経済成長をするとエネルギーやCO2も増える経済を想定。
大量生産社会からの脱却、産業構造の転換、などをあまり想定していない。
上記の閣議決定(9/19)
政策文書自体を閣議決定することが多いものの、今回は以下が全文。
今後のエネルギー・環境政策について
平成 24 年9月 19 日閣議決定
今後のエネルギー・環境政策については、「革新的エネルギー・環境戦略」(平成 24 年9月 14 日エネルギー・環境会議決定)を踏まえて、関係自治体や国際社会等と責任ある議論を行い、国民の理解を得つつ、柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する。
(参考)パブリックコメント
原発ゼロの意見が87%(即時ゼロが78%)、原発15%が1%、原発20〜25%が8%であった。
【2】国際的な枠組み:京都議定書
京都議定書の先進国の今の目標(義務)は2012年まで。
先進国は2013年以降の目標(義務)を交渉中。今年12月の条約会議で決める予定。
日本、カナダ、ロシアは2013年以降の目標を拒否(また、米国はまだ京都議定書自体に未加盟)
途上国を含む共通ルールは2015年までに合意予定で交渉中。

