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あたご事件控訴審傍聴記 6
判決日が2013年6月11日と決まった。海上自衛隊のイージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」に衝突・沈没させる事件が発生したのは2008年2月19日。防衛省事故調査委員会報告、海難審判所裁決、横浜地裁判決を経ての高裁判決となる。「あたご」は無罪、衝突原因は漁船側にありとする地裁不当判決を覆すかどうか。以下、前回報告以後の2回の公判について報告する。
11月20日、第8回公判。前回公判に続き、今津隼馬・東京海洋大学名誉教授の証言。「速力三角形」の法則により割り出した「あたご」と「清徳丸」の衝突角度には幅があり、地裁判決が認定し、検察側証人・日當博喜氏が「あり得ない」とする47度を含む、という前回の証言を変えなかった。
さらに今津氏は検察側の質問に対して、衝突以前の両船の行動・角度については「意見を持っていない」と述べた。今津氏には衝突角度に関する論文はなく、衝突回避に関する研究が専門だという。高速船とそうでない船が共存できるのか、が専門のテーマだそうだ。それでも専門外の分野で証言することになったのは、大学同窓の峰隆男弁護士(被告側主任弁護士)の依頼によるのだという。
証言内容とは別に井上弘通・裁判長は今津氏に対して、避航義務が生じたと判断するリミットはどれくらいか、と質問した。今津氏は「400から500メートル」と答えた。当時「あたご」は高速で航行していたわけではないが、大型船はそう簡単には方向転換できないのではないか。
裁判長がこのような質問をしたのは理由があった。「フェアネスの観点から」、検察・被告の両者に対して、次回公判で、地裁判決の以下の点についての考えを述べるよう求めたのだ。検察・被告の両者に対して、1. どのくらい近づいた場合に避航義務が生じるか 2. コンパス方位で明確な変化が認められない場合とはどの程度か。検察に対して、「清徳丸」の航跡が地裁認定の通りだとしても 3. 衝突角度 4. コンパス方位の相当性 5. 「清徳丸」は右転しなければ「あたご」の後方500メートルを通過したとする判断 に対する意見。以上は私のメモによるが、求釈明書ではもっと別の表現になっているかもしれない。いずれにせよ裁判長は地裁判決の根拠に疑問を抱き、双方の見合関係・注意義務についてあらためて確認しようとしているように思われる。「あたご」に避航義務・注意義務ありとなれば、当然被告は有罪となるだろう。被告弁護士は、控訴状にないことを持ち出すのは不適切として抵抗したが、裁判長は抗議を退けた。
12月11日、第9回公判。証人は誰も出廷せず。検察側は前回の裁判長の求めに対する釈明書を提出したが、被告側はそれを読んで専門家と相談してから、と引き延ばしにかかった。裁判長は「そんなに時間がかかるのはいささか」と不満を述べたが、結果、予定されていた1月25日の公判期日は取り消し。次回は3月4日、その次は4月4日、そして6月11日に判決、と期日が決まった。傍聴のための高裁通いもあと3回となった。
(2012年12月14日)

