読む・読もう・読めば 127
読む・読もう・読めば 127
あたご裁判、控訴棄却
東京高等裁判所、井上弘通裁判長は本日6月11日、2008年のイージス艦「あたご」による漁船「清徳丸」への衝突・沈没事件で、業務上過失致死などで告訴されていた自衛官2人に対して、控訴棄却の判決を下した。横浜地裁判決を維持、要するに無罪。102号法廷には久しぶりに記者席が設けられ、マスコミ・自衛隊関係者を含めて約70名が傍聴した。13時30分から一部省略での判決読み上げに1時間半近くかかったが、マスコミ各社は読み上げも終わらないうちからネットで内容を流した。当然、分かりやすい判決要旨が事前に配布されていたのだろう。私どもは判決文全体の構成も分からないまま、必死でメモをとらねばならない。
争点は地裁段階から2点に限定されている。清徳丸の航跡と、あたごの注意義務・避航義務についてだ。第1争点について高裁判決は、地裁判決の事実認定にも検察の主張にも被告側の主張にも、こまごまと「賛同できない」点を列挙した。しかし想定される清徳丸の航跡に「幅がある」うち、もっとも南東側の航跡で考察することにした。決定的な証拠がないなかで、いくつもの推定航跡図から得た「幅」のなかでその南東側で考察することに、なんらかの合理的根拠があるだろうか。
と問題にするのは、第1争点の結論はただちに第2争点にかかわるからだ。高裁判決が考察した清徳丸の航跡からすると、清徳丸が右転しなければ衝突しない。だから右転した清徳丸に衝突の原因があり、あたごの注意義務・避航義務は生ずる余地はない、ことになる。高裁の法廷証言でも、あたごの見張り態勢がいかにずさんだったかは明らかなのに、ちゃんと見張っていたかどうかは問題でない、ということになる。
清徳丸はまっすぐ漁場に向かっていたのだから、あたごを避けようと思わなければ針路を変える必要などない。清徳丸が右転した理由を高裁判決は、あたごが大型自衛艦という特殊性から、両舷灯の間隔が民間船よりずっと狭かったことを挙げている。また一般論としてだろうが、「そこのけ式」の航行があってはならないとも言っている。しかしそれらは、あたご・清徳丸衝突の責任追及に関係なしとされてしまった。
無罪となった両被告人に、笑顔はなかった。被告人の証言は「全面的には信用できない」と明確に言われたからか。清徳丸の母港、千葉県勝浦市川津から傍聴に来られた方々の表情はむろん硬い。さて、地裁でも高裁でも捜査のずさんさを批判された検察に、最高裁への上告の能力はあるのか。行方不明のままの吉清親子は、何も語れない。
(2013年6月11日)
« 南西地域防衛態勢強化とは | トップページ | 「脱原発テントといのちを守る裁判」のめざすもの »
「大内要三 コラム「読む・読もう・読めば」」カテゴリの記事
- 読む・読もう・読めば 127(2013.06.12)
- 読む・読もう・読めば 126(2013.04.06)
- 読む・読もう・読めば 125(2013.02.11)
- 読む・読もう・読めば 124(2012.12.15)
- 美濃部革新都政への道をふりかえる(2012.11.22)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。


毎回の傍聴、ご苦労様です。どうも事実とは無関係に筋書きが決められているようにも感じます。検察は最高裁までもっていく覚悟があるのでしょうか。
投稿: 小幡利夫 | 2013/06/12 10:36
筆者から訂正。「両舷灯」ではなく「両マスト灯」ですね。
投稿: 大内要三 | 2013/06/12 18:01