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2015年1月

2015/01/27

集団的自衛権関連法とガイドライン再改定

大内 要三(日本ジャーナリスト会議会員)




1.7.1閣議決定は玉虫色か

 安倍政権が集団的自衛権行使容認へと大きく舵を切ったのは、昨年(2014年)7月1日の国家安全保障会議決定・閣議決定によってでした。発表文書のタイトルは長く、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」となっています。この決定がなされたことで関連法案の準備が進行中であり、その作業は日米ガイドライン再改定とシンクロすることになると言われます。
 7.1閣議決定は、解釈改憲により集団的自衛権行使を「限定的」に容認しましたが、その「限定」が具体的にどこまでかは曖昧で与党内でも不一致があります。関連法案がどのような形で出て来るか、年末から始まった与党協議の内容が少しずつマスコミ報道されていますけれども、法案が国会に提出されるのは4月の統一地方選の後になりそうです。
 だいたい、7.1閣議決定の本文中に「集団的自衛権」という言葉は、1度だけ、控えめにしか出て来ません。首相官邸HPで見ると、A4判8頁の文書になんと頁数を打っていないので該当箇所を頁・行で示すことができないのは腹立たしいことですが、前文+4章構成のうちの「3 憲法第9条の下で許容される自衛の措置」中、次のようにあります。
「憲法上許容される武力の行使は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」「他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とするものが含まれるが、憲法上は、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち、我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として初めて許容されるものである」
「我が国の存立」がまずキーワードです。「国民を守る」に先だって国が存立していなければ話にならない、という論理ですね。ですから、7月1日の安倍首相記者会見でも、2日の山口公明党代表あいさつでも、「国民を守る」ため「限定的」に集団的自衛権を行使する、と強調しました。
「限定的」という表現について。もし集団的自衛権行使全面容認の解釈改憲をすれば、憲法9条で禁止されるのは侵略戦争が残るだけになり、侵略戦争は1937年のパリ条約で国際法違反になっていますから憲法にわざわざ書き込むまでもなく、つまり「平和憲法」を制定した意味がなくなってしまいます。解釈改憲どころか憲法否定です。だから「憲法の平和主義を守る」と言うためには、集団的自衛権行使も「限定的」と言わざるを得ないのです。
 その「限定」の縛りが「武力行使の新三要件」だとされています。新三要件は、1960年の政府答弁書「自衛権発動の三要件」に替わるものです。
 旧三要件のうちの第1要件は、たいへん簡潔なものでした。「わが国に対する急迫不正の侵害があること」。これだけです。自衛隊法76条の規定によれば「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」にだけ、自衛隊に防衛出動命令が出されます。自衛隊は日本を守るための必要最小限の自衛力だから外国に戦争に行くことはない、自衛隊が外国に出かけるとしても戦地には行かず武力行使をしない、という縛りが、PKO法やイラク特措法にありました。すべてこの旧三要件のうちの第1要件の考え方から来た規定です。
 7.1閣議決定にある新三要件の第1要件は、だいぶ長くなっています。「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」。
「又は」の後が問題ですね。日本に対する武力攻撃がなくても「我が国と密接な関係にある他国」が武力攻撃を受けて「我が国の存立が脅かされ」るなら自衛隊は武力行使をする、つまり戦争をするわけです。日本が武力攻撃を受けていないのに日本国の存立が脅かされる事態とは具体的にどのような場合でしょうか。国会質問で安倍首相はケース・バイ・ケースとしか答えておりません。誰が判断するのかといえば、これは国家安全保障会議です。その中核は首相・官房長官・外相・防衛相の4閣僚会議です。
 日本国の存立が脅かされたとの判断を得て首相が自衛隊に防衛出動を命ずるとき、「原則として事前に国会の承認を求める」とされていますが、これは原則にすぎません。現行法でも防衛出動は総理が命令し、国会の承認を得ることになっていますが、「特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合」は事後承認でいいことになっています。
 じつは第2次大戦後もグローバルに軍隊を派遣して各地で戦闘行為を続けている米国でも、宣戦布告の権限は大統領ではなく議会にあります。大統領が派兵命令をしても後に議会の承認が必要です。自衛隊海外派遣が国会の事後承認でいいということになれば、米国と同じになります。
 第2次安倍内閣の発足以来、首相は集団的自衛権問題関連法をガイドライン再改定に合わせるため昨年中に成立させたいと言ってきました。しかし現在は法案提出は4月の統一地方選挙後と報道されており、ガイドラインのほうも12月19日の日米安保協議会(日本の防衛相・外相、米国の国務相・国防相の4者会議)で「来年(2015年)前半」に先送りされています。集団的自衛権行使は国民を守るために必要です、戦争にはなりません、安全です、と大宣伝した結果、米国の要請に応えられない水準の閣議決定になったと思われます。
 
2.ガイドライン再改定への経緯

 現行のガイドラインは1978年に成立し、1997年に改定されたもので、「新ガイドライン」と呼ばれます。新ガイドラインを「適切な形で反映されることが期待」されたため、関連国内法が整備されました。関連法というのは周辺事態法と、武力攻撃事態法などの有事法制です。すぐに一括して整備されたのではなくて、7年かかっています。7年かかって新ガイドライン態勢がいったん完成したのですが、すぐ続いて今度は米軍再編協力の名目で日米防衛協力協議が始まり、「安保体制」は公式に「日米同盟」へと変貌しました。2004年には自衛隊イラク派兵(名古屋高裁で違憲判決が出たとおり戦地派遣です)、07年に防衛庁は防衛省に昇格しました。
 つまり、新ガイドライン態勢の枠はすでに乗り越えられています。ですからもっと早くに日米安保条約改正、あるいはガイドライン再改定が提起されて当然だったのですが、総理が毎年交代し、防衛相はもっと頻繁に交代するような状況ではそれができなかったのですね。しかし日米閣僚間の協議はなくても、自衛隊と米軍の間の協議はこの間も頻繁に行われていました。
 ガイドライン再改定の必要性を自衛隊・米軍が痛切に感じたのは、2011年3月11日の東日本大震災・原発事故の際の「トモダチ作戦」からです。このとき災害対策ではありますが、日米共同指揮所が市ヶ谷・横田・仙台に開設され、ハワイから米太平洋軍司令官が来日して、自衛隊・米軍の緊密な協議が行われました。トモダチ作戦は周辺有事の際の日米共同対処のシミュレーションとしても役立ったわけです。
 防衛省は2012年11月に「東日本大震災への対応に関する教訓事項」という文書をまとめています。そのなかで「日米共同」について、「当初、調整所要に比し、日米調整所の体制が不十分であり、各調整所の役割等が不明確な状況が生起、また、防衛省の対米窓口が不明確な状況も生起」に書いています。そこで「現在、日米間で調整メカニズムのあり方について協議中」ということになったのです。
 民主党政権の性格は鳩山首相の退陣と3.11を経て大きく変わりました。今回のガイドライン再改定も民主党政権下の2012年に日本側(森本防衛相)から提起し、米国側(パネッタ国防長官)が同意したものです。同年末に第2次安倍内閣が成立すると、安倍首相はただちに小野寺防衛相にガイドライン再改定の検討を指示して、動きが活発化しました。
 翌13年10月3日、いつもはワシントンで開催されていた日米安保協議委員会が東京で開催されて、ヘーゲル国防長官とケリー国務長官が来日しました。ここでガイドライン再改定の基本方向が設定されました。防衛省HPのまとめによれば、要点は7点です。
 ①日米防衛協力の中核的要素である日本に対する武力攻撃への対処能力の確保、
 ②同盟のグローバルな性質を反映する協力範囲の拡大、
 ③地域のパートナーとのより緊密な安全保障協力の促進、
 ④協議・調整メカニズムの強化、
 ⑤相互の能力強化に基づく適切な役割分担の提示、
 ⑥効果的・効率的・シームレスな対応を確保するための緊急事態における防衛協力の指針となる概念の評価、
 ⑦同盟強化を可能とする追加的な方策の探求、を含む。
 用語については順次ご説明しますが、日米同盟がすでに「グローバルな性質」になっているという認識、当面の課題でないとしても「追加的な方策」としてNATOなみの地域軍事同盟あたりまでは想定していることを、確認しておきたいと思います。
 安倍政権は2013年12月に国家安全保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画の3点セットを発表し、防衛政策の長期計画を示しました。その分析については別稿(『法と民主主義』14年4月号)がありますので省略します。集団的自衛権行使を法制化し、ガイドラインを再改定するなら、この長期計画は大幅な修正を迫られるのではないかと考えるのが普通でしょう。しかし安倍首相は昨年7月の国会で、「(ガイドライン再改定によって)自衛隊の体制や防衛費の見直しを行う必要はないと考えております。このため、現行の防衛大綱及び中期防を見直すことは考えてはおりません」と答弁しています。自衛隊の編成・装備・予算の10年計画はガイドライン再改定後にもそのまま対応できる、あとは国内法整備のみだと自信を持ったのでしょうか。
 しかし日米間の協議は予定通りのスケジュールでは進まず、昨年末までではなく本年前半に先送りされました。安倍首相はゴールデンウィークに訪米、オバマ大統領と会談して第3次ガイドラインをまとめたいようです。
 昨年10月8日に発表されたガイドライン再改定協議中間報告には、こう書いてあります。「自衛隊及び米軍各々の適切な役割及び任務を検討するための運用レベルの協議から、防衛協力に焦点を当てた政策レベルの対話にまで及んでいる」。「運用レベル」はオペレイショナル・レベルです。軍人同士の共同作戦協議はいいところまでいっているのに、政策レベルではまだすり合わせがうまくいっていない、日本の国内法整備についてまだ米国側の要請に応えられていない、と読めます。
 この中間報告ではガイドライン再改定の意義を、①米国にとって「アジア太平洋地域へのリバランスと整合する」、②日本にとって「閣議決定の内容を適切に反映し、同盟を強化し、抑止力を強化する」、③両国が「国際の平和と安全に対し、より広く寄与することを可能とする」とまとめています。またガイドライン再改定の最重要課題は「切れ目のない、実効的な、政府全体にわたる同盟内の調整」だと言っています。「切れ目のない」はシームレスです。
 新ガイドラインでシームレスという言葉は、周辺事態と日本有事(武力攻撃事態)への対応を切れ目なしに、という意味で使われていました。今回は違います。7.1閣議決定で示した3つのケース、グレーゾーン事態対処・集団的自衛権行使・国際安全保障協力について、切れ目なしに武力行使の新三要件が適用できるように、ということです。

3.ガイドラインは有事共同対処の基礎

 ここまではガイドライン再改定への経過についてお話ししてきましたが、次に元に戻って、現行の新ガイドライン態勢とはどのようなものかをお話しします。
 ガイドラインと俗称されているのは「日米防衛協力の指針」です。安全保障(セキュリティ)協力ではなく防衛(ディフェンス)協力についての文書ですから、純粋に軍事協力についての約束です。このことをまず頭に入れてください。
 ガイドラインは日米間の条約ではなく、政府間合意でさえありません。にもかかわらずガイドラインに従って日本の国内法が整備されたのですから、ガイドラインは事実上、日本の安全保障政策の最上級文書になっています。まさに「指針」です。
 日米4人の閣僚が「了承」して成立した文書にすぎず、日本では閣議了承はしていますが、国会の承認はありません。当時の橋本首相は国会で質問されて「国際約束ではない」とまで答弁しています。条約ですと署名国双方の言語で正文が作られますが、ガイドラインは英文のみが正文で、出回っている邦文は外務省の「仮訳」にすぎません。このように、文書の性質の軽さと、内容の重さとのギャップ、そして対米従属性がまず問題です。
 なお外務省仮訳はガイドラインの危険性を国民に悟らせないために意識的な誤訳が多いので、もう15年前の話ですが、私も加えていただいた研究会で『超明快訳で読み解く日米新ガイドライン』という本を出版し、増刷を5回重ねました。
「防衛協力」合意の目的は、共同作戦計画OPLAN、つまりともに戦うための台本の作成です。仮訳でも「共同作戦計画」「相互協力計画」の検討、と書かれています。
 1978の旧ガイドラインで、日本有事の際の共同作戦計画(米国ではOPLAN5051という名称が付けられています)と中東有事の日本への波及時の共同作戦計画(OPLAN5053)が作成されたことが分かっています。国会で質問されて、そのような事実があることは日本政府が認めていますが、内容は完全に秘密です。
 1997年の新ガイドラインで、朝鮮半島有事の際の共同作戦計画(OPLAN5055、台湾有事に読み替え可能)が作成されました。その存在を日本政府は認めていませんが、2001年に在日米軍司令官ポール・ヘスターが新聞のインタビューで認めています。このような共同作戦計画があるからこそ、実施に必要な周辺事態法と有事法制が整備されたのです。
 2004年の日米安保協議委員会で「日米同盟」の語が公式に使われるようになって以後、OPLAN5055は概念計画から正規OPLANに格上げされました。どう違うかというと、台本が粗筋から本番用になったのです。戦闘開始のXデー以前からのスケジュールで、具体的な物資・兵員の動きが記された膨大な別紙が付きます。
 OPLANは定期的に演習でチェックされて、アップデートされます。これは演劇が稽古を重ねて台本を書き換えていくのと似ています。そしてOPLANは有事にはそのまま作戦命令になります。何度も稽古(演習)をしているので、本番(実戦)では台本最終版通りに動けるのです。
 新ガイドライン態勢で重要なのは、単独の日本有事(日本の国土が戦場になる)は想定されず、周辺事態の波及または同時発生とされていることです。周辺事態(日本の周辺地域で戦争が起こる)ことと武力攻撃事態(日本が武力攻撃される)とは同時あるいは若干の時間差で起こるので、両者へのシームレスな対応(「整合を図る」という表現になっています)が求められました。
 これはどういうことか。「ソ連の脅威」がなくなった冷戦後は大規模な日本侵攻、つまり大軍を上陸させて日本を占領するような能力のある国はありません。自衛隊の仮想敵国は中国と北朝鮮だけですから、あり得る攻撃はゲリラ・コマンドの侵入、あるいはミサイルです。どこが攻撃されるかといえば、まず「敵」への出撃基地である在日米軍基地でしょう。日本が攻撃されるのは、米軍が日本を出撃基地として戦争をしている時、あるいはしようとしている時です。それが周辺事態から武力攻撃事態への推移です。そして、戦争中に在日米軍基地を守り後方支援(前線と基地を結ぶ兵員・物資の輸送=兵站など)を維持するのが自衛隊の役割になります。
 新ガイドライン態勢はこのような想定のもとに作られています。
 では、武力攻撃事態=有事(あるいはそのおそれ)になったと認定して自衛隊に出動待機命令あるいは出動命令をするのは誰か。武力攻撃事態法では総理だと書いてあります。しかし有事法制のうち米軍行動円滑化法にはこの場合、日米は「常に緊密な連絡を保つ」とあります。日本は米国に相談せずに戦争を始めることも自国防衛もできないのです。
 戦争は準備していないとできません。先ほど述べたように、日米共同作戦計画は定期的にバージョンアップされています。戦争準備・戦争のメカニズム(日米協議機関)は平時から稼働しているということです。それが「包括的メカニズム」と「調整メカニズム」で、新ガイドラインで整備されたものです。
 包括的メカニズムは常設で、3段階になっています。トップは今日のお話でも何度も出て来た日米安保協議委員会で、日米4人の閣僚による協議機関、2人ずつなので2+2(ツープラスツー)と呼ばれます。その下に防衛協力小委員会があり、これは日米外務・防衛の局長クラスによる協議機関です。いちばん下に共同計画検討委員会という機関があります。構成員は日米の軍人です。ミリタリー同士(ミリミリ)の協議を基本に、3段階の上に上がるほど政治・外交的配慮が加えられて、日米防衛協力が実施されるのです。
 調整メカニズムは有事の国家動員システムです。これも3段階ですが、いちばん下の日米共同調整所が自衛隊・米軍の共同作戦を指揮します。東北大震災ではこのシステムが稼働して、自衛隊・米軍が共同で災害支援をしました。有事ですから自衛隊・米軍はすでに出動しており、各省庁・自治体の協力態勢をつくることが必要です。これは関係省庁局長等会議として平時から常設されています。
 では、どのようなテーマで軍事協力の協議が行われているのか。テーマを列挙したものが「共通の戦略目標」です。2005年に策定され、07年、11年に改定されていますが、最新の11年版を見ますと、24項目あります。日本とその周辺地域の安全保障について、だけではありません。冒頭から「アジア太平洋地域における平和と安定」とありますし、北朝鮮や中国に対応、「両岸関係」(台湾海峡有事)、中東・北アフリカにも言及していますから、日米軍事協議はすでにグローバルになっているということです。グローバルな課題で日米が「共通の」認識を持つとなると、日本は米国と異なる外交・安保政策を持つことができないことになるのではないでしょうか。
 具体的には有事に自衛隊はどのように米軍に協力するのか。新ガイドライン文書に付された別表「周辺事態協力の例」を見ますと、3分野に分かれています。
 日米がそれぞれ「主体的に」行う分野の中に非戦闘員退避があります。有事に自国の民間人を助け出すのは日米両国がそれぞれ「主体的に」行うことだと、1997年にすでに決まっていたのです。安倍首相がパネルで説明した、米軍が日本人を助け出してくれるという話は、最初から虚構です。しかも有事法制のひとつ、国民保護法を見ますと、有事に民間人を避難させるのは自衛隊ではなく地方自治体の仕事になっています。
「周辺事態協力の例」の第2分野は「米軍の活動に対する日本の支援」です。まず民間施設を含めた施設の使用。そして後方地域支援(補給・輸送・整備・衛生・警備・通信・その他)。要するに自衛隊の活動はこの分野では米軍の兵站支援にとどまり、戦闘参加はしません。なお「衛生」と外務省が訳しているのはメディカル・サービスですから、医療支援のことです。有事には日本の病院・医師・看護師などは米軍に優先的に使われます。
 第3分野が曲者で「運用面における日米協力」です。「運用」と外務省が訳しているのはオペレーションですから、ここで日米共同作戦行動について述べているわけですが、非常に簡略・抽象的です。ただここで、米軍は自衛隊の警戒監視能力と機雷除去能力に期待していることが良く分かります。この分野での自衛隊の能力は、米太平洋軍のそれよりもはるかに高いのです。というよりは、自衛隊は米太平洋軍の補助部隊あるいは一部として育成されてきた、と理解するほうが正確かもしれません。
 現在の新ガイドライン態勢について、長々と説明してきました。あくまでも現在こうなっている、という説明です。そして安倍政権も米国もこれでは不十分だから日米共同作戦体制をもっと強化したい、同盟を強固にしたいと思っているからこそ、いまガイドライン再改定交渉が行われているのです。
 何が不足なのか。ひとつ、自衛隊の米軍協力が「周辺地域支援」、つまり地域が限られていること。ふたつ、自衛隊は戦地に行かず戦闘行為をしないとされていること。みっつ、日本の有事国家動員システムが不完全なこと。だから自衛隊は米軍と肩を並べて戦うことができない。憲法9条がある限り当然のことです。日本国憲法は戦争をしないことを大原則として作られているのですから。憲法改正なしでもっと米国の戦争に日本を協力させたい。それが集団的自衛権行使の解禁であり、それを織り込んだガイドライン改定です。従来の政府答弁等との整合性がこれから国会で問われます。

4.日米の戦略文書を読む

 ガイドライン再改定日米協議の前提は、米国側ではリバランス、日本側では集団的自衛権行使(まだ法制化されていませんが)です。双方がどのような長期計画を持っているのか、戦略文書を読んでみます。米国の基本文書は「国防戦略指針」と「4年毎の国防計画見直し」、日本の基本文書は「防衛計画の大綱」です。
 2012年1月に米国防総省が発表した国防戦略指針は「米国の国際的な指導力の維持――21 世紀の国防の優先順位」と題されていますが、2020年までの米国国防のありかたについての基本文書です。
 この文書が米軍のアジア太平洋地域へのリバランスを打ち出した背景には、イラク戦争での国防費増大が米国財政赤字の元凶となったことがあります。これからは国防予算が削減されるなかでも、中東に深入りするうちに手薄になった米軍の9.11以前のアジア太平洋プレゼンスを回復しなければならない。それがリバランスです。軍事的脅威となりつつある中国は冷戦時代のように封じ込めるのではなく、包囲する。低予算でそれを実現するため、米軍のアジア太平洋関与はなるべく常駐ではなくローテーションで行い、日本・韓国・オーストラリア・タイ・フィリピンの協力に期待します。
 西太平洋に進出してくる中国の「A2/AD(接近阻止・領域拒否)戦略」には「統合エアシーバトル構想」で対抗します。
 A2/AD戦略とは、2009年に米国防長官が議会に提出した年次報告書「中国の軍事力」から使用されるようになった言葉で、中国軍は1980年代からこの戦略のもとに西太平洋に進出してきたといいます。A2はアンチ・アクセスの略、ADはエリア・デニアルの略です。2段階になっていまして、琉球列島・台湾とフィリピンの間・南シナ海の大部分を囲む第1列島線、より外側のグアム・フィリピン・インドネシアまで含む第2列島線を設定して、この内側では外国軍が自由に行動できないようにする、という戦略です。
 この戦略を実現するには、巨大な海空軍力とミサイルが必要です。実際に中国人民解放軍は外洋艦隊をつくり航空母艦を持ち、最近の地上発射ミサイルはグアムまで射程に入れています。海南島に基地がある潜水艦は外洋に出れば核ミサイルで米本土を狙えます。
 米国の統合エアシーバトル構想は、空海軍の一体運用で中国軍の西太平洋進出に対抗するというものです。ここではグアム基地や空母が中国軍の攻撃に対して脆弱性を持つことが問題になっています。そこで米国のシンクタンクCSBAと国防総省の共同シミュレーション研究によれば、いったん退避したのち反撃するのが有効とされています。自衛隊は統合エアシーバトル構想に関する多くの米文献を翻訳し、幹部学校で教材にしています。
 米国のもうひとつの重要文書が「4年毎の国防計画見直し」で、最新版は2014年3月に国防総省から議会に提出されました。長期的な展望で先の国防戦略指針をさらに具体化しています。
 中国軍事力の不透明性があり、北朝鮮ミサイルの直接的な脅威があるので、米軍はアジア太平洋地域を重視し、2020年までに海軍艦船・部隊の6割を集中する。相当にアジア太平洋に力を入れているように読めますが、実際には米軍は陸・海・空・海兵の4軍とも二次大戦後最低のレベルに縮小してヨーロッパや中東から撤退していくので、相対的にアジア太平洋の比重が高まるということです。戦闘機や爆撃機は新型のものが開発されますが、数は減ります。
 それでもアジア太平洋で米軍のプレゼンスを維持するためにどうするか。友好国と協力し、地域諸国軍の対応能力向上を援助します。とりわけ「日本はアジア太平洋地域安全保障の伝統的な基礎」であり、日本の「海軍プレゼンスに期待」します。
 このように米国から期待されている日本は、どのような戦略を持っているでしょうか。
 専守防衛、自衛隊はもっぱら日本の国土と国民を守ることに専念する、という基本方針は民主党政権のもとで大きく変わりました。2010年末に閣議決定した「防衛計画の大綱」の基本は、以下のようなものです。
 アジア太平洋の安定化とグローバルな安全保障環境改善のため動的防衛力を構築する。日米同盟を新たな安全保障環境にふさわしい形で深化・発展させるため、戦略的な対話及び具体的な政策調整に取り組む。――自衛隊は日本を守るだけでなくアジア太平洋を守り、世界を守るためのものになったのです。それにふさわしい形にと、ガイドライン再改定交渉が始まりました。
 そして安倍政権のもと2013年末に閣議決定した最新の「防衛計画の大綱」の基本は、以下のとおりです。
 日本の軍事力を強化することを前提としてガイドライン見直しを進め、日米防衛協力をさらに推進し、日米同盟の抑止力及び対抗力を強化する。同時に西太平洋における日米のプレゼンスを高めつつ、グレーゾーン事態における協力を含め、平素から各種事態までのシームレスな協力態勢を構築する。――軍拡路線です。「対抗力」ですから、実戦に耐える能力を高めます。グレーゾーンを含めてのシームレスです。
 そして「西太平洋」とはどこか、が問題です。これはハワイを本拠とする米太平洋軍の守備範囲と理解すべきでしょう。この地域設定は、かつての「大東亜共栄圏」を思わせます。旧日本軍は1941年12月8日、パールハーバー、マレー半島のコタバル、香港、ルソン島へ侵攻しましたが、このときの大本営発表が「帝国陸海軍は今8日未明、西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり」でした。自衛隊はかつて旧日本軍が戦った相手の米国軍と、同じ地域で、共同作戦を行うことになるのです。
   
5.自衛隊の編成・演習の変化

 国土を守るだけでなくアジアへ、世界へと外征する自衛隊づくりが、「防衛計画の大綱」に従って進行しています。このことは報道も多いので要点にとどめます。
 自衛隊の編成を見ますと、アジア太平洋・グローバル任務のため南西地域の防護態勢が強化されています。これまで宮古島以西には米軍も自衛隊もいなかったのですが、与那国島に警備部隊をおき、那覇の戦闘機部隊を倍増する予定です。5方面隊に指揮権が分かれていた陸上自衛隊の統一司令部、陸上総隊を新編します。佐世保の西部普通科連隊をもとに水陸両用部隊を新編します。これは米国海兵隊と同等の精鋭部隊です。要するに陸上自衛隊は郷土防衛部隊からどこまでも派遣される部隊に変貌します。
 装備を見ますと、「米軍との相互運用性に配慮した統合機能を充実」するため、イージス艦2隻増、潜水艦6隻増になります。オスプレイ17機、F35ステルス戦闘機18機、新型空中給油・輸送機3機、無人機グローバルホーク3機を導入します。米軍と同じ装備、専守防衛なら使いようのない装備です。これらは2015年度予算から計上されるので、3年連続防衛予算増となります。
 米軍と「肩を並べた」共同演習・訓練が実施されています。
 2013年6に サンディエゴ沖で行われた「ドーン・ブリッツ13」は、「離島奪還」共同訓練と宣伝されました。参加した佐世保の西部普通科連隊はこの前後にも米軍とともに激しい訓練を繰り返しました。尖閣諸島防衛を想定した訓練と言われますが、離島防衛でなく奪還とされているのは奇妙です。=敵前上陸訓練であるところがミソで、日本の離島以外のところにも応用可能です。
 昨年9月に 小牧から相模湾にいたる地域で行われた在外邦人輸送訓練は、これまでに何度か行われてきたものと同様です。テロリストの潜入を防ぐため、救出の対象となる人々は外務省が国籍確認をし、防衛省がボディチェックをしたうえで運ばれます。
 同じ昨年9月に 沖縄で行われた離島防災訓練は、揚陸適地調査を含むものでした。防災出動も防衛出動も携帯するものが違うだけで動きは同じですし、これまた日本以外の地への応用が可能です。
 そして昨年11 月に全国で行われた「キーン・ソード15」は、最大規模・最重要な日米共同統合実動演習(「統合」は陸海空・海兵が共通の司令部のもとに行動すること、「実動」はパソコンの画面上でなく実際に将兵が動くこと)ですが、詳細は不明です。自衛隊3万人、米軍1万人規模の大演習です。実施場所は「我が国周辺海空域」とのみ発表されており、自衛隊の艦艇25隻、航空機250機が参加しました。公開された部分の報道を見ますと、海上自衛隊員が米イージス艦に乗艦したり、アラスカからF22ラプター戦闘機が飛来したりしており、オーストラリア軍、韓国軍がオブザーバー参加しました。
 キーン・ソードは2年に1度行われる共同演習です。周辺事態日本波及のシナリオで実施しているはずですから、さらに分析が必要です。一般に、訓練は練度を上げるためのものですが、先に述べたように演習は作戦計画を練り上げるためのものだからです。

6.自衛隊はどのように使われるか

 日米共同作戦計画文書も共同演習のシナリオも公開されることはありませんが、集団的自衛権行使が解禁されガイドラインが再改定されると、実戦で自衛隊がどのような働きをする、あるいはさせられるのか、これまでに述べた戦略文書や訓練・演習の実態から、ある程度は推定することができます。
 まず、朝鮮有事対応です。もともと日本の再軍備は朝鮮戦争を契機としており、朝鮮有事対応を最重要課題として自衛隊は育てられてきました。周辺事態も朝鮮有事を主に考えられていたわけで、新ガイドラインの眼目は朝鮮有事対応です。
 しかし現在では北朝鮮軍に大規模対南侵攻の能力はなく、脅威は核とミサイル、そしてゲリラ・コマンドです。むしろ政権崩壊対応が重要でしょう。米軍の朝鮮有事OPLANは5027(軍事介入)から5030(崩壊待機・対応)へと変わりました。
 米軍は非武装地帯前線から撤退し、有事の米韓連合司令部の作戦統制権も引き渡したいので、日米韓の共同作戦体制を作って安心したいところです。しかし朴政権の対日不信は強いうえ、韓国軍は半島統一後の最大の仮想敵は日本と認識しているので、自衛隊の上陸は絶対に許しません。日韓間ではACSA(物品役務相互提供協定)もGSOMIA(情報共有協定)も未締結です。ですから実戦になっても、自衛隊は新ガイドライン態勢での「周辺事態協力の例」以上のことはなかなかできないでしょう。ただし公海上では米軍支援は可能ですし、自衛隊が導入する無人機は情報収集に役立ちます。
 次は台湾有事対応です。先に挙げた米国の「中国の軍事力」レポートは、一貫して台湾有事対応を最重要視しています。そして中国軍も台湾正面を最重視して配置されています。米中・中台経済関係がどのように緊密になろうと、軍の論理は別なのです。
 防衛省防衛研究所編の『東アジア戦略概観2013』には、「南西諸島方面の防衛を、想定されるより烈度の高い紛争事態のなかに位置づけることも必要」という記述があります。尖閣事態は、より烈度の高い事態、つまり台湾有事の一環として起こるという想定です。米国と台湾の間には軍事同盟はありませんが、米国の国内法で台湾軍事支援が決められています。
 先に述べた米軍の統合エアシーバトル構想では、中国が在日米軍基地・グアム基地(近く日米が共同で使用することが決まっています)を攻撃することが予想されるとき、米軍はいったん後方に退避、のち反撃します。中国のICBM(大陸間弾道弾)は固定式ですから対応可能ですが、中国ASBM(対艦弾道ミサイル)は本土奥深くに配置された移動式ランチャーから発射されて2000キロ以上飛ぶので、攻撃が予知されれば大事な空母など、退避せざるを得ないのです。
 自衛隊に期待されているのは、平時には中国軍の西太平洋進出をチェックし、有事には後退した米空母打撃群の空白を埋め、反転攻勢の拠点を確保することです。警戒監視能力、対潜哨戒能力、反撃抗戦能力のいずれもが求められています。ということは、台湾有事には確実に自衛隊にも日本の民間人にも犠牲者が出るということです。
次は南シナ海有事対応です。中国とASEAN諸国との間での領土問題は、一方では2002年の南シナ海行動宣言から行動規範の策定に向けての協議で平和解決の努力が続けられていますが、中国・ASEAN諸国の軍拡も進んでいます。当面日本は巡視艇提供などODAによるASEAN諸国への「能力構築支援」をしていますが、米比共同訓練バリカタン、タイでの多国籍共同演習コブラ・ゴールドに自衛隊も参加して、存在感を見せています。
 集団的自衛権関連法で周辺事態が存立事態へと変貌すれば、自衛隊は南シナ海有事にも対応することになるでしょう。ここも西太平洋のうちであり、米太平洋軍の担当地域です。
 最後に中東・アフリカ有事対応です。自衛隊のジブチ基地は米軍・仏軍基地に隣接しています。ここへのテロ攻撃に対して米仏軍から自衛隊に共同対応が求められたとき、集団的自衛権行使が法制化されていれば応じざるを得ないのではないでしょうか。泥沼の戦争に日本が引きずり込まれて、憲法9条への国際的信用は地に落ちます。ただしこの地域を担当する米軍は太平洋軍ではなく、中東なら中央軍、アフリカならアフリカ軍ですから、自衛隊との日常的な共同作戦協議はありません。直接日米間でなくPKOあるいは多国籍軍司令部を通じての共同となるのでしょう。
 いずれにしても実戦に参加すれば、自衛隊員に犠牲者が出ますし、自衛隊員が外国人を殺傷します。集団的自衛権行使の法制化で安倍首相がどんなに「戦争には行きません」と国内で説明したところで、日米ガイドライン再改定協議ではそれで済むとは思えません。これを外務省の翻訳技術で切り抜けるのかどうかが問題です。

7.戦死者を出さない日本をいつまでも

 年末年始の新聞報道によれば、集団的自衛権関連法について12月27日に与党協議が開始され、1月下旬の国会召集前に「安保法制の全体像」をまとめ閣議決定をしたいとのことです。関連法は自衛隊法、周辺事態法、武力攻撃事態法、PKO法など十数本はあるはずです。これらの法案は今国会に提出されますが、実際には審議は統一地方選後でしょう。ゴールデンウィークに安倍・オバマ会談で合意すれば、ガイドライン再改定のほうが関連国内法より先になります。国会軽視は明白です。
 なお、昨年7月の国会で小野寺防衛相は、ガイドラインが関連法に先立っていいのかという質問に対して、「現在のガイドラインができました17年前におきましても、同じく、ガイドラインの一定の方向が決まった中で国内法整備が行われたということもありますので、そこは特にそごはない」と答えています。野党が猛反発しなかったのは残念です。
 関連法に関して新聞報道によれば、「存立事態」という新しい概念ができる、周辺事態法は新法に置き換えて地理的制限をなくす、PKO法も新法に置き換えて武器使用基準を緩くする、調整メカニズムを再編し常設化する、などと言われています。これらについて法案発表以前に論評しても意味がないと思いますが、論議になる課題を3点だけ指摘します。
 ひとつ。グレーゾーン・武力攻撃事態・周辺事態・国際平和協力をどこまでシームレスにするか、西太平洋対応とグローバル対応をどのように切り分けるか。
 ふたつ。兵站支援にとどまるか、一部表現をごまかしつつ戦闘支援に踏み込むか。
 みっつ。各省庁・自治体・民間まで含めた協力態勢をどう構築するか。
 そして、集団的自衛権関連法がたとえ今国会で成立してしまったとしても、それは第3次ガイドライン関連法の全部ではありません。現行の新ガイドラインが合意されてから関連法である有事法制が整備されるまでに7年かかりました。彼らは法整備には慎重で、あたりを見廻しつつ匍匐前進で目標地点へと進むのです。だからこそ彼らの方向性を捉えることが重要なのです。
 その基本的方向性が米軍の統合エアシーバトル構想への共同だとしたら、自衛隊は、日本は、なんと悲しい存在でしょうか。悪い表現ですが、捨て駒としか言いようがない。
 もちろん統合エアシーバトル構想を中心とする作戦計画は、米軍の予算獲得・既得権確保のためのものという性格が強く、軍事合理性に乏しいし、必要な兵器開発も遅れています。現実感が薄いのです。そして米中関係の本流は対決でなく協調です。グローバル資本にとっては発展するアジアをどのように自分の利益に取り込むかが問題です。それでも万一の事態で出撃を命じられたら応じざるを得ない軍の論理としては、戦争準備を怠るわけにはいきません。
 安倍政権の同盟強化(従属深化)路線と「押し付け憲法」改憲(自立)路線はそもそも矛盾していますから、米国が警戒しても当然ですが、それでも安倍政権が続く限り改憲へのステップとしての軍拡が続くでしょう。軍の論理が米国では国の政策の一部でしかないのに、安倍政権では中軸に座っている、その危険性を感じます。
 現実性の薄い脅威を煽り戦争準備を進めることは、一方では東アジアの脅威となり、他方で日本国内では戦争準備態勢こそが脅威となります。特定秘密保護法と朝日新聞叩きで萎縮したマスコミに、安倍政権を批判する力がどれだけ残っているでしょうか。
 それでも、私は集団的自衛権行使についての世論調査で、こんなに難しいテーマであるにもかかわらず、「分からない」ではなく「反対」を選ぶ人が過半を占めていることに対して、深く信頼と安堵を感じています。軍事協力交渉より軍隊以外の手段による安全保障の追及を優先すべきことを、多くの人が理解しています。小選挙区制によってかろうじて成立している、民意を反映しない政治が、いつまでも続いていいはずがありません。
 集団的自衛権とガイドラインの危険性について、長いお話になりました。
 今年はアジア太平洋戦争での敗戦から70年です。「戦後70年」などという言葉が日常語になっている「国」は日本以外にはないだろうと思います。他のかつての帝国主義国は第2次大戦以後も植民地戦争をしてきましたし、第三世界の多くは70年前は独立国ではありませんでしたから。「戦後70年」と言えることを誇りにしたい。70年間、戦争で誰も死なず誰も殺さなかったことを誇りにしたい。「戦死者を出さない日本をいつまでも」が、いまの私のスローガンです。

〔本稿は2015年1月10日、自由法曹団東北ブロック総会で講演をさせていただいた際のレジュメをもとに書き下ろしたものです。〕

おもな参考文献

小林秀之・西沢優『超明快訳で読み解く日米新ガイドライン』日本評論社、1999年
山内敏弘編『日米新ガイドラインと周辺事態法』法律文化社、1999年
山内敏弘編『有事法制を検証する』法律文化社、2002年
西沢優・松尾高志・大内要三『軍の論理と有事法制』日本評論社、2003年
松尾高志『同盟変革』日本評論社、2008年
浦田一郎・清水雅彦・三輪隆編『平和と憲法の現在』明治大学軍縮平和研究所、2009年
柴田晃芳『冷戦後日本の防衛政策』北海道大学出版会、2011年
浦田一郎『自衛力論の論理と歴史』日本評論社、2012年
布施哲『米軍と人民解放軍』講談社、2014年
田岡俊次『日本の安全保障はここが間違っている!』朝日新聞出版、2014年
自由法曹団編『徹底解剖!イチからわかる安倍内閣の集団的自衛権』合同出版、2014年
大内要三「オペレーション・トモダチとは何だったか」ちきゅう座HP、2011年
大内要三「憲法と安保のあいだ」ねりま9条の会HP、2012年
大内要三「安倍政権の安保・防衛政策と自衛隊の動向」『法と民主主義』2014年4月号
大内要三「若者を海外での戦争で死なせないための3章」練馬・文化の会HP、2014年

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