自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告14
空自のイラク活動に違憲判断
「平和的生存権」でも前進
「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会・名古屋」 控訴審判決
17日の「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会・名古屋」の控訴審判決で米兵の輸送などを行っている航空自衛隊の活動について「憲法9条1項に反する」との判断が示されました。判決理由で「政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる」と明示しました。1973年9月の長沼事件自衛隊違憲判決(札幌地裁)以来日本の裁判所が憲法判断を避ける傾向の中での判断でした。
また、「平和的生存権」について「憲法9条に違反する国の行為、すなわち戦争の遂行、武力の行使等や、戦争の準備行為等によって、個人の生命、自由が侵害され又は侵害の危機にさらされるような場合、また、憲法9条に違反する戦争の遂行等への加担・協力を強制されるような場合には、平和的生存権の主として自由権的な態様の表れとして、裁判所に対して当該違憲行為の差止請求や損害賠償請求等の方法により救済をもとめることができる」として具体的権利性を認めた「画期的な判決」でした。
違憲判断は示されましたが「違憲判決」が出された訳ではありません。現在、継続している宮城の住民訴訟、岡山の訴訟(一審)、北海道の控訴審、熊本の控訴審のいずれかでなんとしても違憲判決を勝ち取りたいものです。
この日の一報は名古屋の仲間から「違憲判決に近い」と携帯電話に入りました。職場でニュースサイトを検索したところ「イラク自衛隊:米兵輸送は違憲 差し止め却下 名古屋高裁」 FXOnline Japan(毎日新聞)、「空自イラク派遣は憲法9条に違反 名古屋高裁判断」asahi.com(朝日新聞)、「空自イラク輸送活動、名古屋高裁が憲法違反を含むと指摘」YOMIURI ONLINEとなっていました。この時点では各ニュースサイトとも「平和的生存権」にはふれていませんでした。
私個人として振り返ってみますと国を被告にした裁判に何件か関わってきました。それらは「平和的生存権」や「納税者基本権」という新しい権利の確立をめざす裁判でもありました。私にとっては1982年12月に「舘野鉄工所事件」で国から1200万円の追加補償を勝ち取った裁判や77年の「椎葉事件」以来の感慨のある判断でした。
私は91年の湾岸戦争での「90億ドル戦費拠出違憲市民平和訴訟」、92年に「カンボジアPKO違憲訴訟」、96年に「ゴラン高原PKF違憲訴訟」、そして今回の「イラク派兵違憲訴訟」と裁判所に事実審理と違憲判決を求め続けてきました。
「イラク派兵違憲訴訟」は全国で一つの訴訟団ではなく11の地域で12の訴訟が提起されました。私たち、東京では前例のない「100人のリレー提訴」に取り組み6人が上告審まで闘いました。今回、判決理由で違憲判断が示され、国が勝訴し、原告が上告しないために判決は確定します。
前述したように裁判所は「違憲判決」を避け続けています。小泉純一郎元首相の「福岡靖国訴訟」では原告側敗訴ですが違憲判断は示されました。今回も同じように判断が示されたわけです。
青山邦夫裁判長は今回、あれだけ事実認定し、判決理由で違憲判断をしたのですから差し止め請求を認定すべきだったのです。たとえ、青山裁判長が最高裁の“反動性”を憂慮し、国側を勝たせることによって上告を断念させる思いがあったとしても・・・。
今回、テレビニュースで流れた法廷場面で裁判長席に座っていたのが青山裁判長と見た視聴者は多いと思います。青山裁判長は判決を書き依願退職していたのです。実は先に書いた一報をニュースサイトで読んだ時に「高田健一裁判長代読」とありましたのでもしやと感じていたのです。もしやと感じたのはこれまで国側に否定的な判決を書く裁判官は退官直前が多いと聞いていたからです。テレビで裁判長席に座っていたのは判決文を代読した高田健一裁判長でした。
裁判官は退官直前や「依願退職」を決意しないと「違憲判決」や違憲判断を示せないというのは異常です。裁判官が法と良心にしたがい自由に判断・判決を示せる土壌を作らなければならないと考えました。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
2008/01/12
自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告13 ②
6.判決の中で、積極的に評価できる点は、下の3点にとどまる。
第1に、箕輪さん本人尋問、山田先生証人尋問などを実現した実質審理を反映して、損害賠償(慰謝料)について却下でなく棄却判決であること。これは、06年7月の関西訴訟判決、前記名古屋判決に続くものである。
第2に、「原告らが、それぞれの立場,信条等から、平和のうちに生きたい、戦争行為や人殺しには加担したくないとの心情等を有し、本件派遣に対して不安や嫌悪感を抱き、その実施に強く反対していることは容易に認めることができるところであり、自衛隊法が成立した際、『自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議』がされていることなど、我が国における歴史的な経緯等にかんがみれば、原告らのそうした心情等は軽視されてよいものではない」(18頁)等と、原告らの訴えに対する理解と共感を示していることである。
第3に、結審間際に問題になった自衛隊情報保全隊のイラク派兵反対運動監視について、「本件派遣に際して、自衛隊保全隊による国民に対する情報収集活動が行われていたことがうかがわれ、そうした国民一般に対する情報収集活動自体はゆゆしき問題と言わざるを得ない」として(19頁)、「当該情報収集活動をもって本件派遣の違法性を基礎付ける事情として考慮することは格別」云々と(結論的には原告ら個人に対する侵害はないとした)、これがイラク派兵と一体の問題であるとする認識を示し、直接の監視対象となれば法益侵害性が認められることを示唆していることである。これは、07年10月5日に提訴した仙台新訴訟(情報保全隊の監視対象になった原告が国賠提訴)につながるものである。
7.弁護団は、今回の判決を確定させることは到底できない。原告団も、同様に控訴してたたかう決意を明らかにした。
自衛隊がイラクへ派遣され続けている現在、私たち一人一人に、主権者としての責任が問われている。私たちには司法府に対し、「憲法の番人」としての責任を果たさせる不断の努力を行う責務がある。
私たちは,一日も早い自衛隊の全面撤退を目指し、引き続き裁判所に自衛隊派兵の違憲性を訴えていくとともに、平和憲法の破壊を食い止めるたたかいを続ける決意である。
以上
◆参考資料-全国訴訟の到達点
■06年7月20日、関西訴訟判決、派遣差止請求について「却下」ではなく「棄却」の判決。
門前払いから実質審理へ
原告らの陳述書や本人尋問に立った原告名を全部列挙し、さらに「弁論の全趣旨によれば、原告らが、本件派遣等によって、生命・身体に対する危険を覚えたり、戦争に加担しないで平和に生きたいという思い、人殺しに加担したくないとの信念、自己の納める税金を戦費に使用されたくないとの願いを否定され、精神的苦痛を被ったことが認められる」と判示し、「人格権に基づく本件派遣等差し止めの訴えは適法」として、門前払いの「却下」ではなく、実体審理入りの「棄却」判決を言い渡した。それまでの山梨、名古屋、静岡が、原告らの「人格権又は保護に値する人格的利益が侵害されたとはおよそ認められない」とする却下判決からは、一歩前進である。イラク人2名を含む千人を超える原告団と証拠調べ(原告本人尋問)実施の成果である。
しかし、他方で「間接民主制の下において決定、実施された国家の措置、施策が自らの信条又は憲法及び法の解釈に反することによる個人としての憤慨の情、不快感、焦燥感、挫折感等によるものというべきであり、かかる苦痛は、多数決原理を基礎とする決定に不可避的に伴うものであって、間接民主制の下における政策批判や、原告らの見解の正当性を広めるための活動等によって回復されるべきものである」として、結局法的保護に値する利益であるとは言えないとしたのは、裁判所が政治の下僕となり、裁判所に付与された違憲立法審査権の意義を理解しないものである。
■07年3月23日名古屋第7次訴訟、法解釈の一般論で、平和的生存権の具体的権利性、裁判規範性を正面から認める画期的判決!(「定点報告 2」を参照)
名古屋の第7次訴訟判決(田近正則裁判長)は,結論は敗訴だが、平和的生存権と私法上の権利の部分で大きな前進を勝ち取った。判決は「平和」は抽象的概念でその達成の手段方法が一義的でないとし、直ちには具体的権利性があると言えないと否定したが、それに続けて、次のように判示した。
「もっとも、平和的生存権は、すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であり、憲法9条は、かかる国民の平和的生存権を国の行為の側から規定しこれを保障しようとするものであり、また、憲法第三章の基本的人権の各規定の解釈においても平和的生存権の保障の趣旨が最大限に活かされるよう解釈すべきことはもちろんであって(もとより国家の存立にかかわる国の行為についての違憲性の判断は間接民主制の統治システムが円滑に機能している限り慎重かつ謙抑になされるべきであるが)、憲法9条に違反する国の行為によって個人の生命、自由が侵害されず、又侵害の危機にさらされない権利、同条に違反する戦争の遂行ないし武力の行使のために個人の基本的人権が制約されない権利が、憲法上保障されているものと解すべきであり、その限度では、他の人権規定と相まって具体的権利性を有する場面がありうるというべきである」
平和的生存権を全ての権利の「基底的権利」としてその重要性を認め、憲法上の権利として具体的権利性を認められる場合があることを認めたのである。さらには、「国家の存立にかかわる国の行為についての違憲性の判断は間接民主制の統治システムが円滑に機能している限り慎重かつ謙抑になされるべき」とし、そうでない場合には積極的に司法判断を行う可能性を示している点も評価できる。
人格権侵害については、これまでの棄却判決と同様に、内心の感情の侵害であって人格権侵害にあたらないとの結論だったが、それに続く一般論の部分で、次のように一定の場合には肯定し得ると判示した。
「もっとも、憲法前文及び9条の法文並びにそれらの歴史的経緯にかんがみれば、憲法の下において、戦争のない又は武力行使をしない日本で平穏に生活する利益(かかる利益を平和的生存権と呼ぶか否かは別として)が法的保護に値すると解すべき場合がまったくないとはいえず、憲法九条に違反する国の行為によって生活の平穏が害された場合には損害賠償の対象となり得る法的利益(人格権ないし幸福追求権)の侵害があると認めることもまったく不可能なことではないというべきである」
これは,長沼判決以後、平和的生存権の価値について最も高く評価した判決である。結論は敗訴だが,平和的生存権の確立を求める闘いに展望を示すものとなった。
(杉山隆保・2008/01/12)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
2008/01/11
自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告13 ①
「自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟」一審判決に対する弁護団見解①
「自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟」の第1審の判決が昨年の11月19日に示されました。「イラク派兵違憲訴訟」の発端の訴訟でもありますので「弁護団の見解」をご紹介します。なお、訴訟は控訴されています。
判決に対する弁護団の見解(記者会見での説明要旨)
1.2007年11月19日午後1時10分、札幌地方裁判所民事1部(竹田光広裁判長)は,04年1月28日に元自民党代議士・防衛政務次官の故箕輪登氏が提起した自衛隊イラク派兵差止等請求訴訟について、派兵差止については請求却下,損害賠償(慰謝料)請求については請求棄却とする不当判決を言い渡した。
判決に立ち会った原告らは、札幌高裁に控訴する意向を明らかにした。
2.本訴訟は、自衛隊のイラク派兵は、自衛隊創設以来の政府見解である「専守防衛」に反するとして、他ならぬその政府・与党に籍を置いてきた箕輪登氏が提起した訴訟である。その後、憲法9条と自衛隊に関する憲法解釈の違いという「大異」を留保し、「自衛隊の海外派兵は違憲」という大同で一致する道内32名の有識者が追加提訴した。
本年9月結審までの3年7か月,米英が開始したイラク戦争が国際法違反の侵略戦争であること,自衛隊の活動実態は憲法9条が禁止する「武力の行使」にあたること、「人道復興支援」という虚構の下に行ったイラクの人々に対する戦争加害行為を、のべ26名の原告意見陳述、1439点の書証,箕輪登氏と山田朗氏の証人尋問なとによって明らかにし,憲法が国民に保障した「平和のうちに生きる権利」が侵害されたとして、自衛隊イラク派兵の違憲性を真正面から訴えてきた。裁判官に対し、今こそ憲法の番人としての職責を果たすよう求めた。
しかるに、判決は、平和に生きる権利の具体的権利性を認め、自衛隊の海外派遣が違憲判断の対象になり得ることを一般論として認めた今年3月23日名古屋地裁判決から大きく後退する内容であり、厳しく批判せざるをえない。
3.判決は、原告らの差止請求が、「行政権の行使の取り消し、変更又はその発動を求める請求を包含するもの」であるから、民事上の請求としては差止請求が認められる余地は無いとして、不適法であるとした。
しかし、行政法上の救済規定がないからかような法律構成をしたのであり、かかる法理を認めた判例もある。今回の判決の立場は、憲法を守るべき司法府が、下位法に規定が無いことを理由にその職責を放棄するという、「法の下克上」を認めるものであり、到底容認できない。
4.判決は、憲法前文と第9条の「恒久平和主義が憲法が希求する極めて重要な理念であることはいうまでもなく、平和のうちに生存することは、平和的生存権の保障の基礎的な条件であって、人権の保障と平和の維持が密接に関連するものであることは否定できないところである」と言いながらも、その具体的権利性については「そもそも、原告らの主張する平和的生存権にいう『平和』とは、理念ないし目的としての抽象的概念であって、その内包する内容も多様なものであるし、その外延も必ずしも明確なものとは言い難い。『平和』とは、必ずしも個人の内心において達成し得るものではなく、他者との関係も含めて達成し得るものであって、これを達成する手段、方法も多様なものであると言わざるを得ないのであるから、憲法前文の定める「平和のうちに生存する権利」自体から、個々の国民が有する平和的生存権の具体的な意味・内容を直接に導き出すことはできない」とし、にべもなく否定した。
これは、原告らが全力をあげて主張・立証した「人権の中の人権」としての平和的生存権の意義と内容を真摯に検討することを放棄し、さらに、平和を「個人の内心」の問題に矮小化し、挙げ句、「他者との関係も含めて達成し得るものであり、これを達成する手段、方法も多様なものである」と言うに至っては、憲法の非戦・非武装の規範すら忘れ去り、武力による「平和」実現も許容しかねない言い方である。この無思慮、無定見に慄然とする。
5.さらに判決は、原告らの被侵害利益としての生命・身体,自由、幸福追求に対する権利について、「原告らが,平和のうちに生きたい、戦争行為や人殺しには加担したくないとの心情を被ったとしても、その苦痛そのものは、多数決原理を基礎とする間接民主主義の下において、国家が決定、実施する措置、施策が自ら信条や憲法及び法解釈に反することによって生ずる個人としての反感、不満、不快感、焦燥感、挫折感等の感情であると言わざるを得ない」と、切って捨てた。
わが憲法が裁判所に違憲立法審査権を付与したのは、多数決原理に基づく立法・行政行為により違憲行為が行われ得るからこそである。あのヒトラ-政権でさえ、当時最も民主的とされたワイマ-ル憲法の間接民主制の下で成立したものだった。この間接民主制の落とし穴を、人権保障を基本とする「法の支配」により克服することが、戦後国際社会と立憲国家のテ-マであった。今回の判決は、少なくともわが憲法の恒久平和主義に関し、司法府の行政府に対するチェック放棄の宣言であり、司法の自殺行為である。
その裏返しとして、判決は、原告らの主張を政治的少数者の「反感、不満、不快感、焦燥感、挫折感等の感情である」と決めつけた。「戦争に加担することを拒絶する権利」の本質は、再び「侵略した側」として歴史に刻まれたくないとする戦後平和憲法の下で培われてきた日本国民のまっとうな「平和を求める良心」である。戦争体験の有無や年齢、宗教や職業など人によってバックボ-ンは異なっても、大多数の国民が共有するいわば「公的良心」とも言うべき性格を有し、その内容は明確である。この探求を放棄し、様々な分野の第一人者の訴えを、低俗なレベルでしか理解できない裁判官には、もはや人権や平和を語る資格がないとさえ言えよう。
(杉山隆保・2008/01/11)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
2008/01/10
自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告12
悲しい知らせが届きました。「イラク派兵違憲訴訟の会・栃木」の山口代表がお亡くなりになりました。
「イラク派兵違憲訴訟」は「全国津々浦々に展開する訴訟」「市民が事実を知り、知らせ、連帯する、市民運動としての訴訟」として、新しい平和訴訟のあり方を示してきました。「栃木訴訟」は昨年の6月に上告審が棄却され終結しました。その後も山口さんは各地の訴訟支援、協力を怠らない方でした。
ご冥福を心からお祈りいたします。
(杉山 隆保・2008/01/10)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
2007/11/28
イラクの現状報告と記者会見
イラク派兵違憲訴訟の会、イラク派兵j違憲訴訟全国弁護団からのお願い
です。本日、参議院で「イラク特措法廃止法案」が可決されます。そこで、
イラクの現状報告と緊急の記者会見を行います。ぜひ、ご参集ください。
■イラクの現状報告と記者会見
・日時 本日、午後2時から
・会場 日本弁護士会館内
・内容 ジャーナリストの西谷さんから、直近のイラクの現状報告
「イラク特措法廃止法案」成立に対する全国弁護団の意見表明
●問合せ先 川口 創弁護士
090・4379・6449
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
2007/09/18
自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告11
「京都訴訟 控訴審」で証人しらべへ
11日に大阪高裁で控訴審が行われました。
出口弁護団長は「父は敗戦直前に出航がストップとなり、死なずにすんだが、おじは戦後、精神に異状をきたした。東京空襲、広島の原爆の写真が戦争を表している。だからこそ日本国憲法ができたのではないのか。今、イラクは全土が戦場である。米軍の爆撃は日本の空襲と同じである。空襲は無辜の殺傷であり、空自は、その米軍の共犯者となっている。ブッシュのイラク戦争は現代社会の原罪であり、私たちの良心のうずきとなっている。憲法にも、イラク特措法にもたがうイラク派兵という政府の暴走に、司法が司法あらしめるためにも憲法違反と認め、差し止められなければならない」。
弁護団はパワーポイントで映像を示しながら主張を展開しました。
第1 はじめに/ 第2 イラクをめぐる実情/第3 イラクにおける自衛隊の活動実態/第 4まとめ――でした。
その大まかな内容は、米軍の残虐行為として劣化ウラン弾の使用とその影響。クラスター爆弾、白燐弾の使用。ファルージャの虐殺。アルグレイブ刑務所での虐待。イラク国民の犠牲。米兵の死傷者。陸上自衛隊の給水活動の非貢献性。陸自の重装備。インド洋での海上自衛隊の給油の8割5分はイラク攻撃の給油。航空自衛隊の活動は米軍イラク攻撃の兵站活動そのもの。自衛隊の活動は米軍のイラク戦争イラク攻撃に加担しており、9条違反であり、即時撤退を求める――というものでした。
控訴人の岩井忠熊(立命館大学名誉教授・日本近代史)さんは「日本は台湾出兵から太平洋戦争まで、15回にわたる出兵をしている。これは5年強に1度の出兵(戦争)であり、海外からの侵攻は1度もなかった(米軍の反撃はあったが)。今回のイラク派兵が日本の海外派兵の蟻の一穴となることを恐れる。歴史研究者として、若者に歴史の教訓を伝えてきた。裁判官の皆様は憲法の平和主義にのっとって自衛隊のイラク派遣を差止る判決を求める」と、述べました。
井坂洋子さんは「夫の父親が学徒動員で、広島で被爆している。被爆者の多くは、何年たってもその苦しみから逃れられないという。日本軍は何をしたのか、と韓国のカッコ『ナノムの家』を尋ね、毎日毎日レイプされ続けたパク・オクスンさん(81歳)の話を聞いた。イラクでは毎日、子どもたちが傷つけられ、殺されている。“子どもたちのピースフェスタ”で子どもが『おばちゃん、戦争どうやったらなくせる』と聞いてきた。この戦争をやめさせることは大人の責任です」と訴えました。
佐藤佳久さんは「言うまでもなく戦争は決して自然現象ではありません。権力者が政治的意図をもって始めるものであり、その本 当の意図を隠すために、彼らは戦争がいかに「正義であるか」を宣伝し、人心を引きつけ、戦争に引き込んで行きます。その過程で戦争勢力は必ず戦争反対を唱える抵抗勢力の言論・表現の自由を抑圧し、謀略や弾圧によって圧殺しようとしてきたことは、歴史が証明しています。……私は恒久平和を誓った日本国憲法を踏みにじる政府の軍事行動を絶対に容認することはできません。一刻も早く自衛隊をイラクから全面的に撤退させるよう強く求めます」。 (陳述書の9行転記)
休廷後の法廷で裁判長が上田勝美(龍谷大学名誉教授)さんを証人採用して法廷は終了しました。
次回の控訴審は11月6日(火)午前10時から大阪高裁202法廷で行われます。
●「イラク自衛隊派兵違憲裁判の会・静岡」「イラク派兵違憲訴訟の会・東京」の両会は解散しました。(2007.9.18 杉山 隆保)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告10
原告11人が意見陳述 「熊本訴訟」
10日に開かれた「熊本訴訟」では、6月の証人調べ(「定点報告 8」参照)に続いて予定していた原告11人全員の意見陳述を勝ち取ることができました。
原告らは、さまざまな角度から自衛隊のイラク派兵によって被った被害や自分の訴訟への関わりを具体的に述べました。
Aさんは情報保全隊の調査リストに実名が掲載されていたのですが、そのことについてリアルに証言しました。
香田証生さんのご両親が通われている直方教会の本多牧師は、香田さんの事件発生からずっとご両親に寄り添ってきたこと。ご両親がメディアスクラムや権力による包囲、右翼勢力による電話を通じたバッシングの中で本音を語ることも出来なかった現実を語りました。
本多さんは香田さんが人質に取られたことに対して、「小泉純一郎首相(当時)が『テロには屈しない』という発言したことは証生君の死刑宣告に聞こえた」と陳述しました。
そのほか、自衛隊員と一緒に生活する地域に居住する方や、戦前から教師をされ、教え子を戦場に送った元教師の方、真宗教団で戦争責任を追及されている僧侶、旧満州で敗戦を迎え祖国に見捨てられた方などがさまざま角度から「平和的生存権」について陳述しました。被告側も居眠りすることなく神妙な面持ちで証言に耳を傾けていました。
これで「熊本訴訟」は11月30日の結審を迎えることとなります。(2007.9.18 杉山 隆保)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
2007/09/12
自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告9
「北海道訴訟」「関西訴訟」(控訴審)が結審
裁判所の夏休みも終わり、審理再開と考えていましたら「自衛隊イラク派兵差止・北海道訴訟」。控訴審を闘っていた「自衛隊のイラク派兵差止裁判をすすめる関西訴訟」と立て続けに結審となってしまいました。
「北海道訴訟」の審理は9月3日で終了しました。2004年1月提訴以来18回の口頭弁論、4回の進行協議期が行われました。意見陳述をした原告はのべ20人に上りそのうちの8回は箕輪登さんでした。
弁護団は主張を概ね尽くしたと捉えています。一方、裁判所が「結審」を宣告で示していませんでしたので特別な「結審弁論」を行なえませんでした。判決は11月19日(月)午後1時10分に言い渡されます。この訴訟の締めくくりとして11月10日(土)に市民集会を行なうことを決めています。
「関西訴訟」は5日、控訴審・第4回口頭弁論で「結審」しました。この日の口頭弁論は、木津川計さん、ハッサンさん、西谷文和さんら7名の原告が意見陳述を行いました。西谷さんの陳述はDVDの一部をそのまま上映するという形でした。短時間ではありましたが、「関西訴訟」ではじめての上映となり、同様のものを見たことがないであろう裁判官にはインパクトがあったのではないかと思われます。
弁護団からは副団長の石田弁護士、団長の辻弁護士が弁論に立ち、力のこもった、大変感動的な最終弁論を展開しました。名古屋訴訟の平山良平さん。通称ゼニカネ訴訟の川村賢市さんが傍聴から報告集会まで参加していました。
報告集会では、6月に熊本訴訟で証人に立たれ、来月は名古屋の控訴審で証言される小林武・愛知大学大学院教授が昨今の政治・社会情勢、憲法をめぐる情勢などと合わせて、9条と平和的生存権について講演しました。判決は12月26日(水)午前11時に言い渡されます。(2007.9 杉山 隆保)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
2007/09/09
自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告8
平和的生存権について明確な証言
「自衛隊イラク派兵違憲訴訟の会・熊本」第 9回口頭弁論
6月18日、熊本地裁でイラク派兵違憲訴訟第9回口頭弁論がありました。この日の弁論は小林武・愛知大学大学院教授の証人調べでした。
小林証人の証言は格調高く、聞くものの胸を打つすばらしいものでした。最後のところでは裁判官を諭すように「あなた達は一人ではないよ、国民が支持しているから勇気をふるって違憲立法審査権に踏み込みなさい。それこそが憲法が司法に求めていることだよ」と訴えました。
尋問に入る前に亀川裁判長が1次、2次提訴原告とともに4月20日に提訴した第3次原告も併合とすると述べました。これで熊本訴訟は1つの事件となりました。
証人尋問は加藤弁護団長が証人の経歴などを尋ねることから始まりました。証人はもっとも印象に残る裁判としては「エホバの証人関係者の剣道実技拒否事件」で最高裁判決に影響する意見書を提出したことであると述べました。
証人の専門分野である憲法の「平和的生存権」についてと質問は続き、証人は平和的生存権の裁判規範性について、前文は憲法の一部です、前文の改正は96条によらなければなりません。前文それだけを取り上げて裁判規範性があるというのはかなり微妙ですが、本文中の部分と分かちがたく結びついたものだけ規範性を持ちます。9条がまさにそうです。と、述べました。
また日本国憲法がいう平和とは具体的であり、平和のうちに生存する権利は9条によって定義付けられています。公権力が戦争をせず、武力による威嚇をせず、戦力を持たす、武力行使をしない日本に生きる権利です。と、証言しました。
原告の平和的生存権が侵害されているかという問いに、自衛隊イラク派遣は単なる9条違反ではない。『専守防衛』の自衛隊法に違反し、「イラク特措法」にも違反しています。法治主義から説明しづらい状況です。と証言しました。
情報保全隊の国民監視活動について代理人が、「ここ熊本でもこの訴訟の原告41番のAさんが事務局長を務める<戦争を許さない県民連絡会>などの団体が監視対象になっていますが」と尋ねたのに対しては、
この報道を慄然とする思いで聞きました。背筋が寒くなったと述べ、自衛隊法にいう治安出動下令前の情報収集に当たりません。国家の機関が法的規範なしに活動している。私達の平和的生存権が完全に侵害されているのです。と、批判しました。
次に川口創弁護士(名古屋訴訟・弁護団事務局長)の質問に、「名古屋訴訟の田近判決(定点報告 2-①を参照)は、平和的生存権と人格権の成立可能性を述べています。平和的生存権は第3章の人権規定と結びつくことがあれば裁判規範性があります」と答えました。
続けて、イラクでもっとも治安が悪いのがバクダッドです。陸上自衛隊もサマワにとどまり、航空自衛隊もこれまでバクダッドは避けてきました。それはバクダッドが戦闘地域中の戦闘地域であるからです。国民に情報が伝えられていないことは重大です。私達は主権者です。国会にさえも真実を明らかにしていません。この様なことは許せません。米軍もバクダッドをコンバットゾ-ンに指定しています。(イラクでの)自衛隊の活動は憲法・自衛隊法だけでなく「イラク特措法」にも違反しています。自衛隊イラク派遣は憲法違反であり、差し止め請求ができる、と主張しました。
板井駿介弁護士が質問の質問に対して、「戦争も武力行使もしない日本に穏やかに生きる権利が人格権です。憲法13条と結びつきます。平和のうちに穏やかに生きる権利ということもできます」と人格権について証言を重ねました。
次に原告それぞれの陳述書を読んで抱いた感想を求められて、「陳述書を読むことはしんどかったです。戦争の残した傷跡、その苦労を背負って憲法にであったという思いは共通しています。どの原告にも適格性はあるのですと、NGさん、FJさん、HRさん,MYさんらの個々のケースを紹介し、それぞれ原告について「適格性」を十分に有している」と述べました。
さらにイラクの現地調査の必要性について言及しました。また、甲府地裁判決で示された「間接民主主義万能論」については、民主主義を多数決民主主義と勘違いしており、立憲民主主義に立つべきであり、裁判所としての役割を自ら放棄している。と、批判しました。
代理人に判決理由に憲法判断を示すことについて尋ねられると、「福岡靖国訴訟や大阪高裁判決の例にふれ、この手法は有益であり、必要なものです。日本の裁判所はもっと憲法判断に踏み込むべきです」と語りました.
平和的生存権を守るための司法の役割について聞かれて、「憲法は、科学的な見方をしています。戦争を政府の行為によって起きるとみています。国家だけが戦争を起こします。起こさせないようにするのが憲法です。戦争はある日突然やってくるものではありません。戦争の準備を止めるためにもっとも力のあるのが裁判所です。違憲立法審査権を持っているからです。どうしようもない状況に至らない段階で活用すべきです。戦争への芽は若葉のうちに摘むことが大切です」と話されました。
最後に、この事件で裁判所が果たす役割について聞かれて、「私は修士論文でも博士論文でも違憲審査権を研究してきました。違憲審査権をいざ行使することはとても大変です。まず政治の介入の問題があります。また違憲審査権は個々の裁判官に付与されており大きな影響を与えることへの逡巡が起きるのです。しかし憲法は違憲審査権に踏み込むことを裁判官に期待しています。国民は支持しています。裁判官がそのことを踏まえて判断を示して下さることを期待しています」と締めくくりました。
傍聴席から、大きな拍手がおきましたが、裁判長はそれを止めようとはしませんでした。傍聴席には、亀川さんの前の裁判長も現れ、こっそりと小林証人の尋問を聞いていました。
被告・国側は小林証人の証言を退屈そうに聞いていただけで、裁判長から反対尋問を求められても「ありません」と答えるのみでした
その後、裁判長は、今後の訴訟指揮についても「私達で判決を出したいと考えています」と任期中に判決を出すことを明らかにしました。「裁判長はイラク現地検証と次回原告本人尋問などについて協議した後「次回弁論で半日の時間を取るので、その中で原告本人尋問をやって欲しい。原告要請のイラク現地検証は却下する」と答えました。
小林教授の証人調書は私の手元にあります。お読みになりたい方はご請求ください。(2007.9.9 杉山 隆保)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
2007/08/02
自衛隊イラク派兵違憲訴訟 定点報告7
「箕輪登さんのパートナーが訴訟受継申立
自衛隊情報保全隊の監視活動についても陳述
「自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟 第17回弁論」
6月25日の第17回「自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟」の弁論で箕輪登さんのパートナーが訴訟受継申立てをしました。また、自衛隊情報保全隊の監視活動について陳述を行いました。
この日はまず、原告2人が意見陳述しました。
小林久公さんは、歴史認識、戦後補償などを取り組んできた市民活動家です。その活動を通じて、アジアの友人たちが口を揃えて「いま世界で一番危険な国は日本である」と述べている、それにどう応えるべきか。強制連行犠牲者の遺骨を発掘して遺族に返す市民レベルの取り組みの意義などについて、語りました。
多田崇子さんは、箕輪さんと選挙でいつも厳しいたたかいをしていた故多田光雄議員(共産党)のパートナーで、お医者さんです。箕輪さんの訴訟を知って驚き、箕輪さんを直接尋ね、その真意を知って、医師会の中で箕輪訴訟賛同の署名を集めてまわり「自民党と共産党が一緒か。それは面白い」と評判になり、支持の輪が広がったこと、彼女自身の医師としての生きざまと平和憲法とのかかわりについて話されました。
二人とも陳述後、傍聴席から拍手が沸き起こりましたが、裁判官は全く制止しませんでした。
次に、佐藤博文弁護士が準備書面と文書提出命令申し立てについて陳述しました。準備書面は、
名古屋「田近判決」の意義とそこから敷衍した司法の役割・裁判官論
1. 自衛隊情報保全隊の監視活動と平和的生存権侵害
2. 原告らの法益侵害の内容(個別主張)
文書提出命令申立書は、上記2に関するものでした。
準備書面2と文書提出申立に関わり、裁判官と弁護団のやりとりになりました。裁判官は、
「情報保全隊の、特に“イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向”について、これがイラク派兵と不可分一体の問題であるとして、イラク派兵の“実態論”“性質論”の追加的主張として行なうことは理解できる。しかし、個々の原告の具体的な権利侵害事実として主張するとなると、自衛隊がイラクに行って活動したということ自体とは異なり、新たな法益侵害の主張となるのではないか。今後これを主張・立証するとなると、この間進行協議期日で確認してきた範囲を超えることになる。裁判所としては疑問である」と、述べました。
そこで、7月23日(月)に進行協議期日を設けて、裁判官の問題提起に対する書面を弁護団から提出し、今後の主張、立証について協議することになりました。
次回の弁論期日(第18回)は9月3日(月) 午後1時30分から3時までと決まりました。(2007.7.31 杉山 隆保)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)


最近のコメント